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2009年掲載記事

ポルシェ スポーツドライビング スクール

~ポルシェオーナーだけが体験できる充実のドライビングスクール~

輸入車のインポーター各社は、オーナーを対象としたドライビングスクールに力を入れています。
ドライビングスクールでは、一般公道では体験し難い輸入車のブレーキ性能やコーナリング性能のパフォーマンスを知ることができ、いざという時にも安心してクルマが停止できることを学ぶことができます。それらは、万が一の際の緊急回避にも役立たせることができます。
今のドライビングスクールは、体で何度も経験して覚えるのではなく、理論をきちんと学んだ上で実践に活かすというメニューになっているのが特徴です。

その中でも、ポルシェは、1974年に930型の911ターボを発売した時に、高性能なクルマを発売するメーカーの責任として、ドライバーのスキルアップを目指したドライビングスクールを本国(ドイツ・ポルシェAG)で開始しました。今から35年も前のことです。
国内では、ポルシェジャパン株式会社設立の1998年からドライビングスクール(ポルシェ スポーツ ドライビング スクール)を実施しており、ドイツ・ポルシェAGによる世界共通カリキュラムに則ったプログラムがサーキット等の専用の施設を使用して行われています。

ポルシェ スポーツ ドライビング スクールは、ビギナーの方からエキスパートな方まで、どなたでもご参加頂けるコースが用意され、ポルシェドライビングのスキルアップを目指すことができます。
また、講師はドイツ・ポルシェAGが公認した現役のトップドライバーが務める、まさにポルシェオーナー垂涎のプログラムとなっています。

ポルシェ スポーツ ドライビング スクールは、回を重ねるごとにその内容が充実し、現在では受講者の経験度や目的別にいくつかのプログラムが用意されています。

Warm upプログラム

初参加の方を対象に2009年から導入されたエントリープログラムです。
ポルシェの持つ基本性能の体験と、基礎的なスポーツドライビングテクニックの習得を目指します。女性専用のクラスもあります。

Precisionプログラム

Warm upプログラムまたは同等のプログラムを受講した経験のある方を対象にしたステップアッププログラムです。
ポルシェドライビングの基本を踏まえ、更なるスキルアップを目指します。

G-Forceプログラム

コーナリング時のオーバーステア(ドリフト)コントロールテクニックに特化したコースとして、ビギナーからエキスパートまでを対象とした特別プログラムです。
いかなる状況でもポルシェを意のままにコントロールするために限界コーナリング時のオーバーステアコントロールを習得します。

G-Force+(プラス)プログラム

G-Forceプログラムを受講した経験のある方を対象に、限界コーナリング時のオーバーステア(ドリフト)コントロールに特化し、ポルシェを意のままにコントロールするハイレベルなドライビングスキルの習得を目的としたスペシャルプログラムです。

Performanceプログラム

PrecisionプログラムまたはG-Forceプログラムを受講した経験のある方を対象に、サーキット走行をより充実させたステップアッププログラムです。
サーキットドライビングの基本を中心に、ポルシェが持つ本来のパフォーマンスを堪能することができます。

今年もポルシェジャパン株式会社が主催するポルシェ スポーツ ドライビング スクール(2009年春・夏季プログラム)が開催されました。

ポルシェ スポーツ ドライビング スクール(2009年春・夏季プログラム)
日程 プログラム 会場
5月26日(火)
AM8:30-PM12:55
Warm up プログラム 富士スピードウェイ
(専有講習スペース+本コース体験走行)
5月26日(火)
PM1:45-PM6:10
Warm up プログラム 富士スピードウェイ
(専有講習スペース+本コース体験走行)
5月27日(水)
AM8:30-PM5:30
Precision プログラム 富士スピードウェイ
(ショートコース+専有講習スペース)
5月28日(木)
AM8:30-PM5:50
G-Force プログラム 富士スピードウェイ
(ドリフトコース+専有講習スペース)
5月29日(金)
AM8:30-PM5:40
G-Force+プログラム 富士スピードウェイ
(ドリフトコース+専有講習スペース)
6月4日(木)
AM8:30-PM5:30
Performance プログラム 富士スピードウェイ
(メインコース+ショートコース)
7月9日(木)
AM8:30-PM5:30
Performance プログラム 鈴鹿サーキット
(メインコース+南ショートコース)

今回は、2009年6月4日(木)に富士スピードウェイで行われたPerformanceプログラムを特別に取材させていただきました。参加されたポル シェオーナーの皆様とともに、ポルシェの持つ本来の性能の素晴らしさ、高性能と安全性との両立を追求する姿勢を感じながら、ポルシェ哲学への理解を深める 絶好の機会となりました。その一日を紹介させていただきたいと思います。

