I子先生をはじめ、愚痴りながらも小川は勉強しながら対策を練り実装。
よしだ(男)も休みながらもしっかり対策を施していたし、大体の原因もわかった。
社内SEであるよしだ、外部鯖管理担当 よしだ(男)、カスタマーサービス I子先生。
24時間体制で頑張るGMたち。
事態は沈静するかにも思えた。
が、しかし。
すでに何の役にもたっていない谷部長が下した指示
「アイテムの盗難にあった被害者は、
警察に相談するよう返信しろ」
が最悪の結果をもたらすことになる。
よしだは、総務付けであるが故、朝一度は総務のデスクに顔を出す。
総務の電話番号はもちろん。代表番号だ。
ある日、げっそりしつつも会社に出勤すると
朝一発目から電話が鳴り止まないのだ。
電話にでると。
「○○警察署の○○と申しますが、不正アクセス事件についてお伺いしたい」
という電話だった。
警察からの電話に協力しない訳にはいかないが、ユーザが情報を得るためになりすます事もあるので注意が必要だ。
しかし、これが
異常なまでの大変な作業となる。
警察署によって対応が違うのだ。日本全国を対象にサービスをしているがゆえ、各所轄の担当者が電話してくる。
オンラインゲームとはどういうものなのか、どんな風にお金を払うのか。アイテムって何だとかそういうところから説明をしなければならない事が多い。
では、「被害の状況をログで提出します。」と言っても「ログって何か?」という事から説明しなければならない。
一方、所轄によっては「ログの提出をお願いできますか?」と至極簡潔に終わる事もある。
この電話が、総務とK子の部署にかかってくるのだ。おぞましい。K子は何を考えているだろう。
しかもログの提出は、紙面でなくてはならない。膨大な量のログを紙に印刷し、代表印を押し、
それが本物であると証明する。
社内の複合機はフル稼働。1ユーザにつき、本が一冊できる分量だ。
果てしねぇ…しかし、これがユーザのためになるのなら。I子先生は頑張り続けた。
よしだも電話応対を手伝いつつ、不具合があれば駆けつけ、教えられることは教えて回った。
悪いのは不正アクセスをした犯人(多分グループ)に違いはないのだが、何か
間違っているような気がする。日々、忙殺されている中。
ふと、よしだの中に
疑問がわいた。
ユーザは、このブラック会社の所有するサーバ内のデータを利用するためにお金を払っている。
しかし、このデータの所有権は、ユーザに帰属しない。
ユーザは、アイテムの盗難にあったと警察に訴えている。
警察は警察で困惑していて何の被害であるか。困惑している。
よしだの不安は的中した。