“大物町長”逮捕に揺れる地元
“大物町長”逮捕に揺れる地元 02/18 19:22

福岡県町村会をめぐっては、会長の山本文男添田町長も、贈賄容疑で逮捕されました。

39年に渡り、町政のトップに座り続けている「大物町長」の逮捕を、町民や議会はどのように受け止めているのでしょうか。

大分県との県境に位置する添田町。

かつて町の経済を支えた炭鉱はすべて閉山し、人口も最盛期の半分以下の、およそ1万1,000人にまで減少しています。

そんな山あいの町に、不釣合いともいえそうな、ひときわ目を引く建物があります。

そえだ公民館、オークホール。

名前は公民館ですが、中には600人を収容し、壁が動いて音響をコントロールする、西日本有数の音響効果を誇るという音楽ホールがあります。

毎年の町の予算が、およそ80億円の添田町ですが、この建物の総工費はおよそ8億円。

ロビーには、山本文男町長の功績を称える胸像が置かれています。

現在10期目、39年に渡って町長として君臨し、全国町村会の会長も務める山本町長。

後期高齢者医療制度を運営する広域連合の設立をめぐり、当時、副知事だった中島孝之容疑者に現金100万円を渡した贈賄の疑いで、今月2日逮捕されました。

逮捕から半月が経ちましたが、町民の間から、表立って辞職を求める声はほとんど聞かれません。

ここ3回の町長選挙では対立候補が立たず、無投票で当選している山本町長。

町内には、その名前を記した石碑がいくつも設けられていて、その存在の大きさを示しています。

山本町長が作ったものには、こんな建物もあります。

豊臣秀吉が九州を攻めた際に戦場となった、岩石城跡。

ここには、歴史上の事実とは異なる、白壁に瓦屋根のお城風の建物が1991年に作られました。

総工費およそ8億円の保健センターは、月数回程度の乳幼児の検診のほか、トレーニング施設として使われているだけです。

さらに、1996年、城のすぐ下には、同じようなお城風の外観を持つ、老人福祉センターやレジャー施設が入る、「そえだジョイ」も作られています。

過疎の町に、中央との太いパイプを使って、さまざまな施設を作ってきた山本町長、しかし、そうした施設の維持費が、自主財源が乏しい町の財政の大きな負担になるのではないかと、懸念されています。

実際、胸像の置かれた音楽ホールは、2008年度の運営費が2,950万円だったのに対し、収入はその10分の1以下の248万円にとどまっています。

自治体の情報公開の状況を調査した市民オンブズマン福岡のまとめでは、町長の交際費などの情報公開に関して、添田町は、県内の自治体の中で最下位でした。

新年度を控えて、各自治体はこの時期、予算案の策定などに追われます。

しかし、添田町は、「町長が逮捕・拘置されていても、町の運営に支障はない」として、あくまで町長の帰りを待つという姿勢です。

本来、行政をチェックする立場にある町議会は、全員協議会を開いただけで、これまでのところ、責任追及に向けた具体的な動きは見せていません。

町長が逮捕され、長期間不在になるという異例の状況が続く中、添田町自身の自浄能力が問われています。