今回のPerformanceプログラムのメニューは次の通りです。

メニュー 内容
1. 受付 レッスンを受ける際に必要となるトランシーバーが貸与されるとともに、注意事項の説明が行われます。
2. 開講式
(クリスタルルーム)
一日のスケジュールの案内とインストラクターの紹介が行われます
3. 応用講座
(クリスタルルーム)
クルマの挙動変化について、運動理論に基づく説明が行われます。
4. Jターンスラローム
(専用スペース)
遠心力にタイヤの踏ん張る力が負けると横滑りを起こしますが、フロントタイヤが負ければアンダーステア、リアタイヤが負ければオーバーステアになります。そのクルマの挙動の変化を確認します。
5. 先導走行レッスン
(ショートコース)
インストラクター車を先導に隊列を組み、ショートコースを走行します。インストラクター車両のブレーキポイント、クリッピングポイント、走行ラインを後ろから確認します。
6. ドライビングクリニック
(ショートコース)
インストラクターがお客様のポルシェの助手席に同乗し、インストラクションします。
ブレーキポイント、アクセルワーク、ライン取りなどについて直接レクを受けます。
7. 昼食 昼食休憩です。
8. サーキット走行講座
(クリスタルルーム)
サーキット走行に関する注意事項の説明が行われます。
9. 記念撮影 インストラクターとお客様全員の記念写真を撮影します。
10. 先導走行レッスン
(サーキット本コース)
インストラクター車を先導に隊列を組み、本コースを走行します。インストラクター車両のブレーキポイント、クリッピングポイント、走行ラインを後ろから確認します。
11. フリー走行
(サーキット本コース)
本日のトレーニングの集大成として、お客様ご自身のペースで本コースを走行します。
12. 同乗走行
(サーキット本コース)
インストラクターが運転するポルシェの助手席にお客様が同乗し、ポルシェが持つ高い運動性能とポテンシャルを安全に体感します。
13. 修了式
(クリスタルルーム)
一日の総評が行われます。

※3、4、5、6は4チーム(各10名)に分かれて行われ、チーム毎にプログラムの順番が異なりました。

では、当日の流れを順番に追ってみましょう。

1. 受付

会場の富士スピードウェイのAパドック前には、インストラクターの車両が整列駐車され、参加されるお客様を迎えます。

今回の参加者は39名(うち女性は3名)。早い方は7時過ぎには到着されていたようです。
受付では、お客様のお名前の確認とともに、レッスンを受ける際に必要となるトランシーバーが貸与され、注意事項の説明が行われます。

ポルシェ スポーツ ドライビング スクールは、何度も繰り返し受講される方が多いのも特徴です。
駐車場では、顔馴染みとなった方同士の笑い声が聞こえてきました。

2. 開講式

8時30分から、Aパドック2階のクリスタルルームで開講式が行われました。
今回の講師陣が紹介され、一日のスケジュールや注意事項の説明がありました。

今回の講師は、清水 和夫さんを筆頭に、影山 正美さん、田中 哲也さん、織戸 学さん、脇坂 薫一さんの5人です。ポルシェの特性を熟知され、ポルシェAGの認定を受けたインストラクターです。

レーシングドライバーでありモータージャーナリストの清水さんは、ポルシェジャパン主催のドライビングスクールに、講師として初回から欠かさず参加され、今回もチーフインストラクターを務められました。

清水和夫さん挨拶:

おはようございます。昨夜は雨が降ってしまいましたが、今日は雨が上がって良かったです。ドライコンディションでレッスンができます。
今日はハイスピードの富士スピードウェイを走りますので、集中して楽しく過ごしましょう。

影山 正美さんは、今年からインストラクターに加わりました。
レースでは、スーパーGT選手権のGT300にポルシェ911 GT3 RSRで参戦され、今年すでに第2戦の鈴鹿で一勝されています。

影山 正美さん挨拶:

今日一日、楽しくポルシェのドライビングを練習したいと思います。宜しくお願いします。

田中 哲也さんは、スーパー耐久選手権に参戦され、ポルシェGT3で過去何度もチャンピオンを獲得されています。スーパーGT選手権にも参戦中です。

田中 哲也さん挨拶:

今日は、無事故で楽しく一日過ごしていただきたいと思います。少しでもスキルアップしていただければと思っています。

織戸 学さんは、ルマン24時間レースやスーパー耐久選手権でポルシェGT3を操り、また、スーパーGT選手権やD1グランプリにも参戦されています。

織戸 学さん挨拶:

今日は、下のフリーエリアでJターンスラロームを担当することになりました。
昨日、非常に楽しいコース設定をしました。そこで大いに練習していただいて、午後の本コースに活かしていただきたいと思います。

脇坂 薫一さんは、今年からインストラクター陣に加わりました。スーパーGT選手権への参戦経験もあるレーシングドライバーです。

脇坂 薫一さん挨拶:

先週4日間、富士でプログラムやらせていただきました。一番練習したのは私でしょう(笑)。
今日は、待望の本コースを走れますから、午前はしっかりスキルアップして、午後の本コースの走行に活かしていただきたいと思います。

3. 応用講座

応用講座の講師は、チーフインストラクターの清水 和夫さんが担当しました。クルマの挙動変化について、運動理論に基づく説明が行われました。説明には、模型のポルシェも使用されました。

清水 和夫さんの説明の概要は次の通りです。

(1)はじめに

クルマの運動理論あるいはタイヤの基礎的な知識は、結構難解です。同じことの繰り返しが多いかもしれませんが、頭の中で整理して理解を深めていただきたい。

(2)安全はすべてに優先される

今日のプログラムは、ハイスピード域でのレッスン。スピードが高いとそれなりにリスクが生まれます。同じスピンでも、3速や4速ギアになって、150~200km/hでスピンした場合は、車が持っている運動エネルギーを簡単に収めることができなくなります。

