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遮断器による電流遮断の考え方短絡事故などが発生したとき、数千から数万アンペアという大電流が流れます。構内に敷設しているケーブルは数百アンペアまでの耐電流性能しかありませんので、このような電流が流れれば瞬時に被覆が溶融し、発熱、発火します。それ以前に電力会社側の変圧器や発電機にも大きな負担が掛るため、このような事故電流は瞬時に切り離す必要があります。 回路を流れている電流を強制的に切り離す場合、電気は電路を流れ続けようとするため、電極が実際に離れたとしても、電極間を電子が流れようとして放出を続けます。この電視の流れがアークであり、光と熱を発生させながら電流を流し続けようとします。 アークは、空気が電離してプラズマ状態になったもので、10,000℃の温度を持ち、その温度から光が放出されます。また、導電性を持つため、アークを通して電気が流れ続けようとします。このアークを素早く冷却し、導電性を断つことでアークを消す(消孤させる)のが遮断の仕組みになります。交流回路の場合、プラス・ゼロ・マイナスという周期があるため、冷却されて導電性が低くなっていれば、ゼロ点でアークが消滅します。ここで絶縁が完全にとれなければ再発孤(アークの再発生現象)します。 定格遮断容量を間違えて選定すると、遮断時にアークの再発孤が発生し、遮断器を破壊する原因になります。これが原因で変電所が停電すれば、付近一帯を巻き込んだ停電が発生することになります。よって、アークの消孤を確実に行うための機器選定が重要になります。 ちなみに家庭用機器でアークを簡単に見る方法として、ドライヤーなどが運転している状態で、コンセントプラグをそのまま抜くと、わずかに放電します。この放電がアークです。100Vの電圧で12A程度が流れるドライヤー回路であれば、プラグを抜くだけでアークを消すことができますが、6,600Vの高圧電路を流れる数百アンペアの電流を遮断した場合、家庭用のドライヤーとは比較にならないほどのアークが発生します。
アークを消孤させることを主目的としているのが、高圧遮断器です。従来は絶縁油を内蔵した油遮断器(OCB)が使われていましたが、火災のおそれがあるために、今ではまったく使用されていません。 他に気中遮断器(ACB)というものもありましたが、遮断するときに使用する圧縮空気作る部分が過大であることや、圧縮空気によって発生する極めて大きな遮断音のため、ほとんど普及していません。 現在の遮断器の普及は、特別高圧受変電設備ではガス遮断器(GCB)、高圧変電設備では真空遮断器(VCB)が最も広く、良く使われています。 断路器・開閉器・遮断器の違いと使い分け断路器は、負荷電流を開閉することはできません。単に充電されているだけで、無負荷の電路を開閉するために用いられます。断路器で負荷電流がある電路を開閉すると、アークが発生して二相・三相短絡事故のおそれがあります。 開閉器は、負荷電流が流れている電路を開閉することができます。ただし、短絡電流を遮断することはできません。開閉器にヒューズなどを内蔵し、開閉は開閉器で行い、短絡電流遮断をヒューズに持たせるのが一般的方法です。ヒューズに一度短絡電流が流れると、切れてしまいますので交換が必要です。 遮断器は、負荷開閉・短絡電流遮断までを行うことができます。ヒューズとは違い、短絡電流を何度も遮断することができます。 真空遮断器(VCB)真空遮断器は遮断騒音が小さく、遮断能力が高く、金額もリーズナブルです。普及率が非常に高く、PF・S型を除くほとんどの高圧受変電設備で、VCBが採用されています。 真空遮断の遮断容量の選定真空遮断器の定格電流は負荷電流の1.3倍以上にします。負荷電流が200Aであれば、200×1.3 = 260A 以上の定格電流値が必要なので、上位の400Aや600Aを選定します。コンデンサ用の遮断器では、突入電流が大きいなどの理由から1.3倍では保護できない場合があるので、1.5倍以上の定格電流を持つ機器を選定します。 定格遮断電流として8kAや12.5kAの製品があります。電力会社に対して問い合わせをすれば、受電点における三相短絡電流を提示してもらえるのでそれ以上の数値とします。例えば三相短絡電流が5kAであると回答があれば、それ以上の8kAか12.5kAとします。一般的に12.5kAが主流です。遮断器の定格電流は定格遮断電流で決まることが多いので、負荷電流が100A程度であっても、遮断器定格電流が600Aという場合もあります。 真空遮断器の取付方式の選定真空遮断器には固定式と引出式があり、引出式の方がメンテナンスが容易で安全性が高いため推奨されます。引出式のVCBは、VCB本体を引き出すことで断路器(DS)の機能を持っているのと同等になります。しかし値段は固定式の方が安いので、固定式が設置されることも多いです。ちなみに、定価ベースですが、600AのVCB固定手動ばね方式は35万円程度、引出式電動ばね方式は70万円程度です。 各種インターロック機構が内蔵されており、正式な手順通りでなければ挿入・引出ができないようになっています。