『キュイーン』


(96,5,1,メディアエンターテイメント)



メディアエンターテイメント。

あぁメディアエンターテイメント。

絶対に誰も覚えてくれなさそうな社名コンクール入賞という訳で、今回は頑張ってこの社名さん一杯使って皆に覚えて帰ってもらおうと思います。

パチンコ好きな方はご存じでしょうけど。


〜1〜

メディアエンターテイメント。

別に強調する意味は個人的にありゃしないんですが、他に話の枕が思い浮かばないので仕方ありません。

この会社さん、馴染みの無い方にはとことん馴染みが無い気がします。

メディアエンターテイメントさんは今でも勿論現役、頑張ってPS2用ソフト開発してらっしゃいますが、その開発履歴は何とあの3DO時代にまで遡ります。

10年ひと昔ですよ。

3DO、サターンで旗揚げした後はプレステ陣営にスムーズに移行し、そのまま頑張っておる感じですね。

ソフト開発に関わる敷居と費用のリスクが極端に少なくて済んだと言われる松下3DO、あの涙無くしては語れないハードに夢見た(正確には見る前に覚めた)者としては今でも心に引っかかりますが、あの場所で旗揚げして今でも健在なメーカーさんって少ない気がします。

メディアエンターテイメントさんは偉いですよね。

まぁ例の『フリートークスタジオ』とか初期は繰り出しておられましたけど、ある方向に歩み始めてからは安定期に入った気がしますね、端から見てると。

私はそっちに全然疎いんで詳しくは言及できませんが、パチスロ、「帝王」とかタイトルに入るPS用ソフトを開発し始めてからは、すっかりまぁ落ち着いたみたいでメディアエンターテイメントさん。

定期的にパチスロシュミレーターを繰り出してきて、時には遊び心溢れる冒険作を出してきてますね。

フードアクションと自称する新ジャンル、焼き鳥や焼肉や鍋奉行やら、大ヒットしたとは言えませんけど強烈な印象を確実に残したソフト、それらを開発した件は皆様ご存じでありましょう。

この手の遊び心をやっつける余裕があるという事なんですよね、結局は。

メディアエンターテイメント、3DO時代からよくもまぁ頑張って…32ビット時代に消えていったメーカーも多いってのに…と何故だか感慨深いものがあります。

色々なジャンルで模索してた時期もあったみたいですよメディアエンターテイメントさんは、大技林見てると。


で、そんなメディアエンターテイメントさんが自分の個性を確立する前の模索していた段階に、シューティングゲームを1作だけ出してくれてました。

それが今回のお題、『キュイーン』です。


もう面倒なので以後はメディアエンターテイメント略してMEと手抜きますね。


〜2〜

『キュイーン』は、MEがPS初期にリリースした、横スクロールSTGです。

初のSTGにしては…と色々とフに落ちない点があるので、追々言及していきますね。


んではいつもやってるので仕方無い、仕様解説をさっさとやりますか。

横スクロール、方向キーで移動、使用するボタンは3つ。

ショット連射、バックファイアー、クリア砲、至ってシンプルな操作ですね。

バックファイアーは文字通り、後方に短い攻撃判定の出る多少強力な攻撃、横シューでこの装備がデフォルトで1ボタンで連射可能であるという時点で、本作の手応えを見切る方も多いことでしょう。

