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きょうの社説 2010年2月20日
◎国名勝の末浄水場 「庭園都市」に厚み加わる
22日に国名勝に指定される金沢市の末浄水場園地は、水道施設さえも芸術的な名園に
仕立てる意外性や驚きがあり、金沢の「庭園都市」としての個性を際立たせる異色の存在といえる。大名庭園の兼六園をはじめ、各階層の武家庭園、寺社群や茶室の庭など、金沢の庭園群 は数や多彩さにおいて全国に誇りうるものであり、金沢城跡で計画される玉泉院丸庭園が復元されたあかつきには「庭園都市」の顔は一層鮮明になろう。そこに昭和初期の築造で「フランス式」とも言われる末浄水場が加われば、庭園群は時代の幅が広がり、和洋の様式美を兼ね備えることになる。 金沢市は名勝指定に合わせ、専門家による委員会を設置し、保存管理計画の策定に乗り 出した。整備に際しては「庭園都市」の価値に厚みが増すような活用策や魅力発信策がいる。かつて園地を彩ったアーチ状の大噴水を復元する案もぜひ実現させたい。 名勝の答申を受けて実施された昨年11月の特別公開では、3日間で約2700人が訪 れ、園地への関心の高さをうかがわせた。水を供給する水道施設には何より安全管理が求められるが、これまでのように6月の水道週間だけの限定公開ではもったいない。管理業務とのバランスに配慮し、公開の機会をできる限り増やしてほしい。 末浄水場は1930(昭和5)年に開設され、園地は2年後に完成した。左右対称の幾 何学模様の洋風前庭が特徴であり、送水軸と導水軸が交わる位置には「あずまや」と呼ばれる白いコンクリート状の塔がある。これは単なる休憩施設にとどまらず、池の噴水から20メートル近くアーチ状に放たれた水の受け台とされる。 噴水は明治以降、庭園の西洋化に伴い、重要な景観要素になった。水源となる上水道敷 設とともに増えており、勢いよく噴き出す水は、水利の近代化の象徴ともいえる。庭園の価値や水道施設の歴史を伝えるうえでも噴水施設の復元には大きな意味がある。 金沢市での国名勝指定は特別名勝の兼六園、名勝の成巽閣庭園に次ぎ81年ぶりである 。都心から離れた場所にあるとはいえ、金沢の魅力発信へ最大限に活用したい。
◎武器輸出三原則 タブー視せず見直しを
防衛力整備の指針となる新たな「防衛計画の大綱」(防衛大綱)策定に向けた論議で、
武器輸出三原則の見直しが話し合われる方向になったのは、武器の共同開発に参加する道を開き、装備の製造コストを下げるために必要だからである。兵器の性能が飛躍的に向上し、開発費用が高額化するなか、共同開発に加わらなければ、最新鋭の装備を調達しにくい状況が生まれてきている。調達コストを減らすという観点から、三原則をタブー視せず、大幅に緩和する方向で論点整理をしてもよい時期ではないか。たとえば、米英、イタリア、オランダなどが取り組んでいる次世代戦闘機F35の共同 開発に日本が参加する場合、日本の関与を航空自衛隊向けに限定すれば、三原則への抵触を回避することは可能かもしれない。だが、それでは共同開発の恩恵を十分に享受できない。調達コストがほとんど安くならないからである。 武器輸出三原則を見直し、「世界仕様」の量産機を日本が採用できる道が開ければ、製 造コストは大幅に下がり、開発費の回収が容易になるだろう。ステルス機能を持つ最新鋭の戦闘機を、早い時期から安く実戦配備できるメリットは極めて大きい。 武器輸出三原則は、戦後日本の平和を支える「国是」のように絶対視され、議論するこ とすらはばかられる状況が続いている。北沢俊美防衛相の見直し発言を受けて、鳩山由紀夫首相は「三原則は守らないといけない(防衛相は)多少口が軽すぎた」と苦言を呈したが、これほど重要な提案を無造作に否定したのは残念というほかない。防衛大綱の策定にむけた懇談会では、国益を考えて、前向きに話し合うべきである。 武器輸出三原則は、1967年に佐藤内閣が(1)共産圏諸国(2)国連決議で禁止し た国(3)紛争当事国への武器輸出を認めないと表明し、76年に三木内閣がその他の国にも拡大適用し、事実上の全面輸出禁止となった。いわば冷戦時代の遺物であり、時代の変化に対応して三原則の意義を問い直してもよいのではないか。
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