車が縦に走っているときはタイヤのブレーキ力で止められますが、車には横方向にブレーキはついていません。ですから、最近はポルシェで言えばPSM、他の 自動車メーカーでは様々な言い方がありますがESP、DSC、そのような機能はある意味横方向のブレーキだと思っていただければと思います。その有効な PSMがついに最新のGT3に装着されました。プロが楽しむようなGT3やGT2でもPSMは必要な装置です。

電子制御では4つのブレーキを個別に制御できます。人間は、ブレーキペダルを一つしか踏めません。運転のうまい人はそんな電子制御はいらないんだよと強 がって言う人がいますが、物理的に人間にはできないことがあります。安全はすべてに優先されるので、強がってはいけません。

Performanceプログラムを受講される方には、レースウェア等の装備をおすすめしたいです。ヘルメットはフルフェースが良いです。

(3)タイヤのグリップ力の変化

ピザくらいの大きさの接地面に、皆さんの大事なお車と皆さんの命が乗っています。気持ちよく走れるのも思い通りに止まるのも、思い通りクルマが動かなくなったのも、すべて接地面で起きたタイヤのグリップ力の変化によるものです。
タイヤのグリップ力は時々刻々と変化します。

タイヤのグリップ力は無限ではなく有限。それを縦と横、加速、止まる、横方向にドライバーが使い分けないといけません。

ポルシェが拘っているのは、タイヤグリップの変化をドライバーにわかりやすく伝えること。ひとつはステアリングインフォメーション。GT3に使用されるバケットタイプのシートは背中の密着でGの変化が感じられ、背中全体で動きの変化がわかるようになっています。

(4)3つの姿勢変化

クルマには、ロール、ピッチ、ヨーの3つの姿勢変化を伴います。
・ ロール: クルマを進行方向から見た場合の中心点を軸(X軸)とした動き
・ ピッチ: クルマを真横から見た場合の中心点を軸(Y軸)とした動き
・ ヨー:  クルマを上空から見た場合の中心点を軸(Z軸)とした動き

皆さんが一番意識しなければならないのは、Z軸のヨーイング変化です。皆さんのお尻から背中のセンサーでヨーイング変化を感じるようにして下さい。曲がっ た曲がらないを感じられないと、オーバーステアでテールが流れても気づくのが遅くなったりします。特に、911はRRなので、リアの動きがものすごく大事 です。

意識を持っているだけで良いと思います。それだけで結果は違ってきます。

(5)タイヤに掛かる力(Force)

曲がる力は、遠心力に打ち勝つ内側に向かっている力です。遠心力と釣り合う内向きに働く力がタイヤのイン側に向かったグリップ力となります。

コーナーの半径が一定であれば、タイヤに掛かる力は一定ですが、コーナーの奥でより半径が小さくなるような場合、そこでタイヤのグリップ力に余力が残っていなかったら、ハンドルを切ってもそのまま前の軌跡のまま、つまり曲がらずに飛び出していくことになります。

見えないタイヤの力を、今どれくらい使っているのか、まだ余っているのかなということをイメージすることが大事です。タイヤの力の限界を知る一つの手がか りとして、タイヤがキーと鳴った場合、グリップ力がもう残っていないと判断します。遠くでキーとなっているうちは95%くらい、そのキーが少し大きな音に なったら、全部使ったことになります。

気持ちを無にして、ポルシェが発する音を感じ取ってあげることが大事です。

(6)荷重移動

アクセルを踏んだり、ブレーキを踏んだりするときに、ピッチングによって、タイヤのグリップバランスが変化します。

ポルシェはメーカーの車両試験の中に、アウトバーンを想定した高速でのレーンチェンジ試験があります。試験では、アクセル一定のレーンチェンジ、加速状態のレーンチェンジ、アクセルオフのレーンチェンジ、それぞれの横のレーンのずれ方を確認します。

911は、少しアクセルを踏みながらレーンチェンジするのが一番安定しています。軽く加速状態にすることで、リアタイヤの荷重が増すためです。逆に、アクセルオフしながらレーンチェンジすると、もう1レーン行き過ぎてしまいます。

アクセルのオンオフでステアリングの感度が違います。そのような特性は、911が964型、993型、996型、997型と進化するに従って、少しずつ穏やかになってきていますが、リアエンジンのポルシェの特徴であることには変わりありません。

(7)タイヤの限界

まずフロントタイヤから限界を迎えてタイヤが鳴き出し、その次にリアタイヤという順序が、正しい限界の迎え方です。

フロントが限界を迎えずに、いきなりリアが限界を迎えた場合、一気にクルマがスピンしてしまいます。

コーナーでステアリングを切って曲がらないな~、タイヤがキーと鳴っているなと思ったら、自分が火事場から逃げ出すわずかな時間が与えられたと思って下さい。それに気づかずに、ステアリングを切り足していくと、ますます曲がらなくなってしまいます。

四輪駆動は直進力が非常に強く、ステアリングを切ってフロントタイヤで曲がろうとしても、曲げまいとする力が大きいです。四輪駆動モデルの皆さんは、普通のカレラ(RRモデル)以上にフロントタイヤの荷重に気を使って下さい。

コーナリングで、いつコーナリングが終わるか、いつからアクセルを踏んで良いかがコーナーの課題となります。アクセルを踏むのは出口が見えてから。出口が見えないうちにアクセルを踏んでしまうと飛び出してしまいます。

