不安は的中した。
事情はこうだ。ちょっとややこしいが、当時の日本での法律ではこうなる。
まず、データの所有権が
ブラック会社が有する物である事。
つまり、ユーザが被ったアイテムの盗難は「
窃盗被害」には値しないという事だ。
なので、ユーザは「
不正アクセス被害」にあっただけという事になる。
つまり、
ブラック会社がデータをひっちゃかめっちゃかRTM業者に奪われ、
そのアイテムを不正に売買されただけという事になる。
そう、被害届けを出すのは、まず「
ブラック会社でなければならない。」
れっきとした
営業妨害であるが、
窃盗にはならないのだ。
犯人が見つかれば、不正アクセス法違反の容疑で逮捕されるだろう。
しかし、ブラック会社に
それを突き止めるだけのログが残っていない。
不正アクセスをされた。という事実を証明する事はできても、警察が不正アクセスをした奴等を突き止めるのは、相当な時間を要するだろうし、よしだの予想では国外からのアクセスだ。
捜査は、非常に困難なものになるであろう。
そして、
ブラック会社は、必死こいて警察にログを提出し、事情を説明するだけしておいて、ただ被害を拡大させていただけなのだ。
ユーザにしてみればこうだろう。
「警察に相談しても意味がない」
「払った分のアイテムは無くなったまま」
「もしかしたら、クレジットカードの情報も奪われているかもしれない」
追い討ちをかけるように、ブラック会社には、クレジットカードの代行業者からこんな事も告げられたそうだ。
「不正アクセスと思われるクレジットカードの支払いはできない」
不幸中の幸いではあるが、クレジットカードの情報類は、サーバに保存されていない。
都度、代行会社のクレジットカード認証に飛ぶようにされていたので、不正にカードを使用された人はほとんどいないだろう。
ただ、他の場所で手に入れられたクレジットカードを用いて、ブラック会社でゲーム内のアイテムを購入し、不正にユーザ売りつけていた形跡はある。
というかもうそんなんばっかりだ。
谷が下した判断は、完全に間違っていた。人に責任を押し付け、我関せず。
そんな事は、まかり通らないのだ。
それを承認し、推奨したのも社長だ。
腐っている。
そんな中、怒りが最高潮に達したユーザが会社に押しかけ社長を出せと入り口で張るような事も起きた。
深夜、一人で会社を出る女性も居るのだ。
社員の安全すら危うい。ブラック会社はとうとう
伝説レベルに達した。
この事件に関わる社員たちが必死に頑張って居る中、一人ほくそ笑む女がいた。
それは、とうの昔に人間を卒業し、ドドリアさんほどの力をつけた
お局 K子だった。