
大阪府・熊取町にある静かな小道。
池のそばを通り、深い緑に囲まれているこの道は、地元の人たちの散歩コースとして定着しています。
<地元の人>
「気持ちいいよ。週に1回くらい、気が向いた時に来てるんですわ」
「5月、6月ごろになったら、山桃がいっぱいなる」
この道は、近隣の地主と熊取町が協力し、主に森林や池の保全のために作られた、法律上は林道です。
地元の人には遊歩道としても利用されているのですが、最近は危険を感じているといいます。
<地元の人>
「この道路、細いでしょ。ちょっと“速すぎる”と思う」
「怖いと思ったら怖い。私なんかは横でよけるけど、その判断が出来なかったら、当たる可能性はあるわな」
住民たちを怖がらせているもの、それは…

加速をつけて、この林道を駆け抜けていくミニバイク。
どのバイクも結構なスピードで走っていきます。
中には、中型以上のバイクも。
彼らは、このすぐ近くの大阪体育大学の学生たちです。
いまの時刻は、午前8時45分。
1限目の授業に遅れまいとみんな必死です。
<取材班>
「3台連続で入っていきました」
スピードを出す学生のバイクに地元の人たちはまゆをひそめているのです。
<地元の人>
「危ないわ、あいつら。とばしてくるさかい」
(Q.危なかったことは?)
「あるある。同じ速度でビャーっと行くからな、4〜5台続いて。びっくりするよ」
「危ないですよ。ボンボンとばすから。(道が)クネクネしているから、前から見えないからね。大学生おかしいよ。こんなとこボンボンとばすから」
と、インタビュー中も、林道に向かって疾走するバイクが…。
<地元の人>
(Q.これが当たり前なんですか?)
「当たり前」
この林道は道幅が大変狭く、広いところでもおよそ2メートル。
そして、急なカーブが多いため、突然バイクが出てくることも少なくありません。

そもそも道の入り口には、関係者以外通行禁止の看板が。
関係者とはいったい、誰のことなのでしょうか。
<池を管理している人>
「水利専用の道なんですわ。農地用の池の管理のね。僕も3つ管理させてもらっている。もし事故あったら困るんで、学校の方にもやめるように言っている」
では、学生たちに通行してはいけないという意識はあるのでしょうか。
林道の出口で、憤懣取材班が学生に話を聞こうとしますが、授業があるのか、なかなか止まってはくれません。
入り口に場所を変えると、ようやく止まってくれました。
<学生>
(Q.通行禁止は知ってる?)
「えっ、そうなんですか」
「知らなかったです」
「知らないです。時間ないんでいいすか、学校あるんで」
ほとんどの学生たちは「知らない」と答えます。
そもそも、学生たちがこの道を通ることには大きなワケがありました。
<学生>
「10分近く変わるんじゃないですかね」
「時間としては5分は変わります」

林道と一般道の分岐点となるのが、この地点。
林道を使えば、大学の駐輪場まで信号もなく、スムーズに通学できます。
しかし、一般道を通れば、距離は林道の倍以上。
さらに信号も3つあるため、所要時間が10分前後違ってきます。
林道の管理をする熊取町役場によると、「通行禁止」の張り紙は、いわばお願いのレベル。
法律上は、車もバイクも通行禁止にはなっていない道路だといいます。
<熊取町水とみどり課・山田卓幸課長>
「もともとの利用者が自分の土地を出していただいて、林道は形成されてますので、個人の土地が絡む以上、なかなか動きにくい」
このため役場としては、住民の憩いの場となっている実態をふまえ、大学側に「自主規制」の申し入れしかできないといいます。
<熊取町水とみどり課・山田卓幸課長>
「住民が危険を感じるということがあれば、われわれも協議してなんとか是正してもらわないといけないので、お願いという形で申し出ております」
大阪体育大学も、法的には問題が生じないという立場から、これまでは強く学生を指導してきませんでした。
<学生>
(Q.学校から何か言われてる?)
「言われてないです」
(Q.危険とか言われない?)
「僕は一応30キロで通るようにしています」
「見えないところはわかってるんで、そこは注意してるんですけど」
しかし、大学は今後は歩行者の安全を考え、学生に通行の自粛を徹底すると話します。

<大阪体育大学教学部・大塚隆一次長>
「マナー違反をした生徒には、ペナルティを与えようと、マナー違反の規定を設けました。学生たちには啓もうという形で呼びかけていくしかない」
通行禁止ではなく、あくまで自粛という道路。
事故を未然に防ぐためには、はっきりとしたルール作りが必要な時期に来ているのではないでしょうか。
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