(8)アンダーステアとは

ステアリングを切っても曲がらないのがアンダーステアです。フロントタイヤのスリップアングルがリアのスリップアングルよりも大きいときに発生します。

アンダーステアの対処の方法は、とにかくアクセルを戻し、スピードを落とすことです。アクセルを戻すことより、フロントタイヤの荷重も強まります。ステアリングの切り増しは避けます。

「アンダーが出たから、リアを流せば相殺するだろう」は素人の考えです。

(9)オーバーステアとは

リアタイヤがトラクションを失い、車体がコーナーの内側に切れ込んでいく特性です。リアタイヤのスリップアングルがフロントよりも大きい時に発生します。

基本的には、四輪駆動モデルの911ターボやカレラ4は、あまりオーバーステアは出ません。出ないように四輪駆動になっていると考えて下さい。911ター ボやカレラ4を選んだ方は、旋回力よりも直進性の高いポルシェを選んだ、もともと車両特性が違う(曲がりにくい)ということを頭に入れておいて下さい。

逆に、通常のカレラにお乗りの方は、曲がりやすい状態になっているので、オーバーステアが出やすいです。

オーバーステアの修正の方法は、滑った方向と逆向きのステアリング操作(カウンターステア)を行い、車両が本来の走行ラインを向くのを待ち、車両が本来の 走行ラインを向いた時点でステアリングを戻す、を一連の動作の中で行うことです。ただし、これは、スピードが高くなればなるほど、瞬時に操作する必要があ ります。

ご自身の許容範囲を超えた挙動になってしまった場合は、ブレーキペダルを強く踏んでスピードを落として下さい。スピードを落とすことが一番の良薬です。こ れに勝るものはありません。特にポルシェは宇宙一のブレーキ。死ぬほど効くブレーキです。眼鏡がすっ飛ぶほどのブレーキ性能を持っていますから、リカバ リーの際はこれを最大の武器として下さい。

(10)本日のポイント

・ クルマの荷重変化を常に意識したコントロール
・ 強弱をつけた正確なブレーキコントロール
・ スムーズで微妙なアクセルコントロール
・ タイヤ接地面を意識したステアリングワーク

二輪駆動と四輪駆動によってタックインの出方も違います。911ターボやカレラ4の方が穏やかで、荷重移動に対して変化が出にくくなっています。

ブレーキはファーストタッチを多めに踏んで下さい。最初に強く踏むことが大事です。持っている運動エネルギーを最初にリリースして下さい。踏み過ぎた場合 は、あとでブレーキを緩めれば良い。逆に、浅めに踏んで後から強く踏んだ場合は間に合わなくなります。一般道の場合は、追突されないように優しく踏みます が、サーキットでは逆だと考えて下さい。

アクセルはデジタル的にスイッチのようにオンオフするのではなく、右足の指先でアクセルを踏む感覚で操作して下さい。アクセルを戻す時もスパッと戻すのではなく、じわっと戻して下さい。そうすると荷重もゆっくり戻ってきます。

皆さんが乗っているのはポルシェですが、ポルシェが乗っているのは、ピザ1枚程度の大きさのタイヤの接地面だけです。接地面の上に皆さんの大事なポルシェと皆さんの命が乗っています。タイヤと路面の接地力を常に意識して下さい。

4. Jターンスラローム

敷地内トレーニング専用スペースに移動した参加者の皆さんは、45分間の「Jターンスラローム」を受講します。

ここでは「クルマの挙動の変化」を確認します。アンダーステア、オーバーステアにおける挙動変化について、ドライバーのアクセル、ブレーキ、ステアリングコントロール、そして4つのタイヤが接する路面との関係をイメージしながら、車の安定したコントロールを学びます。

「Jターン」とはその字体のごとく、スタートして直線を加速してから、あらかじめパイロンで設定された半円のコースに沿って、限界速度を維持しつつ安定したコーナリングを行うものです。
コースには、あらかじめR(回転半径)の違う二つの「Jターン」と、スラロームが用意されました。これは、インストラクターの皆さんが、安全かつハイレベルな走行ができるよう、事前に何度も試走を繰り返して設定したコースだそうです。
担当インストラクターは、織戸 学さんです。

事前のレクチャーでは、いかにグリップと駆動力を維持して車をコントロールするかを学ぶため、限界速度付近での走行感覚を感じ取ってほしいと説明が行われ、まず、お手本として、織戸 学さんが白の911GT2でデモ走行しました。

参加者の皆さんは緊張の面持ちで見守りますが、スタートしてからターンに突入するまでフル加速後、減速よる前輪への加重移動を確認してターンイン、高い速 度を維持しつつ、タイヤのグリップ限界付近を示すスキール音を一定に発しながら決して破たんしないコーナリング、そしてメリハリのあるアクセルとステアリ ングコントロールによるスラローム走行が披露され、参加者からは感嘆の声が上がりました。

いよいよ、参加者皆さんがコースイン。
最初はかなり慎重なドライビングですが、インストラクターから、暖かくかつ厳しい講評が無線で指示され、回数を追うごとに皆さんの速度も上がっていきます。

