2006年03月13日

明日香むらの吹きガラス

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大阪島之内にあるギャラリー「和紙クラブ」(http://www.washiclub.com)。紙屋さんのビルの三階だが、向かいにあるスーパーの騒がしさが嘘のように、落ち着いたスペースだ。
そこで毎年春に行われる「明日香むらの吹きガラス・高橋直樹ガラス展(http://www4.kcn.ne.jp/~glassnao )」にうかがった。

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一般にガラスのイメージはどんなものだろうか。冷たい、硬い、鋭い緊張感…。高橋さんの器は、もっとやわらかくて暖かい感じだ。手に持つと以外に軽く、手触りもやさしい。
たんぽぽの咲く草はらに器が並んでいる写真が紹介記事でよく使われるのも、そのためだろう。
ユーモラスな顔のついた作品もたくさんある。

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ランプシェード。色の着いたガラスを何層か重ね、砂を吹きつけて模様を彫り出している。
灯を入れると、周囲に光が散らばる様子が楽しい。

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ガラス製のお茶道具。
抹茶碗や棗、水指。涼しげなお道具は夏向きだろう。
この建物の上の階では毎月お茶会が催されているが、そこで使われるのだろうか。
茶碗がガラスで大丈夫ですかとよく聞かれるそうだ。ぶつけたりしない限りは大丈夫、とのこと。
そう、かなり丈夫なのだ。
我が家で使うときは熱湯を注ぐこともある。最初はこわごわだったのだが、今ではゆず茶を作るのはたいてい高橋さんのグラスだ。

「この大きさのお皿があと三枚欲しいんだけど…」と頼んでいるお客さん。頼めば好みのものを作ってもらえる。作家さんがそこにいる展覧会のよいところだ。三月末に炉に火を入れるのでその時になりますけど、と高橋さん。

明日香村にある工房を見学させてもらったことがある。
高橋さん自作の炉に、思っていたより小さな作業場。高橋さんはすべての作業を一人でするので、動きやすいように合理的にものが配置されている。
吹きガラスは管の先に高温で溶けたガラスの塊をつけ、息を吹きこんで作る。
なんだか当たり前のようにグラスができ、花の模様がつき、縁が開いて注ぎ口ができてピッチャーになって…というのを見ていて不思議な気分になった。なにげなく簡単にできるように見えるのがとても不思議。道具も特別なものには見えないし(形を整えるための濡れた新聞紙なんてのもあった)。

わたしはグラスをひとつ買う予定。一番わたしと気の合う器を探す。似ていてもみんな微妙に違う。使うためのものなので、ひとつひとつ持って確かめてみる。わたしの掌に一番ぴったりおさまるのはどれだろう。ゆっくり時間を掛けて選んだ。
写真は今回のしずくのグラスと、以前に買った花のグラス、ねこの文鎮。花のグラスと文鎮の底は印判になっている。グラスの底に顔があってもいいじゃないかというCMが昔あったが、底にうさぎの印判があるグラスも、とてもいい。

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◇ OLU project 松岡永子 ◇

  
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2006年03月12日

大阪城公園・梅園

姿が見える前に気づく。梅は香りの花だ。
天守閣を左に見て、ここが石山寺だったことを示す「南無阿弥陀仏」の碑の横をすり抜ける。梅園を一望できる梅見坂の上に出る。

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今年は少し開花が遅い気がする。それでも早咲きのロウバイなどの見頃は過ぎて、かなりの蕾がほころんでいる。
遠望した梅園もきれいだ。けれどやはり、梅は傍らを歩きたい。梅園のまん中を歩いていると香りの迷路に迷い込んだような気分になる。
垂れ込めている日の方がよく薫る。
晴れたうららかな日なら、密を吸うメジロの姿が見られる。

もともとは城に梅が植えられたのは実を取るためだった、と聞いたことがある。だが、今では大阪の梅の名所だ。めずらしい種類の木もいろいろある。

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「思いのまま」って何が思いのままなんだろう、と木の前でカップルが首をひねっていたが、これはTV中継などでは必ず映る有名な花だ。一つの枝に紅梅と白梅が同時に咲くのが珍しい。まだ、ちら咲きくらいだったが、確かに色の違う花がついているようだ。




