きょうのコラム「時鐘」 2010年2月22日

 「文明と文化の違いを述べよ」と言われて「文明は腹の足しに、文化は心の足しになるもの」と分かり易く説いた学者がいる

が、文明発祥の地で何千年もの間、国民の腹を満たし続けた国家はない。文明は衰退する。そのひとつ、ギリシャが今、深刻な経済危機にある。昨年秋の政権交代後、前政権の巨額な借金が発覚して混乱が始まったという

諸悪の根源は前政権にある、という論理は日本と似ているが、ユーロ通貨を導入しているギリシャの財政が破綻すれば影響は全欧に及ぶ。欧州文明発祥の地が欧州の繁栄から取り残され、ユーロ圈の重荷にまでなっている。残酷な歴史の教訓である

菅直人財務相の消費税率引き上げ論開始発言が波紋を広げている。これも、ギリシャが関係しているという。先日出席したG7で、ユーロの通貨危機に対する各国の厳しさを感じ取り、財政問題の重要さを学んだと本紙記事にある

今ごろ国際金融の大切さに気づくような財務相で大丈夫なのか、逆に心配になる。ギリシャの教訓を日本の「腹の足し」にするには、まず党利党略の税制改革論を捨てねばなるまい。