大動脈からの出血のため17日に死去した俳優の藤田まこと(本名・原田真=はらだ・まこと)さん(享年76)の葬儀・告別式が19日、大阪・豊中市内の寺院で営まれた。近親者のみの参列予定だったが、森喜朗元首相(72)やタレント・西川きよし(63)が出席。参列者約50人が最後の別れを惜しんだ。ドラマ「必殺」シリーズの最新の台本が棺に納められた。役者仲間だけでなくスタッフにも愛された藤田さん。後日、仲間たちによるお別れ会も予定されている。
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復活を期した仕事への“心残り”がそうさせたのか。棺の中に納められた台本の一部は、奇跡的に燃え残っていた-。
「近しい人だけで送ってほしい」。万が一の時に備えてそう家族らに話していたという藤田さん。棺に納められた唯一の遺品は、亡くなった日(17日)の夜に自宅に届けられたドラマ「必殺」シリーズの仮台本だった。
「2月はリハビリに励んで春から仕事を頑張るぞ」「ドラマの撮影もあるし、現場に戻りたい」と意欲を見せ、16日に自宅で倒れるまで、毎日、足の筋力トレーニングに励んでいた“仕事人”。最新の「必殺」の台本は、遺体の足元に納められたが、火の加減から完全には燃え切らず遺骨とともに残ったという。
棺の中で安らかに眠る藤田さんは、愛用していたステージ衣装の黒いタキシードに白いシャツ、黒いリボンのタイを締めていた。“仕事人”のまま天国へと旅立った。
藤田さんと30年以上、苦楽を共にしてきた所属事務所「オフィス斉藤」の斉藤社長は「藤田さんはものにこだわらないタイプ。本当に仕事に熱心な人で、趣味と言ってもゴルフくらい。一緒に入れるものはありませんでしたよ」と明かした。大衆を愛し、高級なものや名誉にはこだわらなかった。「ぼくにとっての飾りは妻」と話した仕事一筋の男の最後の旅の友は愛した作品だった。
出棺時には、集まったファン約20人の中の男性から「もんど〜」と「必殺」シリーズで演じた中村主水の名を叫ぶ人も。仕事にかける情熱が、未練が、台本を残させたのだろうか。