ユニクロは世界を変えられる、か？
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ユニクロの服には普段からお世話になっております。
家の中では寝間着代わりにユニクロのフリースを着るし、めんどくさくなるとユニクロのカシミアのタートルネックセーターのままで寝ちゃうこともある。（だって寒いんだもん。） 勿論、外出時だってユニクロのジーンズを履くし、スポーツジムではユニクロのカレッジ風Tシャツを着てガンガン汗をかく。 ということでユニクロの関係者のみなさま、家族共々いつもお世話になっております。
ファーストリーディングの柳井正氏は企業理念に「服を変え、常識を変え、世界を変えていく。」（2008年9月）を掲げている。
果たして、ユニクロが世界を変えられるのだろうか？
でも、僕はやや懐疑的である。
なんでか。 それは、服の購入時における僕の個人的な判断基準の一つに、 「１０年経っても、こいつとつきあえるか」。 というのがあって、僕の中でのユニクロとの関係は、あくまでも「かりそめの関係」に過ぎないものだととらえているからだ。 僕の感覚だと、ユニクロの服については、数年経って古びれてきたら、もう捨てちゃっても惜しくないや、という感じである。 捨てるときには少々心が痛まないでもないけれど、売っている方だって次から次へと新製品を繰り出してくるし、シーズンが終わる頃になると安値で売り切ってやろうという考えが伝わってくるものね。
服の「味わい」ということについて書く。
板坂元氏が著書の中で、 「若い頃のカロライン・ケネディーが、ハーバード時代の４年間、一度も化学繊維を身につけなかった」とか「純毛・純綿・純絹というプレッピー好みでとおした」とか好意的に書いている。（※１） でも、なぜプレッピーが化学繊維を嫌うのかについては、よく分からない。 仕方ないから、後は僕の想像で書く。 天然繊維の製品が好まれるのは、それが経年と共に「味わい」を増すという魅力をもっているからに他ならないと思う。
僕の好みで言うと、�儀燭離侫薀鵐優襯屮譽供爾筌張ぁ璽疋献礇吋奪函▲瀬奪侫襯魁璽箸覆匹禄稾咾世掘�大定番ブルックスブラザーズのボタンダウンシャツは純綿だ。
これらの服は、外観や機能に致命的な損傷が無い限り、少々古びたものを着ていたってそれなりに「サマになる」物だと思うし、もう少し言わせていただけるならば、むしろ古い方がカッコウイイものだと僕は思っている。
雑誌『２nd』2010年２月号の中で、ユニオンワークス代表の中川一康氏がバヴァーのワックスコットンジャケットについて「買ったときが一番かっこうわるい。」と言っている。
こういう感覚、分かる。ような気がする。
話をユニクロに戻すと、１０年経ったユニクロのフリースが新品のフリースより魅力を増して見えるだろうか？
服ってのは、多かれ少なかれ個性があって国民性があって癖があるものだと僕は思っている。
ツイードジャケットってのは多少なりとも田舎臭いものだし、ボタンダウンシャツってのは多少なりともエリート臭さがあるものだ。元来が、そんな出自なんだもん。仕方ないじゃん、である。
その点、ユニクロの服は、良くも悪くも無味無臭だ。
ユニクロの店に買い物に行くとよ〜く分かるが、老若男女の別なくお客さんが「わんさか」押し寄せている。不況など「何処吹く風」である。 年齢や性別に関わらず、しかも安値で着られるユニクロの服の良さが国民の多くのみなさんに支持されている何よりの証（あかし）である。 何と言っても、安いし、デザインも良いし、着心地もいいし、手入れも簡単だ。 おまけにくたびれて捨てちゃってもあまり惜しい気持ちにもならない。
しかし、全ての人間が、ユニクロの服だけで満足するかと問われると、そうとは限らないんじゃないかと思う。人間と服との関係はそんな単純なものとは思えないからだ。
リーバイス・ストラウス社の５０１が中古市場でびっくりするような値段で取引きされているように、「ユニクロの古着」が中古市場で高値で取引きされているようになったらユニクロもいよいよ本物だ〜と僕は思うのである。
※１ 『アメリカ流 男のこもん・せんす』（PHP文庫）
※２ ジョン・F・ケネディの娘。 |