不景気だといいながらも、企業の業績は回復傾向を見せている。トヨタ自動車のリコール問題など個別事情はあるにせよ、自動車や電機など輸出企業はドン底から抜け出し、10年3月期決算(年間)の上方修正が相次いだ。
たとえばソニー。本業の利益を示す営業利益の赤字幅が縮小する(赤字額が600億円から300億円に改善)。ホンダは、当初1900億円の見込みだった営業利益を3200億円に上方修正した。
ところが、こうした追い風に乗り切れない会社も続出しているのだ。1月中旬から2月中旬にかけて、業績(営業利益)を下方修正した主な会社を調べたところ30社あった(下記の表参照)。東京商工リサーチの友田信男上席部長が言う。
「業績予想は、日本経済が今以上に低迷しているときに立てているはずです。だから、一般的にはかなり堅く見積もった数字だといえます。上方修正は『まあ、そんなものだろう』という感覚ですが、下方修正の多い業界はかなり深刻です。新日鉄や新日本石油など業界のリーディングカンパニーの下方修正は、中堅以下の深刻度を浮き彫りにしています」
小売りも苦しい。不況下のデフレで百貨店は閉店ラッシュ。外食産業は09年、6年ぶりに前年を割り込んだ。「ユニクロ」や「餃子の王将」など勝ち組が生まれる一方で、沈み行く会社も急増中なのだ。
「ベスト電器の下方修正でも分かるように家電量販店は大手の生き残り競争に突入しています。チケット販売のぴあが下方修正しましたが、コンサートや観劇、旅行など娯楽産業も辛い。サラリーマンの実収入が大幅ダウンしているし、消費は伸びない。内需関連が一時的な業績低迷で終わるかどうか、しばらく注目です」(前出の友田氏)
“3月危機”という言葉が頭をよぎり始めた。
◇社名/前回予想(営業利益)/修正後(営業利益)
◆ミクシィ/32億円/26億円
◆ぴあ/2億3000万円/▲6億5000万円
◆新日本石油/1250億円/990億円
◆新日鉱HD/550億円/320億円
◆新日本製鉄/400億円/300億円
◆東京製鉄※/53億円/▲37億円
◆NTTデータ/900億円/750億円
◆カシオ計算機/▲50億円/▲300億円
◆東ソー/200億円/70億円
◆双日/350億円/210億円
◆日立電線/10億円/▲45億円
◆日立メディコ/30億円/7億円
◆ベスト電器*/▲6000万円/▲45億3000万円
◆ツムラ/200億円/193億円
◆セイコーHD/46億円/11億円
◆岩崎電気/5000万円/▲12億円
◆日本冶金工業/25億円/▲63億円
◆小糸工業/1億円/▲7億5000万円
◆ホギメディカル/85億9000万円/79億5000万円
◆デジタルハーツ※/7億9500万円/4億9200万円
◆レオパレス21/▲111億円/▲282億円
◆文化シヤッター/3億円/▲29億円
◆サカタのタネ(注1)/13億円/9億5000万円
◆フジ・メディア・HD/66億円/37億円
◆ドトール・日レスHD*/107億3400万円/88億9000万円
◆ココスジャパン(注2)/16億2600万円/8億9800万円
◆東天紅(注3)/5000万円/▲3億円
◆ミズノ/44億円/22億円
◆東京スタイル*/31億円/5億円
◆ジーンズメイト(注3)/▲3億9000万円/▲12億円
無印は連結3月期決算、※は単独3月期、*は連結2月期、注1は
連結5月期、注2は13カ月変則の連結3月期、注3は単独2月期
(日刊ゲンダイ2010年2月15日掲載)