キュイーン(メディアエンターティメント 1996)
今、シューティングが非常に好ましくない方向に歩みつつある、と思うのは俺だけだろうか。
何も市場の狭さ云々を今更論じようというわけではない。
シューティングの製作において、開発費の削減に伴って地味で着実な利益を得るという
ビジネススタイルが定着しつつあると思うのだが、それゆえにシューティングという
ゲーム分野の持つ多くの選択肢が狭まりつつある、そんな危惧を感じるのだ。
例えば操作。ボタンの数まで画一的になりつつある今日この頃、ユニークな操作系を持つ
ゲームなど許されない、といった風潮である。近年では彩京の「ゼロガンナー2」が大冒険したうちに
入るという有様。
例えばゲーム性。プレイ時間を短くしつつも客を満足させるという命題に対して、ユニークな
ゲーム性を避ける風潮(一般プレイヤーがつきにくいという事か)から、シンプルであとは
稼ぎシステムが爽快、という程度のアイデアしか出てこない。そんな現状。
例えばグラフィック。凝ったドット絵の背景など今は昔。SF的無機質感を前面に押し出せば
背景は単純なポリゴンの集合で事が足りる。デザインに時間を割かなくていいのも
メリットだ。結果、どいつもこいつもビル街だか亜空間だか知らないがひたすら単調な風景が
続くステージを飛ぶしかない。まぁ、今時のゲームはとにかく短時間にパンパンに詰めこんで
プレイヤーに「何がナンだかよくわからんが凄かった」と言わしめる事にのみ執着したというか、
SFXに金をかけた以外に誉め言葉が見つからない映画(の予告編)のような感じのゲームが多いから、
背景なんて誰も見ないのか。
例えばプレイヤー。少ない新作に飛びついて、いきなりゴリゴリの稼ぎを始めるとか、
プレイもしないうちにどこからか仕入れてきた知識でそのゲームを否定するような連中しか
シューティングに寄って来ない(本当は一般プレイヤーも金を入れてみたりするのだが、
訳分からんうちに死亡するか、連コインするシューターを見てるうちに他のゲームに行ってしまうとか、
そういう事が多いような気がする)。
なんだか、開発者もプレイヤーにも余裕というか、「遊ぼうか」という感覚がないような気がする
んだよ。今の市場では止むを得ないのかも知れないけれど。
今回のお題である「キュイーン」は1996年のリリース。アーケードでは対戦格闘ブームが一段落し、
大手以外は対戦格闘以外のジャンルに商機を見出そうとしていた頃だと思われる。
コンシューマではPS対SSの構図において、SSの旗色が悪くなってきた頃だったのではなかったか。
こんな時代に「キュイーン」なんてどこまで本気でどこまで冗談なのか分からないような
タイトルのこのゲーム、一体どんなゲームなのか。
このゲームは横スクロールで、全7面。1面から6面は童話をモチーフにしたステージとなっている。
というのも、このゲームのストーリーは、本の嫌いな子供たちが生み出した悪い魔法使いが
童話の世界を滅茶苦茶にしてしまったため、妖精が本好きな少年ひろ君とあいちゃんに助けを
求める、といったものだから。
ひろ君とあいちゃんは更に掃除が好きという事もあり、彼らは童話の世界に乗りこむための乗り物として
自分たちが名前をつけている掃除機を選んだ。うおぉ、タイトルは空飛ぶ擬音「キュイーン」の
他に「吸引」ともかけてあったのか!