しかし、最新のポルシェは、走行性能が大変安定しているため、なかなかコーナリング限界まで追い込むことが難しく、皆さん苦労されていました。逆に911の安定性の高さも感じ取られたようです。
講習が終わりに近づくころには、感覚も慣れ、アンダーステア、オーバーステアを体感されたり、安定したコーナリングを披露されるなど着実に変化が現れてきました。
インストラクターの無線からも高い評価が聞こえるようになり、皆さんの腕前も表情も45分の間にすっかり変わり、和やかな雰囲気のまま、次のカリキュラムに進みます。

5. 先導走行レッスン(ショートコース)

コーナーをいかに安定して早く駆け抜けるかは、理論で分かっていても、実際にどの地点で減速すれば良いのか、そしてどの地点でアクセルを踏めば早くコーナーを脱出できるかは、なかなかわからないものです。
今回のカリキュラムでは、ショートコースと本コース両方を使い、インストラクターによる先導走行レッスンが行われました。

これは、インストラクター車両を先頭に参加車両が隊列を組み、各コーナーでのブレーキングポイント、クリッピングポイントを走りながら学ぶというものです。

プロドライバーの真後ろで走ることは、そのノウハウをいち早く感じることができます。ショートコースでは、影山 正美さんがインストラクターを務め、5台を1編成として9周のレッスンを2セット行われました。

ショートコースは全長が短く、コーナーのRも比較的きついコーナーが繰り返されますので、短い時間での加減速とステアリングコントロールが要求されます。
最初は慣れるために比較的ゆっくりした速度ですが、周回を重ねるごとにどんどんペースが上がっていきます。それでも車間距離が開かないように走行します。

1セットが終了後、休憩を挟み、インストラクターからアドバイスが行われ、2セット目に突入します。2セット目は皆さん感覚も慣れ、きれいな隊列走行が行われていました。

6. ドライビングクリニック(ショートコース)

ショートコースでは、参加者のクルマの助手席にインストラクターが同乗してレッスンが行われます。主にブレーキポイント、アクセルワーク、走行ライン取りの確認が主なテーマです。担当インストラクターは、田中 哲也さんと脇坂 薫一さんです。

日本のトップレーシングドライバーが、自分の車の助手席で、マンツーマンでレッスンして下さるなんて、夢のようなことです。

皆さん期待と緊張の面持ちで1台ずつコースイン。ショートコースを2周する間に走りながらのレッスンと、走行後の丁寧な講評が行われ、2回目の走行に入ります。

やはり、プロドライバーのアドバイスと参加者皆さんのレベルの高さがあいまって、2回目の走行では見違えるようなスムーズな走行に変わったのが、ピットからも良くわかりました。
計4周という限られた時間ですが、この後に予定される先導走行レッスンに結びついたのではないでしょうか。

7. 昼食

4つのグループに分かれて午前中のプログラムを終えた皆さんが、Aパドック2階のクリスタルルームに戻ってこられました。

全員揃ったところで、昼食です。午前中の手ごたえを語り合いながらの、和やかな休憩時間となりました。

8. サーキット走行講座

午後からは、全員がそろって、本コースの走行に向けたレッスンが始まります。
まずは、座学から。
サーキット走行講座もチーフインストラクターの清水 和夫さんが担当し、サーキットを走る上でお互いの安全を守るためにはどうしたら良いかというお話がありました。

(1)はじめに

今日は、同じポルシェオーナーさん同士が集まっていますので混乱はないと思いますが、クルマの性能の違いや経験の違いによる速い/遅いもあるでしょうから、今日は特別ルールを作りたいと思います。
基本は速いクルマが遅いクルマをいたわることです。

速いクルマの人は「俺は速いんだからどけどけ!」ではなく、前を走るクルマをいたわってあげて下さい。それと速いクルマは遅いクルマを自分で抜いていって 下さい。つまり、前のクルマは車線をずらす必要はありません。速いクルマが自分のリスクで車線をずらして下さい。また、バックミラーの死角に入らないよう にもして下さい。

(2)サーキット走行の基本

すべてにおいて安全はすべてに最優先されます。
先週、本コースでかなり大きな事故がありました。どこでクラッシュしたのかというとストレートです。なぜストレートという疑問もあるでしょうが、追い越されるクルマと追い越すクルマが同じ方向にレーンチェンジしてしまったためです。
ヘアピンやカーブは減速していますから、仮にぶつかっても大事に至りませんが、ストレートでスピードも出ていますから、少しでも接触しますと、クルマが何回転もして大きな事故になってしまいます。私の知る限り、ストレートでも死亡事故が何件か発生しています。
ストレートは一番息を抜いてはならないところ。回りのクルマをしっかり見て、自分のクルマの振動や異常も早く発見しないといけませんから、集中力を絶やさないようにして下さい。

(3)イエローフラッグとレッドフラッグ

今日はフリー走行もありますから、通常の全世界共通のサーキットルールに基づいてフラッグを出します。
特に覚えていただきたいのは、イエローフラッグとレッドフラッグです。

イエローフラッグは、コース上に危険がある場合に出されます。フラッグは静止状態で出される場合とオフィシャルが振りながら出す場合があります。振りなが ら出す場合の方が危険ですから、ギアを1段下げるくらいまで減速して下さい。オフィシャルは各ドライバーを見ています。できれば「わかりました」というア イコンタクトができると良いです。
ドライバーに余裕がないとオフィシャルが判断した場合は、ペナルティフラッグが出ることもあります。

レッドフラッグが出た場合は、中止です。速やかに減速して下さい。
事故車両の処理は我々が行いますから、皆さんはピットに戻って下さい。
仲間を助けようとして二重事故が起こるのが困ります。

