「人間の体に例えたら、不整脈が起こっている感じ。普通では絶対に起こらない」。9日、トヨタが国土交通省に届けた新型プリウスのブレーキ問題。昨秋から何度もブレーキが利かなくなり、がけ下に転落しそうになる体験をした大阪府吹田市の主婦(59)はトヨタの対応に強い憤りを感じている。
昨春、エコで減税の優遇措置もあるプリウスの購入を決めた。納車待ちの後、車が届いたのは夏ごろ。待ちに待ったハイブリッドカーだった。
最初に違和感を感じたのは昨年10月ごろ。京都府内の高速道路を走行中、ブレーキをかけているのに外れる感触があった。「あれっ!」。時速90キロ。車間距離を取っていたのが幸いした。
その後も高速で同じ出来事が相次ぐ。スピードを抑えようとブレーキを踏んだら、1秒ぐらい効かずにスッと走る。車線変更のタイミングでも起きた。「まるで不整脈」。販売店に相談したが「システム上のことなので大丈夫です」と取り合ってくれず、車体の確認すらしなかった。
ことし1月。実家の墓参りの帰り。駐車場から約30度の急こう配の下り坂をブレーキを踏みながらバックして出そうとした瞬間、また制御できなくなった。慌てて強く踏み込む。止まったのはがけの約30センチ手前だった。
「命を落としていたかも…」。足がすくんだ主婦は、恐怖で車を動かすことができず、車内でしばらく震えていた。「もし落ちても、運転ミスということになったのではないか」。
報道が始まったころ、販売店の担当者が自宅を訪れた。社の方針でシステムの設定を変更する修理をするので2月下旬まで待ってほしいとのことだった。「2月下旬? それまで乗ってていいの? 安全なの?」。遅すぎると感じ主婦は畳み掛けたが、相手は「すみません」と繰り返すだけだった。
主婦は「トヨタ以外は考えたことがない」という30年来のトヨタユーザーだが、1月以降の新車からは改修されていることを知り憤る。
「車体の安全性、そして対応も含めて信頼性が大きく揺らいだ。都合が悪くなったら結局隠すのか。それが世界ブランドの姿勢なのか」
代車も用意してくれず、できるだけ乗らないようにしていた。トヨタがリコールを発表した9日夜、販売店から「10日に修理します」と、ようやく連絡があった。
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