「地方選の結果だから国政には影響しない」と開き直るか。それとも、「いまの政治潮流を象徴する民意の警鐘だ」と受け止め、出直しの契機とするか。
鳩山由紀夫首相と民主党は、そんな岐路に直面している。
今年初の与野党激突型の大型選挙で夏の参院選の前哨戦としても注目された長崎県知事選は、民主党など連立与党の推薦候補が大敗した。まさに「長崎ショック」と言っていいだろう。
長崎県知事選と同日にあった東京都町田市長選でも、与党3党の推薦候補が敗れた。勝利したのは、いずれも野党の自民、公明両党が支援した候補だった。地方選とはいえ、知事選と大都市部の首長選で政権党の推薦候補が連敗するのは、やはり尋常なことではあるまい。
鳩山首相は、長崎県知事選の与党候補敗北について「国政の影響があったことは否めない。政治とカネの問題を真摯(しんし)に受け止める必要がある」と語った。
首相が自らの個人献金偽装事件と、小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体をめぐる収支報告書虚偽記入事件など、一連の政治資金問題を敗因の一つと認めた意味は重い。
選挙結果を「真摯に受け止める」のであれば、首相は自らの問題で一層丁寧に説明を尽くすとともに、野党が国会招致を求める小沢氏に対しても説明責任を果たすよう指導力を発揮すべきである。
小沢氏は記者会見で「私の不徳の致すところで大変申し訳ない」と陳謝した。一方で、「地方選挙と国政選挙は基本的に有権者の意識が違う」とも述べた。
この認識には違和感を覚えざるを得ない。もちろん、地方選には地方に固有の問題や争点があり、必ずしも国政選挙とは同列に論じられない。
しかし、国政のあり方や政治潮流が地方選に反映する側面は見逃せない。ましてや選挙戦の構図が与野党対決型となり、閣僚や党幹部を含む国会議員を大量動員させた熱の入れようを振り返れば、長崎県知事選の結果が鳩山政権に及ぼす影響の重みをどの政党よりも承知していたのは、実は民主党ではなかったか。
地方の民意を侮ってはならない。昨夏の衆院選で政権交代が実現したが、その前哨戦と位置付けられた千葉市長選や静岡県知事選、東京都議選など一連の地方選で勝利したことが、政権与党だった自民党を追い詰め、民主党が躍進する原動力となったことを想起すべきだ。
政治とカネの問題でつまずき、景気もよくならない。米軍普天間飛行場の問題に象徴される「政権の迷走」も目に余る。ここは初心に立ち返って政権交代の使命や意義を再認識する局面ではないか。
自民党にも注文がある。小沢氏の証人喚問などの要求を民主党が拒んでいることを理由に国会で審議拒否に転じた。「地方の声を無視し、数の力に頼る与党の横暴」と言うが、国会で論陣を張ってこそ説得力を持つと心得るべきだ。
=2010/02/24付 西日本新聞朝刊=