(4)先導走行時の注意事項

・走行前にシートポジションの確認を忘れずに
・コースインはスタッフの指示で
・必要以上に前車との車間を開けずにラインをトレース
・ブレーキングポイント、クリッピングポイントを確認
・先頭車両の入れ替え時はスピーディに完了
・インストラクターからの無線の指示に注意

4台の参加車両を1台のインストラクターが引っ張ります。インストラクターの真後ろの参加車両が一番得してしまいます。ストレートで一周ずつ順番を入れ替 えます。インストラクターの真後ろの参加車両はインストラクターの合図で右ウインカーを出し、列の最後尾について下さい。
真後ろについた車両は、インストラクター車両の走行ラインを走って下さい。

(5)フリー走行時の注意事項

・コースインはスタッフの指示で
・ピットロードは60キロ制限
・コーナーは安全な速度で走行
・無理のないペースで走行
・追い越されるクルマは右側を走行
・追い越すクルマは左ウインカーを出し左側を走行
・追い越しはストレート部分のみ
・疲れ、集中力低下を感じたら無理せずにピットへ
・ブレーキが甘くなったと感じたらクールダウン
・チェッカーが出たら1周してピットへ

フリー走行はスピードも自由です。
私たちの教えるアウトインアウトのラインは、ハイリスクハイリターンです。0.1秒を削るためにリスクをおかすラインです。特に立ち上がりが外側ぎりぎりは危ない。
リスクの少ないラインは、クリッピングを少し奥目に取ることです。そして、立ち上がりのラインをアウトサイドにクルマ1台分の余裕を持たせることです。
ターン進入時のステアリングの切り遅れはコースアウトの原因になります。どちらかと言うと早めにステアリングを切って下さい。
私たちが教えるアウトインアウトのラインの外側は何もないと思って、そのラインの内側を走るようにして下さい。

ピットロードは60キロのスピード制限です。
ここはおまわりさんが取り締まっていると思って、スピードを厳守して下さい。
ピットロードの出口に小さな信号機がありますので、そこからスピード制限が解除されます。

今日はポルシェスポーツドライビングスクールのルールで、追い越しはストレートのみ可能とします。追い越すクルマは左側から抜いて下さい。

もし、走行中にクルマの調子が悪くなった、ご自身の調子が悪くなった場合は、ハザードを点滅させてスロー走行して下さい。その場合は緊急車両扱いで追い越 し可能とします。ここで後続車両がスロー走行車両に追従してしまうと、後ろから高速で走行してきたクルマとのリスクが生まれます。
お互い、臨機応変に対応して下さい。

ブレーキを踏んだ時の止まり方や安心感を絶えず気にして下さい。今日の気温ならフェードすることはないと思いますが、おかしいなと感じられたら、ブレーキ性能が低下したと判断して下さい。
走行後、ピットで停車するときは、サイドブレーキを使わないで下さい。ピットの中でフェードしてしまいます。Pにするか1速にギアを入れて停車して下さい。

ポルシェはブレーキに拘っている自動車メーカーです。
いざというときは、ブレーキを使ってパニックから回避して下さい。
万が一スピンあるいはコースアウトしそうになったときは、とにかく強くブレーキを踏み続けて下さい。壁に当たってエンジンが停止するまでブレーキを踏み続けて下さい。
同じスピンクラッシュするにしても、ブレーキを踏み続けていれば被害を軽減できます。

コースアウトしてクルマが動かなくなった場合、必ず守っていただきたいのは、速やかにガードレールの外側に退避することです。皆さんがコースアウトした時は、他のクルマも同じようにコースアウトする可能性があるということです。

減速時はエンジンブレーキを併用することも大事ですが、マニュアル車の場合、十分に減速せずにシフトダウンしてしまうと、オーバーレブでエンジンやトランスミッションを痛めてしまうことがあります。
フットブレーキを最優先して、しっかり減速して下さい。
ヒール&トーが原因でスピンクラッシュすることが以外と多い。ヒール&トーに自信がないのであれば、無理にやらないで下さい。できないことをハイスピードの本コースでやるのはリスクが伴います。
1コーナーであれば、80~90km/hまでフットブレーキで減速し、コーナーの手前で慌てずに変速すれば良いです。

基本はスクールでレースではないので、オーバーテイクするのが目的ではないと理解いただきたい。我慢するのもレースの大切なテクニックです。
コーナーの進入でのインを刺すのは厳禁です。相手にその意思が伝わっていないと大変危険です。

9. 記念撮影

サーキット走行講座のあと、Aパドック前でインストラクターとお客様全員の記念写真撮影が行われました。

10. 先導走行レッスン(本コース)

富士スピードウェイの本コースは、約1.5Kmの直線コースを持つ、世界でも指折りの高速サーキットとして有名です。F1をはじめ数々の国際レースが開催され、名勝負が繰り広げられた舞台でもあります。

各レッスンを担当したインストラクターの皆さんも本コースに集合され、インストラクター車1台に4台の参加者がついて、コースを4周します。これを2セット行います。
本コースは、走行スピードがたいへん高く、ストレートエンドでは車によっては250Km/h前後に達します。また、コーナーのRもショートコースと違い大きく設定されていますので、高い速度を維持したコーナリングテクニックが要求される極めて難しいコースです。

