2010年2月20日0時22分
淡路島ほどの赤道直下の島に400万人前後が住むシンガポール。この国の特徴は、事実上の一党独裁体制のもと、先進国並みの1人当たり国内総生産(GDP)をもち、「箱庭国家」とも呼ばれるほど人口密集度が高いこと。近年、この特徴を生かし、先進的な社会インフラを実験的に導入し、積み重ねたノウハウと改良を加えたシステムを輸出するビジネスモデルで存在感を増している。
代表例が空港の運営ビジネス。東南アジアのハブ空港として評価の高いチャンギ空港の運営で培ったノウハウを武器に中国やロシア、中東などの空港の運営、管理業務を次々に受注。都市型鉄道でも、1987年に運行を開始したMRTのノウハウを基に、ドバイのモノレールの運行・オペレーション業務の受託に成功している。
また水資源が乏しいことから、水資源の有効活用に早くから取り組んでおり、このノウハウを基に中国や中東、アフリカなどの水処理プロジェクトに参画。アルジェリアで世界最大級の海水淡水化プラントの設計から運営までを受託するなど、世界の水処理ビジネスにおけるメジャープレーヤーの一つになりつつある。
政府は水関連ビジネス戦略として「グローバル・ハイドロ・ハブ構想」を策定。2015年までに世界市場で3%のシェア獲得を目指している。
こうしたビジネスモデルは、かつて資源のない日本が勤勉な国民と海に囲まれた地理的特性を生かして、加工貿易で一世を風靡(ふうび)した事例に似ている。そのビジネスモデルが中国勢の台頭によってかつての輝きを失った今、シンガポールのモデルを参考に、次の日本モデルの構築を探ることも必要ではないだろうか。(H)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。