クリア砲もSTGでお馴染みのボム、道中様々な行動を取る事により上昇するゲージを溜めて3本までストック可能、無敵効果に加え弾消し、複雑な仕様ではありません。

メインショットは、道中出現するアイテム を取る事により4種に変化しますが、属性が変化するだけでパワーアップはしません。

バルカン、ホーミング、レーザー、ラピッド、どれも馴染みのある類ですから違和感無く使用可能です。


と、ここまでは至ってシンプル、難しい事は何も無いといった様相ですが、今作には他に例を見ない、類似例はあるけど程度が全く異なる特殊攻撃が存在するのですね。

本作のタイトルは『キュイーン』、それは「吸引」であり、加えて自機は「掃除機」に乗った少年少女。

掃除機なだけに、吸引しない訳にはいかないでしょう。

面倒な操作をする必要は無く、ただ自機である掃除機の吸引口を雑魚・敵弾に重ねれば、見事吸引完了となるので安心して下さい。

回数制限等は全く無く、永久に吸引可能ですよこの掃除機容量無限ですよ。

まぁ万能ではないのがゲーム性の一部で、中型機や当然ボスは吸引不可能、ついでに一部の敵弾も吸えません。

この吸引が、『キュイーン』の最大の特徴であり面白さ、そう信じて下さいな。

吸えるモノと吸えないモノがあるのがゲーム性の根本であるのは確実として、稼ぎや攻略にも影響を与えるのですよ。

先に紹介したクリア砲、あのゲージはこの吸引によって溜まります。

普通にショットで倒すより、吸引によって処理した方がスコアが高くなります。

敵弾も吸えばスコアに変換できますし、クリア砲で弾消しても0点ですから、吸引稼ぎとクリア砲のバランスは良く取れていると思います。

自機はダメージを受けると『ツインビー』のように故障、吸引が不可能になります。

しばらく耐えると『ツインビー』のように救急箱アイテムが流れてきますから、それを取ると元通りです。

良く考えればゲームの細部を完全に支配しているのは「吸引」なんですね、『キュイーン』なだけに。


以上、基本仕様を解説してみました。

シンプルな仕様兼操作に「吸引」が光る、それだけ覚えておいて下さい。


〜3〜

何はなくとも「吸引」、『キュイーン』なだけに。

雑魚や敵弾を吸引しまくるのが実に熱い、ここまで極端に簡単お手軽に「強力な近接攻撃」が用意されているSTGは他に存在しないと思われます。

このゲームを未見の方の為に解り易い例を出して雰囲気伝えますと、同じ横シューで『グラディウス』や初期『R−TYPE』に象徴される雑魚編隊。

グラ開幕の雑魚、ダラ名物の雑魚編隊、Rにつきもの大量雑魚、これらと全く同等の雑魚配置がなされている訳です、この『キュイーン』ってのは。

伝統的な横シューの物量作戦をそのまま持ってきて、なおかつその雑魚を単なる座標合わせだけで壊滅させる事が可能である強力な近接攻撃が用意されてあるのですね。

本当に簡単だし、座標合わせだけで雑魚も敵弾も面白いように消え去る、いや割り切った仕様ですよ。

勿論、ステージが進む毎に雑魚も進化して、微妙にラインをズラしてきたり、タイミング遅らせて弾吐いてきたりと、一筋縄ではいかない感を出してきますけど、それも攻略パターン形成によって解決可能な領域です。

そして先述したように、吸引するとスコアが高くなるという稼ぎが存在するので、突き詰めるとショットを使用せず全ての雑魚・敵弾を吸引、クリア砲も封印、そうなっていくのですね。


良く出来てます。

最初は、えらい割り切った仕様でありますなぁと色眼鏡で見てしまいましたけど、実際にプレイすると良く練られた敵パターンに、ショットを使用せざるを得ない状況と雑魚編隊出現タイミングのバランス、あら意外と良く考えられているじゃない、そう感心してしまった次第なのです。

この辺りがですね、ちょっとだけ先述しましたけど、新しい会社さんの挑戦した初期作品っぽい匂いではない、何処か「過去の経験」と「新しい思想」を感じさせてくれる、もっと言えばこの作品作った方の履歴が相当気になる、素人ばりにそう考えてしまうよってな話。

横シューの文法を守りつつ、シンプルなシステムを構築して、大胆な要素も割り込ませる、思い付きじゃできそうに無いんですけどねぇ。


下種の勘繰りはいい加減にしろという状況ですんでもう止めますが、それにしても「こなれて」おりますこのゲーム。

粗が無い訳ではありませんが気にならなくなる、その意味で優秀ですねー、『キュイーン』って地味なだけの存在ではありません。


〜4〜

そんなこんながありまして、『キュイーン』なだけに「吸引」で押せる作品な訳ですが、それはそれ、このタイトルが何故人々の口の端に上らないのか、それもまた明白な理由ですんでしっかり言及して参りましょう。


まぁこのゲームを実際に入手してマニュアル読んで起動すれば誰でも解るでしょうが、徹底して子供向けの味付けになっておるのですね全体的に。

主人公は5、6才の餓鬼ですし、その2人が妖精さんにお願いされて大好きな童話の本の中に飛び込んで、童話さながらのステージ&ボスと掃除機で戦闘する、わぁーだいぼうけんだよ〜、わくわくするぞ!どきどきするぞ!

