大阪島之内にあるギャラリー「和紙クラブ」(http://www.washiclub.com)。紙屋さんのビルの三階だが、向かいにあるスーパーの騒がしさが嘘のように、落ち着いたスペースだ。
そこで毎年春に行われる「明日香むらの吹きガラス・高橋直樹ガラス展(http://www4.kcn.ne.jp/~glassnao )」にうかがった。
一般にガラスのイメージはどんなものだろうか。冷たい、硬い、鋭い緊張感…。高橋さんの器は、もっとやわらかくて暖かい感じだ。手に持つと以外に軽く、手触りもやさしい。
たんぽぽの咲く草はらに器が並んでいる写真が紹介記事でよく使われるのも、そのためだろう。
ユーモラスな顔のついた作品もたくさんある。
ランプシェード。色の着いたガラスを何層か重ね、砂を吹きつけて模様を彫り出している。
灯を入れると、周囲に光が散らばる様子が楽しい。
ガラス製のお茶道具。
抹茶碗や棗、水指。涼しげなお道具は夏向きだろう。
この建物の上の階では毎月お茶会が催されているが、そこで使われるのだろうか。
茶碗がガラスで大丈夫ですかとよく聞かれるそうだ。ぶつけたりしない限りは大丈夫、とのこと。
そう、かなり丈夫なのだ。
我が家で使うときは熱湯を注ぐこともある。最初はこわごわだったのだが、今ではゆず茶を作るのはたいてい高橋さんのグラスだ。
「この大きさのお皿があと三枚欲しいんだけど…」と頼んでいるお客さん。頼めば好みのものを作ってもらえる。作家さんがそこにいる展覧会のよいところだ。三月末に炉に火を入れるのでその時になりますけど、と高橋さん。
明日香村にある工房を見学させてもらったことがある。
高橋さん自作の炉に、思っていたより小さな作業場。高橋さんはすべての作業を一人でするので、動きやすいように合理的にものが配置されている。
吹きガラスは管の先に高温で溶けたガラスの塊をつけ、息を吹きこんで作る。
なんだか当たり前のようにグラスができ、花の模様がつき、縁が開いて注ぎ口ができてピッチャーになって…というのを見ていて不思議な気分になった。なにげなく簡単にできるように見えるのがとても不思議。道具も特別なものには見えないし(形を整えるための濡れた新聞紙なんてのもあった)。
わたしはグラスをひとつ買う予定。一番わたしと気の合う器を探す。似ていてもみんな微妙に違う。使うためのものなので、ひとつひとつ持って確かめてみる。わたしの掌に一番ぴったりおさまるのはどれだろう。ゆっくり時間を掛けて選んだ。
写真は今回のしずくのグラスと、以前に買った花のグラス、ねこの文鎮。花のグラスと文鎮の底は印判になっている。グラスの底に顔があってもいいじゃないかというCMが昔あったが、底にうさぎの印判があるグラスも、とてもいい。
◇ OLU project 松岡永子 ◇