走行中でも、トランシーバーからインスラクターの細かなアドバイスが送られます、このアドバイスや、今まで受講したレッスンの成果を生かし、各車はインストラクター車にぴたりと追従して、きれいな編隊走行が繰り広げられました。
4台編隊といっても、インストラクター車の真後ろが一番勉強になるポジションです。
そこで各車は富士の長いストレートを生かし、1週ごとに車両のポジションを入れ替えていましたが、1日のレッスンで気心知れた間からか、スムーズにポジション変更が行われていました。

11. 本コースフリー走行

本日のレッスンの集大成とも言える、本コースフリー走行です。
今日一日、参加者の皆さんは普段では得られない貴重なレッスンを受けられました。
その集大成をこのフリー走行で各々のペースで自由に駆け抜けることができます。

事前の「サーキット走行講座」で、サーキットを走るための基本的ルール、マナーを学んだ皆さんは、正確なライン、正確なコントロールを意識して、1回15分間のフリー走行を体験します。
もし、ライン取りや、ペースがわからなくても大丈夫。インストラクター車両も同時にコースインして周回し、いつでも参加者はインストラクターの後ろに付くことで、臨時の先導レッスンが受けられるよう配慮もされるなど、きめ細かいケアが行われていました。

走行を終えられた参加者の皆さんは、上気した面持ちで楽しそうに今の走行を振り返っていらっしゃいました。
インストラクターの皆さんもその輪に交じり、走る楽しさやもっと速く走れるコツを熱心にアドバイスされていましたが、中でも、「皆さん!呼吸をするのを忘れないで下さいね!!」とのコメントが笑いを誘っていました。

15分間とはいえ、サーキット走行というのは予想以上に体に負荷がかかるものです。
一生懸命走るあまり、特にコーナーを走行中は無意識に呼吸を止めてしまっている方が多いそうです。
体力に自信のある方は、さらに次の15分間のセッションに向けピットアウトしていきました。

12. 本コース同乗走行

インストラクターが運転するポルシェの助手席にお客様が同乗し、ポルシェの持つ高い運動性能とポテンシャルを安全に体感します。
皆様は、特にインストラクターのブレーキの踏み方に驚かれていたようでした。

今回は、難病と闘うお子様達が同乗走行に招待されました。
ポルシェジャパン株式会社が、メイク・ア・ウィッシュの事務局を通じて、参加者を募ったとのことです。
心配そうに見守る親御さんをよそに、お子様達は同乗走行を大いに楽しんだようでした。

13. 修了式

すべてのプログラムが終わり、17時20分から修了式が行われました。

まずは、チーフインストラクターの清水 和夫さんから総評がありました。

清水和夫さん総評:

今日は一日お疲れ様でした。
初めての方、2年目の方、ベテランの方、皆さん全員が良い走りをしてくれました。
成長したことを感じられた方、あまりうまくなっていないのではないかと思われた方もいらっしゃったと思いますが、上に行けばいくほど、コンマ何秒のタイムを削るために、細かい反復練習と精度の高いドライビングが必要になってきます。
今日はレッドフラッグも出ませんでしたから、連続走行するとタイヤが温まって、タイヤのグリップの変化も体感できたと思います。
家に帰られたら、今日のおさらいをして、それを大事にしまって下さい。

続いて、各インストラクターから一言ずつコメントがありました。

田中 哲也さんコメント:

お疲れ様でした。
昨年参加したときは、ライン取りをこうした方が良いと思う参加者が結構おられましたが、今日は、そういう方がほとんどいなかったのでびっくりしました。
昨年は上手に走れなくても、今回は非常に進歩されているという方が多くて嬉しかったです。
私たちレーシングドライバーは毎日走っていますが、なかなか進歩しなくて、おまけに年を取ると共に落ちてくるのかな~というのもありますが、皆さんの走りを見て、私たちも刺激になりました。
ポルシェに乗る上でこうしたら良いのになぁとひとつ気付いたのは、 ダンロップコーナーです。奥がアスファルトで広いので、このような場所でポルシェのブレーキングを生かしていただければ良いと思います。ブレーキを踏めな い理由は、ヒール&トーに苦戦しているのか、単純にブレーキを思い切って踏む勇気がないのかもしれませんが、あそこだけがブレーキ性能を使い切っていない のではないかと思いました。このようなこともタイムを稼ぐ上で必要になりますから、今後も練習して下さい。

織戸 学さんコメント:

皆さんお疲れ様でした。
一日たっぷり走れたのではないでしょうか。
私は午前中、P7にいましたが、皆さんが理解するのが早く、それを 実践してくれたので嬉しかったです。何度も参加されている方は、スピードにも慣れ、クルマのコントロール能力も上がっているのがわかりました。考えながら 走れば、走れば走るだけ、技術力も向上すると思います。
街中でもスピードを出さずに正確なドライビングの練習をすることができます。車に乗るときは常に練習するつもりで運転していただければ、サーキットに来た時の底上げにつながります。
安全運転をしながら練習を続けて下さい。

脇坂 薫一さんコメント:

一日お疲れ様でした。
今年からインストラクターに加わりましたが、今日も富士スピードウェイでポルシェを走らせることができ楽しませていただきました。
中には一週間で5日間お会いしている方もいらしゃって、僕との絆も生まれたのではないかと思います(笑)。
来月は私の地元の鈴鹿でスクールがありますので、そこでもお会いして、皆さんとのポルシェ愛を深めたいと思います。

