歌舞伎座3月公演の3部で、中村富十郎が「石橋」を上演する。能の「石橋」の翻案である。
中国の清涼山を訪れた寂昭法師が石橋を渡ろうとすると、童子が現れて止める。対岸は文殊菩薩(ぼさつ)のいる浄土。そこでは獅子がボタンに戯れ、踊っていた。
「石橋」は初代富十郎ゆかりの芸だが、当時の振りなどは残っていない。「家の芸に」と願う富十郎は2001年4月の歌舞伎座で、文殊菩薩を登場させる形式で上演。息子の鷹之資が獅子に乗った菩薩を演じ、初舞台を踏んだ。
今回はその発展形で、能舞台を模した松羽目を用い、曲も作り直す。富十郎が樵人(そまびと)と獅子の精、鷹之資が童子と文殊菩薩。親子は、モデルにした安倍文殊院(奈良県桜井市)の文殊菩薩像と対面した=写真右が富十郎、左が鷹之資。寂昭法師は松本幸四郎。
富十郎は「文殊様は穏やかな顔をされている。童子を文殊菩薩の化身とします。菩薩になってからは言葉を発せずに舞います」。3月2~28日。問い合わせは03・5565・6000へ。【小玉祥子】
毎日新聞 2010年2月24日 東京夕刊