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あと一ヶ月ほどすると、大阪城は花見客で満員になる。
人混みは苦手なので桜の季節には来ないかもしれない。でもその前にもう一度花を見に来ようと思う。梅や桜ほど有名ではないが、大阪城公園には桃園もある。大阪城ホールに近いそこも通ったが、当然まだ一つも咲いていなかった。
桃には紅白が一つの木に咲くものがたくさんある。似ているように見えるけれど梅と桃では違うらしい。

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◇ OLU project 松岡永子 ◇
  
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2006年03月08日

風工房・工房展

うめだ阪急百貨店での手染めゆかた展の折りに、このサイトに書かせていただいた斎藤洋さんの風工房。その風工房が今春移転する。
今ある場所では最後になる「工房展」にうかがった。

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現在の風工房は京都・伏見にある。
もともとは酒蔵だったのを改装した建物だ。広くて天井も高い。手描き染めは一反の布を広げて染めていくからそれなりの広さが必要なのだ。今日はそこにさまざまな「作品」が置かれている。みな、斎藤さんのお友達の作品だ。

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きもの、洋服、鞄、帽子、書、写真、絵、詩集、版画、ホームスパン、ミシンワーク、フェルト、陶…とりどり、さまざま。種類も量も半端ではない。
山本公正さんのCDがかかっている。週末には公正さんご自身が来てのライヴがあったそうだ。
改めて、斎藤さんの交友関係の豊かさを感じる。

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風工房の布を使った服を試着させてもらう。
デザイナーの高木ゆりさんは染め上がった布を見てからパターンをおこすので、どれも一点しかない。染めの面白さを生かすように使い、釦なども気に入ったものがなければ自分で作るそうだ。贅沢で、さりげなく、面白い服。

チヂミが焼けたよ、と声を掛けられる。
陶版でチヂミを焼いているのは、その陶を作ったご本人。陶器は、今出品されているのと同じものだが、数年使いこんでいるだけあっていい色になっている。
お給仕をしているのも案内をしているのも、今日作品を出している作家さんたち。
ここにいると、ものを創るというのは決して特別なことではないのだと思える。

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テーブルには差入れのおにぎりや京野菜のサラダ、自家製シフォンケーキが並んでいる。あまりに居心地がよくて、すっかり腰を落ち着けてごちそうになってしまった。



◇ OLU project 松岡永子 ◇


  
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2006年03月02日

おだいりさまとおひなさま

あちこちでお雛さまが飾られる季節になった。
こどもの頃は「サザエさん」の家に飾られているような段飾りに憧れた。でももちろん、我が家はそんな大きな家ではなかったので憧れは憧れのまま。
今はどこもそうなのか、小さく飾れるお雛さまが多く売られている。
ところで、今年はちょっと気になることがあった。

心斎橋の大丸百貨店で最初に雛飾りを見たときのこと。
おだいりさまを向かって右、おひなさまを左(いわゆる京風)に飾ってある中に、一つの親王飾りだけが、おだいりさまを左に飾ってあった。
一週間ほどしてまた行ったら、同じ場所に別のお雛さまがおだいりさまを右にして飾られていた。

あべの近鉄百貨店の美術画廊でも、おだいりさまはほとんど右側にいた。

数年前まで、おだいりさまは左にいるのが主流だったはず。
いつから変わったのだろう、と思って、梅田に行ったときにデパートを見てまわった。
大丸梅田店では、おだいりさまは左にいた。阪神百貨店でも左。
阪急百貨店では混在していた。一刀彫の作家ものなどは右が多く、ミニ雛は左だった。

右と左。別にどちらが正しいということはない。
中国発の陰陽思想では、左が陽、右が陰、男が陽、女が陰。だから、(お雛さま自身から見て)左に男雛が来るのが古い形だろうが、お雛さまが落ち着く方に置けばいい。
お店で飾り方を決めるのはどんな人なのだろう。

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