2010年2月20日 09時53分 | |
(9時間9分前に更新) |
新政権の米軍普天間飛行場をめぐる迷走ぶりにはうんざりしてきた。
政府が普天間の移設問題で、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ陸上部にヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)を造る代替案を検討していることが明らかになった。
しかもすでに米側へ打診しており、それが名護市長選で基地反対の新市長が誕生した直後の2月上旬だったというから絶句する。民主党は米海兵隊飛行場のために民主主義を投げ出すつもりなのか。
世界中でこれほど米軍基地が集中する「島」はほかにない。日米安保が重要と言い、海兵隊の継続駐留を見直さないのなら、当然の論理として沖縄以外で基地移転先を探すべきだ。ところが政府と本土の他地域はその議論から目を背けている。
民主党は野党時代に普天間の「県外・国外」移転を主張していた。政権の座に就き、現実と理想とのはざまに苦悩するにしても、選挙中に「最低でも県外」と鳩山由紀夫首相が公言した事実すら顧みないのであっては、政権交代の意義さえ疑いたくなる。
基地反対派の市長誕生について、平野博文官房長官が「選挙結果を斟酌(しんしゃく)しなければならないという理由はない」と放言。同じころ、岡田克也外相は移設先が見つからない場合は、普天間が固定化するとの懸念を口にしていた。
こうした発言の裏に陸上案の検討があったとしたら、選挙で示された民意をどう受け止めていたのか問いたくなる。政府は安保の負担論議から逃げるべきではない。
シュワブ陸上案は、辺野古陸上部に300~500メートルのヘリパッドを造る一方、鹿児島県の徳之島や馬毛島などを訓練先とする内容だ。
ただ米側は新型の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを配備するために最低でも1600メートル滑走路を求めている。陸上案が実現したにしても、普天間飛行場がそのままオスプレイ駐機のために使用されることが予想されるという。
さらに米軍再編に伴う日米交渉で検討されたシュワブ内陸部に1500メートル滑走路を造る案も、米側にあらためて実現可能性を打診する方向だ。
住宅地にある普天間の危険性を除去しよう、というのがすべてのスタートだった。なぜ継続使用という発想が生まれるのだろうか。
ましてや移設問題と決別して、新たな街づくりを始めようとしている地域に、形を変えて基地負担を上乗せしようとする考えも理解に苦しむ。
陸上案は国民新党が検討している。与党各党は独自案をまとめている段階だが、民主党が陸上案に乗ったのであれば、与党協議は国外を主張する社民党に抵抗の場を与えるだけの出来レースなのか。
小沢一郎民主党幹事長は「自分はかかわらない」と避けているかのようだ。政調機能の弱体化が内外から指摘される民主党の「政治主導」は看板倒れになる。
名護市が拒否する案にこだわり、迷走を続けるよりも、安保負担の公平化をめぐる地についた議論をしてほしい。