きょうのコラム「時鐘」 2010年2月24日

 約400年前に築かれた辰巳用水が国史跡に指定されたのを機に、北陸各地にある噴水や滝など水を利用した都市公園の在り方を考えてみたい

人工的な池やせせらぎを取り入れ、噴水や水車を配した公園が珍しくない。ところが、清々しい水が流れているのは完成からほんの数年で、そのうち水が止まり薄汚れて行く。管理者も次々代わり維持責任があいまいになる

水が流れていたことさえ忘れ去られ、見向きもされなくなった公園がいくらもある。いわゆる「親水空間」と呼ぶ都市公園造りは70年代からの流行だった。が、いまや無責任な都市行政を象徴する廃墟のようである

先人が水と戦い、水に感謝した富山や石川の穀倉地帯には、辰巳用水を代表として藩政期に造られた用水が多い。それらが今も現役なのは「見せる」ために造ったのではなく、農業や防火など必要に迫られた「命の水」を運ぶ施設だったからである

辰巳用水の国史跡指定と同時に末浄水場が国名勝となった。水と命を学ぶいい機会だ。安易な水の利用を慎み、水の流れを尊ぶ。先人のメッセージが聞こえてくるようである。