影山 正美さんコメント:

一日お疲れ様でした。
かなり前にスクールに参加したことがありましたが、その当時と比較すると、今日は大変レベルが高く、非常にきれいな走りをされていたと思います。
同乗走行で最後に皆さん気付いたと思いますが、私たちはブレーキを すごい踏み方をしていると思います。あのブレーキの踏み方はスピードが高ければ高いほど必要です。ABSが装着されているクルマなら、強く踏んでもまっす ぐ止まります。横Gがかかっているときは、リアが流れるかもしれませんが、車がまっすぐな状態であれば、強く踏んでもまっすぐ止まります。
怖いことは最初にやってしまおうというのが基本です。ですから、怖いから強く踏めないではなく、怖いことは早めに終わらせて、コーナーでは、ブレーキを抜きながら、ステアリングを切っていく、そのような走りをすれば、さらにタイムは詰まっていくと思います。
それと、街中でスピードを出す必要はないという話が出ましたけど、 普段からヒール&トーの練習はできます。逆に低い速度でヒール&トーするのは難しいです。赤信号で止まるときに、50キロから5速、4速、3速、2速と ヒール&トーしながら減速するという練習を普段からしていれば、サーキットに来た時に自分が違う人ではないかと感じるくらい上手になっていると思います。 これが上手になればシフトミスも減るでしょうし、サーキットでシフトダウン以外の他のことに気持ちを集中することができます。
また次回、皆さんとお会いするのを楽しみにしています。

続いて、修了証の授与式です。
清水 和夫さんから一人ずつ修了証とラップタイムが手渡されました。

最後に、ベストプログレス賞の表彰がありました。
賞品は、ポルシェのクレストで、裏には本日の日付とクラス、そして、インストラクター全員のサインが入ったものです。
表彰を受けたのは、GT3に交じってカレラ4Sを操り、見事、本日のトップタイムをたたき出した方です。

そして、早朝から始まった本日のPerformance プログラムが無事終了しました。

清水和夫さんインタビュー

会場では、チーフインストラクターの清水 和夫さんに、ポルシェ スポーツ ドライビング スクールの狙いなどについて、お話を伺いました。

-このプログラムの狙いはどういったところにあるのでしょうか?

ポルシェに限らず、ヨーロッパのクルマには優れたスピード性能を持つモデルが多いですね。
お客様はそのダイナミックなパフォーマンスに、アウトバーンで鍛えられてきたブランドに憧れて購入して下さるわけですから、ポルシェが持つ本来の性能を体験し、それを理解していただく機会を設けることは、たいへん意義のあることだと思います。
ポルシェは、販売促進のためにこのプログラムを用意しているわけではありません。スポーツカーを作っているメーカーとしての社会的責任を果たすためと言っていいでしょう。
ですから、私もポルシェの性能を褒めるだけではなく、短所を含めたポルシェの特性をすべて伝えるようにしています。お客様にはそれらポルシェの個性をよく理解したうえで乗っていただきたいと思っています。

-インストラクターの方の「ポルシェAG認定」というのはどのような制度なのでしょうか?

ポルシェが世界統一基準でこのプログラムを行うためのインストラクターの基準制度です。
最初ポルシェのインストラクターが来日したときに、ドイツで行っている内容のままでこのプログラム行おうとしたのですが、私はこちらの代表として、もちろ ん基本的な項目は共通でかまわないし、ドイツの理念は理解するけれども、日本には日本のお客様に適したプログラムがあると申し上げました。その後ディス カッションを重ねるなかで彼らもそれを受け入れてくれて、現在では日本のお客様に適した内容にアレンジしています。
彼らは2年に1度くらいの頻度で来日するので、そのたびに意見交換を行いながらこのプログラムを続けています。

-日本用へのアレンジとはどのようなことなのでしょうか?

やはり、ドライバーの経験度が違います。
ドイツはご存じのようにアウトバーンがある国で、ポルシェに乗られる方はそんな環境でそれまでいろいろなモデルを経験された、いわばアマチュアのハイエンドの方々です。
それに対し日本では、どちらかと言うと高級車としてポルシェに乗られるお客様が多く、サーキット走行も初めての方がほとんどです。
ですから、その違いを反映したプログラムを用意することは必要ですし、とても重要なことだと思います。

-ポルシェの魅力を端的に表現していただけますか?

ポルシェはドイツ人的気質と言いますか、効率性を非常に高い次元で求めているメーカーだと思います。
エンジンだけが速いというのではなく、止まる能力、曲がる能力、それからもちろん加速する力など、全体のバランスをどこまで高められるかということを常に考えています。
特にブレーキについての深い造詣、こだわりはまさに「宇宙一」であると言えます。
それだけコストもかけていますし、エンジン馬力の2倍くらいのブレーキ性能を求める姿勢は、彼らのなかにエンジン対ブレーキの「黄金の比率」が存在するのだと思います。
「スピードが出るからブレーキ性能に責任を持つ」という、ドイツ人の完璧主義が非常によく出ているメーカーです。

-お忙しいところありがとうございました。

○ポルシェについてはこちらから
http://www.porsche.com/japan/jp/

本記事の取材は、2009年6月に行いました。