定型発達者もつらい…かな?

花風社・浅見淳子のブログ

あなた外人?

2009-12-06 09:16:20 | 日記

「三つの嘘」の反響が大きかったようです。

私が自閉圏の大人と付き合い始めてびっくりしたのは
「この人たち結構学校の論理を信じて育ったんだな」っていうこと。
われわれ定型発達の子どもは、学校の先生の言うことを「話半分」に聞いているもんですが。
だから学校が嘘ついても害が広がらないんですよ。本気にしないからね。
自閉っ子はそこが違うのね。

あまりに学校の言うことを信じているみたいなので
じゃあ最初から現実教えたほうがいいんじゃないの? と思ったわけです。

で、現実的な教育っていえば、ちょっと極端だけど、私が若いころに通ったドイツ語学校の話をしましょう。

ドイツ人っていうのは合理性で知られていますが
教科書は実に合理的にできていましたよ。
ひとつの単元で文法と会話とドイツ文化が学べるようにセットされている。
システマティックなよくできた教科書でした。

ある程度進んだところで、「ドイツに移り住んで部屋を借りる」という単元がありました。
会話の練習をするんですが、それがこんな感じ。

ツーツー(電話の鳴る音)
相手「もしもし」
自分「新聞で空室の広告を見ました。あの部屋はまだ空いているでしょうか?」(たどたどしいドイツ語)
相手「あなた外人?」
自分「はい」
がちゃん(電話を一方的に切る音)

こういう会話例が教科書に載っているんです。そしてドイツ人教師は重々しく教えてくれるんですよ。「あなた方は外人ですので、このようにドイツに行くと差別を受けます」

ドイツ政府が運営に携わっているオフィシャルな学校でこういう現実を教えていることにびっくりしましたね。
でも本当のことですからね。ドイツ人が外人に優しくないのは。実際ここでちゃんと予告されていたおかげで、留学した人はびっくりしたりせずにすむみたいですよ。「私たちドイツ人は外人を歓迎します」なんて言われていたら、かえって不親切だったかも。

続きの会話レッスンもあります。これも実践的。

ツーツー
相手「もしもし」
自分「新聞で空室の広告を見ました。あの部屋はまだ空いているでしょうか?」(たどたどしいドイツ語)
相手「あなた外人?」
自分「はい」
そこで電話を切られないように大急ぎでこう言えばいいんですって。
自分「私は外人ですが妻はドイツ人で私はルフトハンザ航空で働いていて・・・」

「そうすると相手もちょっとは聞く耳を持ちます、外人でも妻がドイツ人だったり、ドイツ系の大企業で働いていると、部屋を借りやすいです」とドイツ人教師は重々しく教えてくれました。

きれい事がない。まったき真実。
夢を持って教師になった先生たちにはこういうのきついかもしれないですね。
でも自閉の子にはこれくらい現実に即した教育が必要じゃないかと思うことがあります。
真に受けちゃうから、だから学校がキツイんですよ。私たちがてきとーに付き合っていた学校が。
そして「覚えなおし」が大変だから。

ちなみに、ニキさんに以前この体験を話したら
「親切だね〜そのドイツ語学校」と言っていましたよ。
事実をまっすぐ事実と受け取る脳みそだからね。人の心を深読みしないから。
私は自閉っ子とつきあうときには、事実を言うようにしています。わりと受け入れいいですよ。
ていうか「初めて教えてもらった」って感謝されることも結構多いです。

キティちゃんのマトリョーシュカです。

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