まぁそんな訳で全7面を戦う事になったという事だ。
掃除機(1P側は「あかねちゃん」、2P側は「しろーくん」)に跨ったひろ君とあいちゃんを
十字キーで操作、×ボタンでショット(オート連射)、□ボタンでバックファイヤー(電源コードを
後ろに飛ばす攻撃)、○ボタンでクリア砲(制限アリの超強力攻撃)を行う。
また、前方でふらふらしているノズル部分は敵および敵弾を吸い込む(一部吸い込み不可なものアリ)
ようになっている。バックファイヤーと吸い込みは高得点(通常の倒し方の3〜4倍?)を
得られる。また、クリア砲で敵を倒しても0点。
あと、クリア砲の数は、敵や敵弾を吸い込むことでゲージが補給され、ゲージ満タンで1発、
最大3発までチャージ可能。
得点周りの仕様が割と最近のスコア重視なシューティングっぽいね。
アイテムは武器チェンジと救急箱。
武器は連射力の高いラピッド「R」、レーザー「L」、ホーミング弾「H」、3WAY攻撃する
バルカン「V」がある。ラピッドは通常よりまし、バルカンとホーミングが取っておくべき、
レーザーはどっちかというと罠といった感じか。
救急箱はダメージを食らった後しばらく経つと出現(敵を多数倒すと早くでるみたい)、
取ると再度吸い込みが可能になる。ただしショットは初期ショットになってしまう。
なお、武器チェンジを取ってもダメージ状態から復帰できる。おまけにその武器になる事も
できるので、かなり得した気分だ。
それでは次にステージ紹介。ステージは童話をモチーフにしたものになっている。
ステージ1:カエルの王様
野暮が服着て歩いているような俺は、この話よく知らない…。話を思い出そうとしたが
「親指姫」とごっちゃになってしまった。
まぁ実際途中に中ボスとして姫が登場するのだが。
森の中からスタートして、湖を越えるとその中ボス。最初はまぁ手慣らし程度なのでご安心。
さっき言った中ボスの姫を倒して城の中へ。城の奥にはカエルの王様がボスとして鎮座。
まぁ1面だから問題ないだろ、などとたかをくくってると目からのレーザーにて撃沈の罠。
ステージ2:マリアの子供
また知らない話だ…。序盤の天上界風ステージは天使が編隊を組んで出てくる場所が多いので、
どんどん吸い込んでやりたいところ。ただし密かに発射される矢には要注意。
ここはステージ的にはちと単調な感じもするが、吸い込みでの稼ぎが結構楽しいので、そこまで
気にならない。
後半は天空の宮殿。雲や壁が中ボス。宝箱から出てきたブロンズ像を倒すと
そこから急転直下で地上へ。なにやらギャートルズ的なルックスの人類や松本零児的ハゲタカが
出てくる。一体どんな話なんだ…?巨大ハゲタカや謎の緑色の多関節キャラを倒すと、
ボスの「悪い魔法をかけられたマリア様」が登場。これ見よがしに悪そうな顔つきで弾を発射してくる。
弾数自体は大した事ないが、いくつかの軌道が入り混じって飛んでくるのでアドリブが問われる。
ステージ3:あかずきん
まぁ流石にこれは分かりますが。
このステージでやたら登場する中ボス系キャラはフライパン。なぜに?途中には巨大フライパンまで
出現しているのだが…。あとは蜂の巣とか風船とかが中ボスとして登場。風船は攻撃が体当たりのみと
地味ながら結構手ごわかったりする。
ボスは狼。雄叫び攻撃や手足を伸ばして攻撃してくる。手足を伸ばした時に密かに画面上に飛んでいる
赤い弾が見えにくくて厄介。あと慣れないうちは大ジャンプ攻撃もネックだろうな。
コイツを倒すと腹が切り裂かれるアニメがカットインされて…という事はなしに赤ずきんとおばあちゃんが現れる。
ステージ4:白雪姫
まずはなんかノンキな曲と共に雪景色の中を進む。最初の方から登場する雪の結晶は、ただ吸い込むと
スコアは低いが、ショットで倒すと多数の弾をばら撒く。これらを吸い込んだほうがはるかに
スコアアップに繋がる。うーむスコアラー向けな仕様だこと。あと、このステージ途中の
ステージ途中には雪の結晶が破壊不能な障害物となっている箇所がある。そこはスクロールが
ゆっくりとなって、障害物にぶつからないように進まなければならないのだが、なぜか
この場面でのみ、当たり判定を表すと思われる白い枠がキャラに重なって表示される。
その枠を見る限り、自機より若干当たり判定は小さいようだが、ホントかなぁ〜?
実は小さいのはこのシーンだけだったりしないか?などと勘繰ってしまうくらい、このゲームでは
当たってないつもりの弾によく当たる。
ボスは白雪姫&小人軍団。小人の種類によって攻撃方法が異なるので、小屋から出てきた小人を
見て対処すればOK。とは言え、下と前から攻撃が次々とやってくるので、集中力はそれなりに必要。
ステージ5:忠義者のヨハネス
また知らない話だし。なんか常時画面下の海を椰子の実?が流れていたりするのだが、この話の
キーワードなのか?
