18日公表された大阪市の10年度予算案。深刻な景気悪化を受け、生活保護費は全国の自治体財政を圧迫しているが、全国一の受給者を抱える大阪市はその額も突出。2863億円(市負担はうち4分の1)が計上され、歳出全体の2割近くにまで膨れあがった。「多額を通り越した巨額の計上に矛盾を感じる」。平松邦夫市長は会見で嘆いた。「全額国費での負担を」と訴えるが芳しい回答はなく、制度改革を国に突きつける模索が続く。【堀文彦】
大阪市の生活保護者数は13万6617人(昨年12月現在)で、市民の20人に1人が受給者。10年前と比較すると人数、保護費とも倍増に近い。
こうした急増の一因には、他の自治体が財政負担を避けるため「大阪市での受給を勧めている」との指摘がある。「大阪行き片道切符」とも呼ばれ、交通費を渡されて大阪に来たと証言する受給者もいる。市の調査によると、昨年12月の受給申請者2816人のうち約1割に相当する274人が6カ月以内の市外転入者。働きかけの真偽は不明だが「全額国庫負担ならこんなことは起きない」と市幹部も語気を強める。
今回の予算案では、保護費の適正支給を図るため、職員の増員や就労を支援する費用として別途16億円を計上。ケースワーカーは、任期付き職員242人を新規雇用し、1097人にまで増やす。また、「貧困の世代間連鎖を断ち切る」との目的で、モデル地区に指定した受給世帯の中・高校生を対象に、進学指導や生活全般のアドバイスをする社会福祉士の配置も始める。不正受給や貧困ビジネスに法的対応で臨む専門家チームも強化。現行の4人から警察OBらを加えた13人にする。
しかし、抜本的な制度改革が実現しない限り、焼け石に水の感は否めず、平松市長も「昭和25(1950)年以来、抜本改正がなされておらず、にごりやよどみがある。具体例を国に示し、改革を望む」と話す。今後も、支給する条件として、稼働年齢層に職業訓練を義務付けることなどを国に求めていく。
毎日新聞 2010年2月18日 大阪夕刊