下村正洋個人情報の売買、なりすまし、フィッシング、ウイルス、ネットストーカーにネットいじめ等々、近年、急激に増え続けているネット犯罪は、多種多様な形態を伴い、摘発体制すらままならないのが現状です。

そこで、livedoor×シマンテック社でスタートしたニュース特集「ネット犯罪の恐怖から身を守る方法」では、ネット犯罪の被害者や、各専門家の方々にネット犯罪の実情や対策をインタビューし、ネット犯罪についての実態を追求します。

第1回目はインターネットによる個人情報漏えいの現況について、NPO日本ネットワークセキュリティ協会理事の下村正洋氏にお話を伺ってきました。

――個人情報漏えいの現況はどうでしょう?
下村氏:私どもで集計している個人情報の漏えいインシデント(重大事故に至る可能性がある事態)の件数は、2007年が864件、2008年は1373件と増加しています。ここで言うインシデントの集計基準は個人情報漏えいを対象に、新聞やインターネットニュースなどで報道されたものと、企業や団体組織がウェブ上で公開したものを集計したものです。漏えいの原因は、ウイルス感染やネットワークへの不正侵入、誤操作などを含みます。ただこれらは氷山の一角であるとも言えますね。軽微なインシデント(漏えいした情報が少数もしくは問題にならない程度)は、このインシデントの約30倍あり、さらに、報告にまでいたらないインシデントはその10倍も存在していると考えられているのです。

――そうしますと2008年で1378件の300倍、40万件以上の情報漏えい事故につながったかも知れないものがあるという考え方ですね。

「ハイチ大地震の被害者へ支援金を送ろう!」というメールを送りつけ、善意で協力しようとした人からお金を巻き上げようとする犯罪が広がっている。仕組みは至って簡単、このメールから偽のハイチ震災支援サイトへ誘導し支援金を巻き上げるというものだ。問題は金銭ばかりではなく、引っかかりやすい人という称号付きで個人情報まで売買されてしまう事だ。

このような詐欺メールは近年特に増加しており、これらメールに対する2009年の対策総額は13兆円相当に達しているという。(Ferris Research調べ)。

詐欺メールの手口は多岐にわたる。2008年には中国四川大地震、2007年には新潟県中越沖地震など、大きな災害や事件を取り上げたもの、「一億円が当選しました!」「チケットが当選しました」、などといった経済情勢を踏まえた架空のもうけ話や当選を語るもの、「ゴージャス姉妹『叶美香』が野っ原で生活していた!」といった有名人を使ったものが多くをしめる。一方、「なにやっとるん?あんたのお母ちゃんよ」等の親族を語ったもの、そして「主人がオオアリクイに殺されて1年が過ぎました」といったミステリー小説風のものなどもある。さらに、今人気のiPhoneも標的になりはじめており、「iPhoneの保証延長」をうたって偽のApple公式サイトへ誘導し、個人情報を抜き出そうとする詐欺メールも現れた。タイトルに惹かれてメールを開き、本文中のURLをクリックしようものなら、開いたWebサイト経由でウイルスに感染してしまう可能性がある。

最近の詐欺メールのタイトルは、つい1時間ほど前に報道されたニュースを活用した巧妙なものとなっており、ハイチ地震のように、大きな時事ニュースがあるとそれに関連した詐欺メールがすぐに配信される。例えばマイケル・ジャクソンが死亡した時も彼の死後数時間で「マイケルを殺した犯人は?」という詐欺メールが配信された。

このブログは?

このブログでは、多くのインターネットユーザーに、インターネット上の犯罪や、闇経済の危険性をより深く認識してもらうこと、そして、セキュリティ対策の重要性と具体的対策を提案することを目的として、ネット犯罪被害者の実情を取材したレポートや、セキュリティ対策の専門家からのアドバイスなどを連載いたします。