例えば充電中に引き出し操作を行った場合には、自動でスプリングを釈放して遮断状態にするもの、遮断器がオフ状態(遮断状態)でなければ引出操作がロックされるものなどがあります。 また、真空遮断器は、電源が遮断されてしまった場合でも開放動作を行う必要があるため、コンデンサを内蔵して電荷を蓄えておき、電源喪失により給田が停止しても、コンデンサの放電によって遮断操作のみを可能とすることができます。これを、コンデンサトリップと言います。 蓄勢方式の選定VCBが動作できる状態までばねに力を蓄えている状態を「蓄勢」と言います。これに対して遮断器が動作した後など、ばねに力が蓄えられていない状態を「放勢」と言います。 遮断器の動作においては、電流が流れる電極間から離す速さも遮断能力に影響します。速く電極から離れるほど遮断能力が高まります。よって、ばねの力で一定の速さを確保することで、遮断能力を高く一定に保つように工夫されています。ばねの力を蓄える方法として、手動と電動の二種類が製品化されています。 手動ばね方式のVCBは手でハンドルでまわすことでばねに力を蓄えて蓄勢します。手動ばねは手でハンドルを回さなければ二度目の遮断器動作ができませんので、遠隔制御や停復電制御をしている環境には不向きです。 電動ばね方式は小型電動機が内蔵されており、この電動機がばねを蓄勢します。電力の供給が断たれている場合、手動で蓄勢できるように手動蓄勢装置も内蔵しています。当然、電動式の方がコストは高くなります。 なお、どちらも遠隔で遮断動作は可能ですが、蓄勢状態にするための方式が違うことに注意して計画をする必要があります。 断路器(DS)ディスコンやDSという名称で呼ばれることもあります。単に充電されている回路を開閉するための装置であり、短絡電流を規定時間、異常なく流せる性能を持っています。電流が流れている回路を切り離すことはできません。負荷電流がある状態で断路器によって切り離すと、発生したアークを消孤させる機構を備えていないため、発生したアークが端子間に接触すれば短絡事故になります。 例えば負荷運転中に断路器で切り離しをした場合、断路器からアークが発生して短絡状態になり、キュービクルが焼損して停電するなどの事故が発生します。断路器の操作者も、アークによる火傷や怪我のおそれがあります。 負荷がある時には、原則として断路器に触れてはいけません。インターロックとして真空遮断器がONの時には動かないようにしている事例が多くあります。 断路器の選定方法定格電流は最大負荷電流の1.5倍程度とします。必ず真空遮断器とインターロックを確保し、誤操作による事故を防ぐように計画します。断路器はフック棒がないと操作できないので、フック棒を盤内に収容します。盤の表面に「フック棒位置」という表示を貼るようにすると、メンテナンスの際にフック棒を探して列盤を開けて回るという無駄を省くことができます。 気中負荷開閉器(PAS)電流が流れている回路の切り離しが出来る装置です。遮断器ではないので短絡電流などの大電流は切り離すことができませんが、一般的な負荷電流であれば切り離すことができます。 PASは電力会社との区分開閉器として、受電点になる電柱の上部や、外壁の高所に設置して使用します。無電柱地域などでは、地上設置で同様の機能をもつUGSやUASを使用します。地絡継電器付きや避雷器付き、電源付きなど各種の製品があり、過電流蓄勢トリップという機能を持たせて、事故需要家から他の需要家への事故の波及を防止しています。 過電流蓄勢トリップとは負荷開閉器は、短絡事故などで発生する事故電流を遮断することができません。事故電流を無理に遮断しようとすると、アークを消孤できず焼損・溶融してしまいます。このため気中負荷開閉器では遮断をせずに、電力会社の変電所で遮断してもらわなければなりません。変電所から一需要家まで電気を供給する場合、付近へも同じように供給していますので、一需要家が起こした事故によって地域一帯が停電してしまう「波及事故」が発生し、例えば病院等がその停電地域内にあれば惨事を招いてしまいます。 波及事故を起こした場合、経済産業省への事故報告義務がありますが、他にも被害を受けた他施設から損害賠償請求が発生します。このような事故を防ぐため、気中負荷開閉器に内蔵されている安全機能の一つが過電流蓄勢トリップです。SOG動作とも言われます。動作の一連の流れは下記の通りです。 1.気中負荷開閉器は事故電流の通過を確認すると、その状態のままロックします。 2.電力会社の変電所まで到達した事故電流は電力会社の遮断器で遮断するため、その系統一帯は停電します。事故を起こした需要家だけではなく、地域一帯で停電します。 3.停電を検知した気中負荷開閉器はロックを解除し、電流が流れていない安全な状態で、内蔵したコンデンサの電荷を利用して電路を開放状態にします。 4.電力会社は再閉路継電器という装置で、約1秒後に再送電してきます。事故を起こした需要家以外は復旧し停電は概ね2秒程度で済みます。この手順で地域の電力供給が回復できれば、波及事故扱いにはなりません。 詳しい調査をせずに切り離された気中負荷開閉器を再投入してしまうと、再び事故電流が変電所に流れてしまいます。