JILSの不思議な依頼 ~オープンでフェアな意思決定を~(by 延)

 先ごろ、"JILS"でお馴染みの「社団法人日本ロジスティクスシステム協会」の登録制研究会である「ロジスティクスシステム研究会」から、筆者が代表を務める別会社メンバーに講演の依頼があった。同協会では、年始に、弊社メンバーが「物流子会社懇話会」で"派遣法改正"に関する講演をさせて頂く貴重な機会を賜ったばかり。今回も、筆者が、物流業界で、最も"旬"だと考えている"派遣法改正"に関する3月の同研究会での講演依頼だ。


 そこで、幾つか、確認事項などをお伝えした。小生からの確認事項は、いずれも、前例があるか、あるいは、これまでの同研究会の運用に沿った形のものである。筆者は、全ての事実を書いても構わないが、同研究会を尊重し、ここでは割愛することにする。


 物流業界では隠然たる力を持つ"JILS"からのお声掛けだけに、スケジュールなどを予め確保し、入念な準備作業を行う段取りをしていた。しかし、一向に、講演に関する確認事項の返事がこないので、担当者から事務局に問い合わせてみると・・・。


 「テーマとして、もう少し後の方が良い」との理由で、3月の講演が見送りになったとのことであった。こう応えざるをえない事務局担当者の心中を察すると忍びない。


 もともと、JILSサイドからの"3月中旬"という時期を指定され、尚且つ、"派遣法改正"という指定テーマでの講演依頼だっただけに、「見送りの理由」を理解することができなかった。依頼された側の代表者として、「それなら、最初から依頼しなければいいのでは?」と素朴に思ったからだ。


 恋愛に例えるならば、「好きです」と告白され、お付き合いを真剣に考えたのに「ゴメンなさい」と"フラれる"といった呆気にとられた状況、あるいは、求婚された側であるにも関わらず、「やっぱり・・・」と断られたような状況である。


 ちなみに、JILSから依頼があった3月中旬は、その週の月曜日に、人材派遣協会が大掛かりな"派遣法改正"のセミナーを開催し、水曜日に、日本経済新聞が"派遣法改正セミナー"を開催するといった、まさに、"派遣法改正"をテーマとした講演をするには打ってつけの時期。無論、厚生労働省も、3月に国会に法案を提出すべく準備を進めているベストタイミング・・・と、世間的に考えられている黄金週。

 
 もっとも、時期をどう判断するかは、各自の受け止め方の問題なので、その点をどうこう指摘するつもりはない。がしかし、そもそも、講演のご依頼をされている訳であるから、「最低限、講演断りの連絡をし、その理由の説明責任を果たすのがマナー」ではないだろうか。それが、講演の予定を空け、準備の段取りを進めている側から問い合わせてはじめて、「時期(タイミング)が悪い」と説明される始末。何度も言うが、だったら、最初から、依頼をしないのが社会通念(礼節)上の筋というものであろう。


 さりとて、こういった行き違いや段取りミスは、ビジネスシーンにはつきものである。しかし、筆者が懸念していることは、1.公的性質がある社団としての意思決定が、2.一部の私的な人間の恣意的な要素が反映されたとの疑念を抱かれかねない形で行われ、3.その意思決定に対するしかるべき説明もなく、4.これらのことに違和感を覚えない感覚そのものにある。


 嘗て、政治業界に身を置いたことがある筆者は、過去に、似たような場面に何度も遭遇したことがある。派閥の領袖や一部の長老議員がホテルの一室や料亭で繰り広げた"密室政治"、"談合政治"の姿だ。一握りのベテラン議員が、自らが権力者にしがみつくために、世論を無視した"密室政治"を繰り広げ、"談合社会"を築き上げた結果、自民党は、国民の真を失い、いとも簡単に凋落した。取り上げた事柄は些細なことではあるが、今回の「不透明な判断」、「説明責任の欠如」からは、同じ臭いを感じ取ることができる。長期の既得権益化は自ずと腐敗や弱体を招くものである。ゆえに、このままでは「自民党みたいになってしまう...」との危機感でこの文章を書いている。


 折しも、年初、JILSの賀詞交歓会に参加された会員から、「年々、人が少なくなってきている」といった感想、あるいは、業界団体の事業仕訳の可能性について意見交換したとある業界記者から「事業仕訳の前に、JILSは既に××している」といった辛辣な指摘を聞いた矢先の出来事。


 これまで、JILSは、物流業界に多大な功績を残し、「JILS抜きに物流業界は語れない」といっても過言ではない存在感を示してきた。そして、多くの物流マンがJILSに育てられ、いまなお、JILSと関わりを持つことに誇りを持っている。


 そのようなJILSであるからこそ、一研究会とはいえ、真に、業界の発展を考え、その権限を私物化しようとする一部の輩に惑わされることなく、オープンでフェアな組織運営を務めて欲しいと心から願いたい。JILS事務局におかれては、同研究会のページに書いてあった「活発な意見が次世代のロジスティクスを作り上げてゆくことを切に願っている」との思いを尊重し、活発な意見の一つとして受け止めて頂ければ幸いである。

2010/02/21


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