そして発覚。オンラインゲームを運営する会社には、GMと呼ばれる人達がいる。
ゲームマスターと呼ばれる人達だ。
ゲームマスターは、ゲーム内で遊ぶユーザー達のサポートを直接したり、不正が無いかどうか監視
をする役目を担う人達の事だ。
この会社ではカスタマーサービスもこのGMたちが請け負っていた。
その日は突然やってきた。
カスタマーサポートのメールアドレスに、
ユーザが持っていたアイテムが無くなったと。
最初は5通ほどだったらしい。
GMたちをまとめるI子さんは、そのメールの報告を受け、GMたちを安心させるためだったろう。
「大丈夫。こういう事はどのオンラインゲームでも起こる事だから」
とテンプレメールで調査する旨を伝えるよう指示をし、ソフトをまとめる部長、谷さんにすぐに報告をした。
が、谷さんも「大丈夫。こういう事はどのオンラインゲームでも起こるから」というI子さんの言葉を傍らで聞いていて自分もそれで安心してしまった。
ぉぃそれはお前に向けて言ったんじゃない。目を覚ませクソが。
I子さんは、I子先生というような存在だった。
I子先生は、その日に来たメールをチェックし、調査をするよう谷さんにも進言した。もちろん社長にも
報告するよう進言した。
しかし、すっかり安心している谷さんは、「特に問題は無い」と判断した。
そして事態は悪化していく。
一週間も経たないうちに、GMたちに届くメールは
毎日1000通を超え、そのほとんどが辛辣な言葉で書かれた苦情のメールだった。
アイテムが盗まれた。課金したアイテムが消えている。金を返せ。中傷。
カスタマーサポートの仕事ではある。苦情の処理やいかなるお客様の言葉もないがしろにしてはいけない。I子先生は、そのメールにテンプレで返すのではなく、誠意を持ってできるだけ手打ちでメールを返信する方針に切り替えた。
しかし、メールの量が半端ではない。自動返信メールではないし、テンプレメールでの返信であってもかなりの労働力が必要なのである。それを懇切丁寧に答えるようにし始めた。
顧客第一に考えるその姿勢は、すばらしい。
しかし、それは一通一通の返信が遅くなる事も意味し、ユーザたちの不安は最高潮に達してしまう引き金にもなった。
だが、I子先生は必死に頑張っていた。よしだもI子先生を応援した。彼女の姿勢は正解なのかどうかわからないが、尊敬に値する。
GMの人数は5名ほどだ。辛辣に書かれたメールはGMたちの心も蝕んだ。
確かにこの事態を引き起こしたのは、ブラック会社の体制に他ならないが、彼らはメールの処理だけではなく、不正ユーザの処理や、ゲーム内からの通報も対応する。
当たり前だが、
一日1000通のメールに対応できるほどの
リソースが無い。
I子先生は、同様するGM達を励ましながら、自ら長時間の勤務に耐えていた。
長時間の勤務?そんな物ではない。24時間以上だ。GM達が夜遅くまで頑張っているのだから。
と、自ら家にも帰らず対応にあたった。
そして当然であるが、この事態は社長の耳にもしっかり入る事になる。
会社の信用を揺るがし、社員を追い詰めるまさに最高レベルの
「
情報漏えい」
GM達のシフトは通常の昼~夕方シフトから、24時間体制に変更された。
そして、自律神経失調症をわずらっているよしだ(男)さんと社内SEである私、よしだにも任を言い渡された。
24時間体制でサーバの監視をする事。そして情報漏えいに対する対策をする事
こいつら、算数ができるのか。
24割る2を計算してもらいたい。
=12だぞ。12時間勤務365日だぞ?ダブルよしだは、限界に達した。