二度目の送電はおこなってくれませんので、地域一帯を巻き込んだ波及事故となります。送電を急ぐあまりに調査を怠ると、より被害が拡大してしまいます。電気主任技術者の監視下から外れて電気設備の操作をさせないのが原則です。 限流ヒューズ付き負荷開閉器(LBS)負荷開閉器にヒューズが内蔵しており、事故時はヒューズが飛ぶことで事故電流を切り離すことができます。操作は基本的に手動で、フック棒を引っ掛けて引っぱる事で回路を開閉しますが、遠隔操作ができる製品もあるので保守管理方式にあわせて選定します。 LBSの定格電流は、負荷電流の1.3倍以上を選定します。ヒューズの容量は仕様書やカタログを参照して選びます。ヒューズには変圧器用、モーター用、コンデンサ用、一般用の4種類が販売されているので、定格電流を見極めて機種を選定します。 ヒューズ選定の注意ヒューズは短絡電流などの大電流では良好な特性を持っていますが、定格電流の2倍程度などの比較的小電流による事故電流では動作不良を起こし、過熱によりヒューズが爆発するなど、短絡同様にたちの悪い事故につながります。よって、定格電流と負荷電流の関係には十分な注意が必要です。 またヒューズは定格電流と遮断電流で選定するしかないので、例えば変圧器を増設したり、変更した場合にはヒューズリンクごと交換しなければいけません。 短絡などの事故を遮断した場合、切れた当該ヒューズは交換するしかありませんが、切れなかった他のヒューズも性能が著しく悪くなっていることがあるため、必ず交換する必要があります。 LBSの寿命についてLBSは、屋内使用の場合の耐用年数は15年、屋外使用の場合の耐用年数は10年と言われています。または、負荷電流が流れている電路を開閉した回数が、200回を超えたものについては、更新が推奨されます。耐用年数を超過した場合、アークを消弧できなくなるなど、開閉に不具合を発生させることがあります。 高圧カットアウト(PCS)高圧の配電路の開閉や、変圧器の一次側に設置しての開閉動作や過負荷保護用として使用される、高圧開閉器の一種に、高圧カットアウトがあります。( Primary Cutout Switch )の略称で、PCSと呼ばれます。変圧器保護用としては300kVAまで、高圧進相コンデンサ保護用としては50kvarまで使用可能ですので、小規模な受変電設備において頻繁に使用されています。 開閉性能はあまり高くなく、100回程度の開閉を繰り返すことで寿命になります。よって、頻繁な開閉をする場所への設置をせず、常に電力が供給され続けている電路への設置が勧められます。 箱型カットアウト磁気性のケースに収容されている高圧カットアウトで、絶縁耐力が高く、屋外で使用できる耐候性の高さを持っています。ケース内側にヒューズが収納されており、短絡などに対して保護しています。消弧性能を持つため、負荷開閉も可能です。 筒型カットアウト磁気性の筒形状をしたカットアウトで、電路の開閉は、筒の下部からヒューズを抜き差しすることで行います。 高圧電磁接触器(VMC)負荷開閉の耐久性が非常に高く、数百万回の開閉を行うことができる機器です。6kA程度の比較的低い事故電流の遮断も可能です。10kAを超えるような大きな短絡電流などは遮断できないため、電力ヒューズを内蔵したコンビネーションユニットとして設置することがあります。 高圧電磁接触器は特に進相コンデンサの投入・遮断に使用することが多く、自動力率調整装置「APFC」の信号により軽負荷時は進相コンデンサを開放し、重負荷時には投入するという自動制御が可能になります。 避雷器(LA)落雷時に構内へ侵入してくる異常電圧や、負荷開閉時に発生する開閉サージなどの異常電圧を抑制させるために設置します。引込口近くに設置し、以上電圧を大地に放電させて、電気機器の絶縁を保護する役割を持っています。 受電電力が500kW以上の需要家に設置することになっています。PASやUGS等に内蔵された機種があるため、それを選定することで代替とすることができます。500kW未満の需要家であったとしても、雷害の多い地域に受変電設備を設置する場合、設備信頼度を高めるために、避雷器を設置することが望まれます。 専用の避雷器用接地としてA種の接地線を供給する必要があります。施設用の接地と共用するとサージが流入するおそれがあるので、別に単独で確保するようにしましょう。 6.6kVで受電する設備の場合、放電電流2,500Aが広く使用されていますが、特に雷害が多いと認められる場所であれば、安全のため5,000Aの避雷器を設置するのが良いでしょう。 変流器(CT)高圧で流れる電流をそのまま計器や継電器に入れることができないため、CTを使用して小電流を取り出し、計器の数値を測定したり、継電器を動作させたりします。 CTを選定する場合、負荷電流の1.5倍とします。負荷電流の最大値に近い数値で選定してしまうと、計器の指針が常に最大値付近を推移するようになり計器精度が悪くなるほか、アナログ計器の場合読みづらいという弊害を生みます。 関連情報 |
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