海賊船と並走しながら中ボスのTシャツとかと戦ったりする。全体的にこのステージからは
ホーミングじゃないと辛いような気がする。せめてバルカン。
南の島?に到着した後、中ボスのカニを超えると石像にされたヨハネス出現。ていうか、青っぽい色合い
なので銅像ではないかと…。南の島に銅像と言えばトリオ・ザ・パンチだが、こちらは足から火は吹かず、
変な弾を投げて来たりして大変。
ステージ6:ブレーメンの音楽隊
このステージの大部分の的はトマト。最初に出現する中ボスもトマトの集団で、色々な形態をとって
攻撃してくる。要はセブンフォースって事だが、第3形態辺りまで倒さないと、ミスしたら最初から
やり直しなので、最初のうちはかなり辛いと思う。形態はトータルで5つくらい。
トマトフォースを倒したら背景が超高速スクロール(ザナック並)になるがやる事はほとんど
トマトとの戦い。やっぱりホーミングかバルカンがあると楽だ。
ボスはブレーメンの音楽隊の4匹。サングラスかけている事で悪い奴になってしまっている事を
表現したいらしい。動物ごとに攻撃パターンが違い、攻撃中の動物のみダメージを与える事が
可能。ホーミングだと意外と当たってくれない感じ。長期戦必至かも。
ステージ7(最終ステージ)
ここは最終ボスとの一騎討ち…の前になんかポリゴンでぐるぐる回る奴が出現…なんだこりゃ?
椎茸チックな形状をしたおかっぱこけしとしか言いようがない。こいつは倒すまでの時間でスコアが
変わるようなので、一つのボーナスステージか。なんでこんなのが?
マニュアルのステージ紹介には「ボスたちの攻撃をくぐり抜け…」とあったので、本来はボスラッシュだったのかも
知れないが、結局この椎茸おかっぱの後に悪い魔法使いが登場。攻撃が非常に多彩で、
時間が経過すると(あるいはダメージ量か?)攻撃が2つ同時になってくる。おまけに長期戦必至の
体力量ときた。
このボスで意外と辛いのは、クリア砲のもととなる吸い込める敵が出現しない事と、
ミスったらボス戦の最初からやり直しという事。まさに実力勝負か。
こうして各ステージを紹介してきたわけだが、まず
敵の(とりわけ中ボス、ボス)多彩さは正直着目に値すると思う。しかもいずれのボスもワンパターン
ではダメ(多分)で、それなりに避けやクリア砲での緊急回避にアドリブを要するようになっている。
その一方で、ボス系のキャラの攻撃や、ステージ途中の仕掛けなどには、
「初見ではまず死亡」レベルが割と多く混じっているというのもポイントか。
個人的にはコンシューマなんだから、これくらいの覚えゲーの方が楽しめていいじゃねーか、と思っているので
大歓迎。
ステージ自体も7つ、しかもそれぞれが結構なボリュームを持っている。アーケード慣れした身には
ちと長く感じるが、コンシューマで長いこと楽しむ分にはまぁOKなレベルではないかと思う(この辺は
人それぞれだからナンとも言えないが…)。一部のステージで、多少同じパターンの敵出現が長く続きすぎるかな…、
という印象を受けるところがあるのだが(2面とか)、それを除けばステージは割と変化に富んでいると思う。
また、ゲームそのものの長所としては、掃除機のノズルで敵や敵弾を吸い込む爽快感というのも見捨てては
なるまい。シュヒィ、シュヒィというSEとともに敵編隊を吸い込んでなおかつスコアもアップと
くれば、こりゃ愉快。コンシューマでスコア稼ぎの要素がどれくらい必要とされているかの論議は
別として、スコアアップを狙うとなると、極力敵弾を撃たせてそれも全て吸い込むなどといった
パターン作りが必要になるものと推察される(あとはボスとか中ボスで永久パターンがないかどうかかな)。
次にグラフィックやサウンドといった外見に関して見てみるとしよう。
まずグラフィックだが、とりわけ背景の絵が丁寧に描かれている印象を
受ける。キャラが手抜きという訳ではないが、背景の丁寧さが目立つという事。しかしそれゆえに、
ひろくんとあいちゃんがモデリングになっているという点が大きく違和感を覚える原因となっている。
あと後ほど述べる欠点につながるが、自機の弾を初めとしてキラキラとしたエフェクトなどが多く、
それが敵弾などを見えづらくする原因となっているのは正直なんとかして欲しかった。
サウンドはこれまた丁寧と言いますか、ゲームから浮いてないな、という感じ。アピールという点では
弱いが、ステージの雰囲気にはよく合っているので、「BGM」という観点から言うならかなりのレベルでは
ないかと思う。とは言え、最終面なんかはかなり盛り上がるのでプレイする機会があれば是非とも
聞いてみていただきたい。
プレイヤーは大抵のボスで「あれ?なんでダメージ食らってんの?」という状況を目にする。
コレがこのゲームの問題で、自機の弾や敵の弾を初めとして、とにかく各種エフェクトがかかりまくり。
