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きょうの社説 2010年2月23日
◎「高齢原発」の運転 石橋を2度、3度たたき
1970年に運転を開始した日本原電の敦賀原発1号機が、国内の商業炉として初めて
40年を超えて運転を継続することになった。日本の原発が本格的な高齢、長寿化時代に入ったといえ、その先頭を行く日本原電には、石橋を2度も3度もたたいて渡るくらいの慎重な運転で、原発の長寿命化の技術、ノウハウを確かなものにするよう求めたい。さらに、政府と電力各社は、原発の寿命について、国民の理解を深める努力をもっとしてほしい。原発の耐用年数は30年とも40年とも言われてきたが、法的に明確な規定があるわけ ではなく、機器や設備の補修、更新を適切に行っていけば長期間にわたって安全性を確保できるというのが政府の基本的な考え方である。 原発が高齢化(高経年化)しても健康体を維持できるということであり、原発の設置許 可に年限は設けられていない。原発の運転をいつ停止するかは、電力会社が安全性、経済性など総合的に判断して決めるものとされる。 むろん、40年を超えて運転する場合は、健全性維持のため、これまでと違った保守管 理方法が必要であり、電力会社は、余裕をみて60年間運転する前提で技術的評価を行い、国の認可を受けることになっている。敦賀原発1号機は今後10年間の保守管理計画の認可を受け、福井県も了承した。 原発の長寿命化に関する理論や考え方、手続きは是認できるとしても、実際に40年を 超えて運転している原発はまだ世界でも少なく、「高齢原発」の安全管理の技術が確立されているとは言い難い。機器や設備を長年使用すると徐々に劣化する現象(経年劣化)の的確な予測と日々の厳格なチェックがとりわけ重要である。 日本原電が今年停止予定だった敦賀原発1号機を2016年まで運転する背景には、3 、4号機の増設の遅れがあり、福井県は「なし崩し的に運転期間が延びることがないように」とクギを刺している。安全よりも経営の都合を優先するような印象や不信感を持たれることがないよう、安全運転に万全を期してもらいたい。
◎金沢・板橋交流 もっと太くしたい加賀藩の縁
北陸新幹線開業へ向け、金沢市が交流協定を結んでいる自治体のなかでも、東京・板橋
区は成果が具体的に表れてきた地域と言ってよいだろう。板橋区酒販組合が昨年秋に発売した焼酎「いたばし八丈百万石」はその象徴であり、商品開発を通して金沢との関係や加賀藩の歴史を区民にアピールした。藩の下屋敷があった地域の歴史への関心が協定を機に一段と高まったように見える。金沢市は新年度から、湯涌温泉の氷室の雪を板橋区に贈ることを決めた。他の交流都市 にも届ける予定だが、将軍家献上の伝承をもつ雪は、加賀藩との縁で結ばれた板橋区の方が地域の関心も高いかもしれない。板橋区の場合、このような歴史を切り口にした交流のアイデアが大事である。 都内の1つの区とはいえ、人口は金沢より多い約53万人を数える。何より、金沢への 親近感が強いことが他の都市以上に交流拡大の可能性を感じさせる。板橋との関係強化を、首都圏とのパイプを太くする足掛かりにもしたい。 金沢市と板橋区は2008年7月に友好交流都市協定を結んだ。加賀藩下屋敷が存在し たことから区内には地名や学校、公園、橋などに「加賀」「金沢」の名が付き、兼六園のことじ灯籠のオブジェもある。3年前に開催された加賀藩学講座では定員40人に200人近くが応募し、歴史への関心の高さをうかがわせた。 板橋区酒販組合と商店街連合会による焼酎「いたばし八丈百万石」は板橋と金沢、八丈 島をつなぐ命名である。前田利家の四女豪姫の夫、宇喜多秀家が関ケ原合戦後、八丈島に流罪となったが、前田家は幕府の許可を得て秀家子孫への支援を続け、明治後も子孫を加賀藩下屋敷跡に入植させたという史実に基づく。 区内限定で初回出荷分の3千本が完売したため、組合では増産体制に入っている。加賀 藩の歴史を生かす発想は金沢にとってはありがたく、応援したい取り組みである。区の広報誌には金沢特集が掲載され、観光ガイドなど民間交流も活発化してきた。金沢市内では湯涌温泉が板橋区民の宿泊割引を実施しているが、交流地域への優遇策はもっと広げていいだろう。
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