オープニングデモも完璧にNHK教育のテイストです。

96年という時期を考えても少々サターン寄りかもねと感じる味のある粗さのアニメOPに、「そうじとどくしょがだいすきなひろくんとあいちゃんはとってもなかのいいきょうだい。」で始まるナレーションがかぶる、そして「きゅきゅきゅきゅ〜い〜ん、きゅ〜い〜ん、りょうてをひろげてそらへ〜」と鉄板で繋がる主題歌。

子供向けな訳です、ガツンと1発。

96年のプレステユーザー層、そりゃお子様が皆無な訳では無いでしょうが、ロクヨンやゲボカラー(ボケモソ)がしっかり健在だった時期に丁度かぶっている感じですよね?

本来受け取ってくれるべき対象へしっかりと届いていたのかどうか、そこんとこ疑問です。

とりあえずSTGだから買っとくか、そのような腐ったSTGマニアの手にしか渡らなかったのではないか、そのような疑いが強いです。


それに加え、ゲーム内容それ自体にも、「吸引」の衝撃で打ち消されるとはいえ、ちょっと難点が御座います。

「96年でプレステ」ですから我々は『シュタールフェーダー』等のやりきれなさ感を思い出さねばなりませんが、下手にドット絵とポリゴン表現と光源処理を共存させてしまっている為に、色々と構成物が見辛い塩梅にまとまっているのですよ。

もう慣れるまでは本当にモノが見え難いです、何にやられ判定があって何が爆発しているやら。

凝った部分なのですが、ショットの派手さ、ステージ毎に敵弾グラフィックが変化する、破壊した敵が派手に爆発して飛んでいく等の演出が採用されているのも原因で、画面がゴチャゴチャしている印象が拭えません。

まぁ最初に『Gダライアス』見た時もね、私達は「何だこの見た目のうざったらしさは」と思いましたから、慣れの問題ではあるのですが、それにしてもちょっと極端、最初の掴みから失敗している感じですね。


この辺りが原因で、確かに「吸引」は光るけれども…なる評価を誰しも下すと思うのですが如何でしょうか。

私も初見では余り良い印象持ちませんでした、改めて触って初めて美点に気付いたよってな話。

子供向け風味と見た目の難、そういう印象を最初に持ってしまうとやっぱり余り相手にしたくありません。

ただどうでしょう、何回か我慢して触っていると、徐々にその良さが理解できる、そういうのも楽しい気がするんですけど。

童話がモチーフなだけにステージ構成も凝ってます、ボスもちゃんと元ネタありです、横シューならではの反則攻撃もないです、吸引できる弾と避けるべき弾幕の区別も熱いです、勿論稼ぎだって面白いです。

世界観はともかくとして、構成物が見辛いってのは結構致命的なんですけど、その妙に高い壁越えれば普通に面白い横シューの稼ぎが遊べると、そういう結論に持っていくしかありませんねぇ、今回は。


光る部分は確実にあります、『キュイーン』さん。

惜しむらくは、その光る部分を伝えるべき層へ伝えられなかった、そして光る部分を覆う雲が少々厚かった、そこそこにうまいこと言い終えたじゃないと納得面で今日はお開き。


最後になりましたが、この『キュイーン』において自機の当たり判定は完璧に掃除機にあり、ひろ君とあいちゃんの頭部に何発敵弾食らっても全く支障が無いので、本体は掃除機だと思われます。


(04,3,18)






戻る。
トップへ戻ります。


© 1997 kenji1@charis.dricas.com


このページは GeoCitiesです 無料ホームページをどうぞ


1