中には敵の弾なのかエフェクトなのか分かりにくいものも多くて(ステージ3の狼の伸びる手足が残す
赤い弾とかその典型)、投げ出してしまいそうになる事もあるかも(ミスると戻されるしねぇ)。
そう、もう一つ問題になるのがこの「ミスると戻される仕様」。コレ自体が悪いという事は全然
なくて、むしろウヤムヤのうちにハードルを越えた事になってしまう「その場復帰」よりも
潔いじゃねーのなんて思ってしまうのだが、その潔さをこんなファンシー系ゲームに持ちこんで、
更に自機はでかいわ、エフェクトのかかりすぎでミスった原因は分かりにくいわ、とあらば、その潔さは
足かせとなってしまうと思うのだ。ついでに言うと、ミスった時のひろ君の「うわぁっ!」という
ボイスも段々うっとおしく思えてくるしねぇ。
結局のところ、ゲームにおいてはバランスが重要という事なのかな、と思う。ここでいうバランスというのは
難易度曲線がどうとかキャラ間の性能のばらつきとかそういう意味ではなく、グラフィックやサウンドとゲーム内容と
対象とするプレイヤー層の持つ感覚、そして難易度という辺りの各要素が、どれだけ釣り合いが取れているかという事や、
背景とキャラとエフェクトといった画面を構成する各要素の間の釣り合いの事。
画面を構成する各要素の釣り合いについて述べると、このゲームではとにかく画面がゴチャゴチャしている
印象を受けると思う。キャラ担当者、エフェクト担当者、背景担当者がそれぞれの立場で頑張ったのはいいのだが、
トータルとしてこれらを画面上に出したとき、
とにかく画面がゴチャゴチャしてしまい、死因が分からなくなってしまっている。
これを統括する立場の人が何を抑えて何を押し出すべきか、メリハリを出せてなかったんじゃないか、
という気がする。
このゲームでは、1発は被弾してもすぐミスにはならない。これ自体は初心者の失敗をある程度フォロー
してくれるし、吸い込み攻撃ができないという意味でスコア狙いの上級者にとっては十分なペナルティにも
なっている。しかし、先に述べたようにグラフィックがゴチャついてしまっているために
プレイヤーの死因が分かりにくく、結果として「なんでか分からないうちにダメージを食らっているが、
取り敢えず一発死にじゃないので助かっている」というプレイになる事が多い。
ついでに言うと、自機が画面に対してかなり大きいので、どうしても避けられないのでは?と
思わされる攻撃とかが出てきてしまう。そうなるとプレイヤーとしては「クリア砲とかで
力押ししろって事か?」なんて思えてしまうのではなかろうか。
これらの点からトータルして、スコアシステムや初心者へのフォロー、
力の入った(入りすぎた)グラフィックなど、かなり緻密に
作りあげたはずのゲームだが、「ファンシーさ」というルックスとの両立を狙ったがために、
キャラクターを大きくせざるを得ず、結果的に初心者救済の「非一発死にシステム」が、
「コレでなんとか我慢してよ」的なパッチを当てたかのようなシステムに映ってしまっている…
そんな印象を受けた。
だが、このゲームに詰めこまれたアイデア(特に中ボス)はシューティング好きなら「ほほぅ」と
思ってくれるはず。ベクトルは違うが「パロディウス」並のボリュームだと思う。
そう言えばパロディウスシリーズのアーケード最終作(2003年現在)、「セクシーパロディウス」の
リリースはこのゲームと同じ1996年だった。このシリーズは各種アイデアが多彩であるにも
関わらず、その難易度の高さ故にプレイヤーの大部分はそれを知らないままに終わってしまったという
ところがある。96年と言えば他にも「バドルガレッガ」が登場、これが「怒首領蜂」を呼んで
アーケードシューティングは弾幕系への道を歩み始めるのだが、この頃がお遊び的アイデアを詰めこんだ
ゲームの末期だったという事なのかも。
(一応、2000年に出た「グレート魔法大作戦」も背景の演出は色々凝っていた上に溜め撃ちでアイテムを
集めるというアイデアがあったのだが、正直言ってヒットしたとは言いがたいんだよなぁ…
俺は好きなんだけど)
さて今回紹介したキュイーンだが、7年前のゲームだけあって、今見ると微笑ましいというかなんというか、
そんな点がある。それはデモ画面。このゲームのデモ画面は画質と動きが時代を感じさせるアニメパートと、
頑張ってモデリングした感が溢れるポリゴンパートからなるのだが、
無機的なポーズのひろ君や飴玉のように丸い葉っぱと幹からなる木がまばらに並ぶ森など、
「あぁ昔はこんなのでも十分に驚けたものよなぁ」
などと思える事請け合い(PS、SS以前のゲームを知っている人限定)。
そしてオープニングテーマ、エンディングテーマまでついているときた(これがまた…)。
これもファンシーさ演出の一環という事なのか?