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UAE:ハマス幹部暗殺 ハマス、疑心暗鬼 ファタハとイスラエル内通?

 【エルサレム前田英司】アラブ首長国連邦(UAE)ドバイで先月、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマス幹部が暗殺された事件で、パレスチナ内部に犯行グループの「協力者」がいるとの見方が浮上し、ハマスと穏健派ファタハの間で非難の応酬が起きている。また、犯行グループが使用した旅券の一部は、何者かが別人になりすまして取得した真正旅券だった可能性が強まるなど、事件の謎は深まる一方だ。

 ドバイ警察は現在、先に国際刑事警察機構(ICPO)がハマス幹部マブフーフ司令官の殺害に関与した疑いで国際手配した11人とは別に、パレスチナ人2人を逮捕して調べている。汎アラブ紙アルハヤトなどによると、2人はパレスチナ自治区ガザ地区出身の元治安当局者。ハマスと対立するアッバス自治政府議長の出身母体ファタハの幹部が経営するドバイの不動産会社で働いていた。

 ドバイの高級ホテルを舞台としたマブフーフ司令官の暗殺事件では、イスラエルの対外特務機関モサドの関与が疑われている。イスラエルと鋭く対立するハマスは、逮捕されたパレスチナ人2人が車の手配などでモサドに協力したと激しく非難。これに対しファタハ側は容疑を否定している。

 ハマスはかねて、ファタハにはイスラエルの「内通者」がいると疑い、過去には武力行使を伴う対立抗争も起きている。

 ところが、ハマス内部から漏れ出た機密情報によって暗殺が実行された可能性も出てきた。

 ドバイ警察の長官は21日、「(マブフーフ司令官の)行動予定は身近な人間しか知り得ない」と指摘。情報がハマス内部から漏えいしたとの認識を示し、ハマスに調査を求めた。司令官とともにパレスチナ自治区ガザ向けの武器密輸にかかわっていた幹部が疑われている。

 警察は身柄の引き渡しを求めたが、この幹部が滞在するシリアとハマスは拒否した。

 一方、独誌シュピーゲルは国際手配グループの1人が不正使用したドイツ旅券について、イスラエルに実在する人物の名をかたった男が昨年6月、ドイツ西部ケルンで取得した真正旅券だったと伝えた。男はドイツ当局に対し、両親がナチス・ドイツを逃れた元国民だと説明し旅券を得たという。

 犯行グループの行方は依然として不明だが、英紙サンデー・タイムズはモサドに近い関係筋の話として、イスラエルのネタニヤフ首相がマブフーフ司令官の殺害を事前に承認していたと伝えた。首相は実行メンバーとも面会したという。

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 ■ことば

 ◇ファタハとハマス

 ファタハはパレスチナ解放機構(PLO)内の最大派閥で、イスラエルとの和平を模索するパレスチナ自治政府の屋台骨。一方、イスラム原理主義組織ハマスはPLOに属さず、イスラエルの存在を認めていない。ハマスは06年の評議会(国会)選で勝利したが、ファタハとの対立から07年にガザ地区を武力制圧。自治区はガザと、ファタハが治めるヨルダン川西岸に分断された。

毎日新聞 2010年2月24日 東京朝刊

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