社説

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

社説:学校週5日制 修正論は小手先でなく

 新しい学習指導要領で増加する授業時間をこなすことなどを理由に、土曜の授業を復活させる動きが広がっている。東京都教育委員会は小中学校に月2回を上限とし、保護者らへの公開などを条件に正規の土曜授業を容認した。また毎日新聞がNTTレゾナントの協力で行ったインターネット調査でも、約9割が土曜授業の実施に賛成している。

 新指導要領には小学校が11年度、中学校が12年度に移行するが、小学校高学年の英語活動など、多くの学校で一部前倒し実施している。新指導要領は「学力低下」論を背景に授業時間が増えた。長期休暇や行事を縮減することによって時間を確保するなど、各校の工夫が必要になる。こうした状況で、土曜日を補習名目の授業や行事などに充てる学校は既に多い。

 学校週5日制は1992年度に月1回で発足し段階的に増やして02年度から完全5日制に移行した。これに伴い、いわゆる「ゆとり」の現行指導要領が実施された。

 今回の都教委の“お墨付き”が象徴するように、完全5日制は変質を余儀なくされたとみるべきだろう。では何がうまくいかなかったのか。小手先の修正ではなく、検証をして教訓を得ることが必要だ。

 学校週5日制は、労働時間短縮の流れと、知識詰め込み教育を改める新しい学力観などを背景に進められた。「学校のスリム化」をし、土日は子供を地域と家庭に委ね、スポーツや体験学習などの機会を社会が担うことを想定した。「学校、家庭、地域社会の教育全体を見直す」ことで、急変する情報化社会、国際化に主体的、創造的に「生きる力」の育成をするはずだった。

 だが地域にもよるが、現実と理念に開きがある。学力低下懸念から土日を塾に通わせたり、5日制を実施していない私立に入学させる。すると経済的格差から不平等が生じかねない--。こんな心配や不信から土曜授業を求める声は絶えなかった。

 都教委は、土曜日に無目的に過ごしている子供たちの存在▽補習などで多くの教員が土曜出勤している実態▽新指導要領で授業のさらなる過密化解消の必要、などを踏まえて今回の判断をしたという。

 だが、本来こうした対応はなし崩し的に行われるものではない。新指導要領をきちんと実施するためには、国レベルで5日制見直しもセットで論じられるべきだ。また5日制開始以降の「ゆとり」教育理念をどう変えるのかもきちんと提示されなければならない。現政権からそれがなかなか聞こえてこない。

 ビジョンなきままの実態追認は混乱を招くばかりだ。

毎日新聞 2010年2月19日 東京朝刊

社説 アーカイブ一覧

sn

PR情報

 

おすすめ情報

注目ブランド