カンボジアに球場を建設した許亀淵さん

 一人当たりの国民所得が700ドル(約6万3000円)にしかならない東南アジアの貧国カンボジアで、韓国人野球解説者が野球ブームを巻き起こしている。先月27日、カンボジアの首都プノンペンから南西に50キロ離れた小さな村で、「許亀淵(ホ・グヨン)ベースボールフィールド」の開場式が行われた。

 人気野球解説者の許亀淵さん(59)が1億ウォン(約785万円)の資金を投資して、3年かけて完成させた「許亀淵フィールド」は、左右のフェンスまでの距離が92メートル。中央フェンスまでは113メートルで、国際規格に沿って建てられた。まだ内野と外野には砂や砂利が多く残っており、電光板もないが、選手の宿舎や屋内練習場など、必要な施設は整っている。今後、韓国の小中高校生チームの海外キャンプ地としても使用できる。この日の開場式には、在カンボジア韓国大使館のオム・ウォンジェ書記官、新韓銀行現地法人のイ・ジェジュン頭取など、カンボジア在住の韓国人も多数参加した。

 韓国野球委員会(KBO)の野球発展実行委員長も務める許亀淵さんが、野球の不毛地カンボジアに関心を持ち始めたのは2006年。当時、プノンペンの王立大学で学生たちに講義しながら、宣教活動を繰り広げていたキム・ギルヒョン元梨花女子大教授が、カンボジア初の野球チームを結成したという知らせを聞いたのがきっかけだった。「野球人がすべきことをキム教授が先になされたと聞いて、恥ずかしくなった」と話す許さんはその後、毎年ボールやバット、グローブ、ユニフォームなどを支援したり、プノンペン大学の選手たちの韓国訪問を主導するなど、カンボジアの野球発展の先頭に立って取り組んできた。そして昨年、広告モデル料として受け取った5000万ウォン(約390万円)に私財を付け加えて、カンボジア初の野球場を完成させた。

 昨年7月には、全羅南道康津にある康津ベースボールパークに5000万ウォンを寄付し、カンボジアに初の「許亀淵フィールド」を作った許さんは、「韓国国内はもちろん、海外に自分の名前にちなんだ野球場を作るという生涯の夢を叶えることができた」と語り、喜びの笑顔を見せた。

 2006年に初めて連盟が設立されたカンボジアの野球は、まだヨチヨチ歩きの段階。成人チームはまだ二つしかないが、ここ2年間で20チーム余りが誕生するなど、その熱気は早いスピードで拡大している。

 カンボジア野球連盟のチアリ・チェ事務総長は、「韓国代表は2008年北京オリンピックで優勝し、昨年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で準優勝したと聞いている。今回、許亀淵フィールドが完成したという知らせを聞いて、マレーシアやインドネシアなどからも、野球場の使用に関数する問い合わせがある」と話した。カンボジア代表のエイスイン・ムアンチャントアンさん(22)は、「カンボジアにも立派な野球場ができたため、東南アジア(SEA)大会での初勝利はもちろん、メダル獲得という目標を立てることができるようになった」と話した。

 許亀淵さんは「韓国は世界で初めて“援助を受ける国”から、“援助をする国”になった。野球の実力も世界のトップクラス入りした今、われわれは発展途上国への支援にも関心を持つべきだ。100年前、韓国に野球を伝えた米国人ジレット氏のことを韓国がまだ記憶しているように、カンボジアの人々も韓国を記憶してくれると信じている」と話した。

高錫泰(コ・ソクテ)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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