鎮静器に入れられ、じっと動かない犬
鎮静器を積んで火葬施設に向かって出発するトラック
犬と猫を中に入れ、トラックの荷台に積み込まれる鎮静器=いずれも徳島県神山町、角野写す
飼い主に捨てられた犬や猫を、火葬施設まで運ぶトラック内で殺処分している自治体がある。犬や猫を集める施設での殺処分が住民に受け入れてもらえないため、考え抜いた末の策だ。こうした方法も含め、全国では年間に約30万匹が殺処分されている。各地の自治体は新たな飼い主探しなどに取り組むが、成果は十分とは言えない。
徳島県動物愛護管理センター(神山町)。山あいにあるセンターの前に止められた8トントラックの荷台に鎮静器(ちんせいき)と呼ばれる金属製の箱(縦横1.2メートル、奥行き1.5メートル)が積まれている。
センターには県内6カ所の保健所から捨て犬や捨て猫が集められる。職員2人が、連れてこられて7日目の成犬や子犬、子猫計15匹を鎮静器に入れると、トラックは動き出した。運転席のボタンを押すと、犬や猫を閉じこめた箱の中に二酸化炭素が充満する。約1時間後、県西部の動物用の火葬施設に着く頃には犬や猫は動かなくなっている。
移動しながらの処分はセンターができた2003年に始まった。同県板野町にあった施設が手狭で老朽化したため、県が神山町に施設を建てた。その際、住民と「センターで動物を殺さない。焼却しない」という約束になったからだ。県は処分装置のメーカーと相談し、「走っているトラック内なら処分場所を決めずにすむ」と移動式の装置を取り入れることにした。
センター設立当時の担当者は「各保健所の真ん中に位置し、広い土地が確保できたのは神山だけ。住民感情に配慮するために考え抜いた結論だった」と明かす。これまで年間5千〜1万匹を処分してきた。センター職員の獣医師は「できるなら収容した動物をすべて飼って生かしてやりたい。でも、施設や金の問題で、そんなことはできないでしょう」と話す。