背中を押す手

二年前、友人が化学療法を受けるため本島に来た際、連れて行って欲しいと願った場所がある。

手術を受けたあと、あまりにも辛くて立ち上がれなかった時、励まして下さったドクターが開業されたクリニックを見たいと言うのだ。

御礼がしたい、と。

真新しいクリニックの窓ガラスから患者さんが大勢待っている様子を見て、彼女は深々と頭を下げた。しばらく二人で外にいたが、もう一度頭を下げてから私達はそこを離れた。

先日、唇にできた腫瘍を診ていただくために私はそのクリニックを訪れた。

先生に彼女のことを話し、改めて御礼を申し上げた。

二年前に、私が勤務していた緩和ケア病棟で昇天されたことを話すと、先生は何もしてあげられなかったんですよと話された。深々と頭を下げていた友人の思いを先生にもう一度伝えた。

不思議な温かさを漂わせて先生は目を細めて頷かれた。

上記の投稿文を書くきっかけとなったJALの機内誌、スカイワードは、唇の腫瘍が良性か悪性か不安な気持ちで診察を待っている間に、そこの待合室で手に取った雑誌だった。

ブログ再開の記事、第一稿を書いた後、気づいた。

エッセー
2010/02/23




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