国際NGO「国境なき医師団」が年に一度発表している「10の最も深刻な人道的危機」。今回は、依然、無政府状態が続くソマリアや、内戦終結後、混乱したスリランカなどが選ばれました。
2009年の「10の最も深刻な人道的危機」は、「政府による人道援助活動の妨害」「紛争下の住民や人道援助従事者に対する襲撃」「国際社会から顧みられない病気の放置」と3つに分類されます。
「政府による人道援助活動の妨害」があったのは、スーダンやスリランカ。スーダンでは去年3月、紛争が続く西部・ダルフール地方で支援を行っていた人道援助団体に対し、政府が国外撤退命令を出したことで、一般市民は医療援助さえも受けられない状況に陥りました。
「武装した男たちが現れ、私の子どもたちを森に連れ去っていったのです」(コンゴ難民)
「紛争下の住民や人道援助従事者に対する襲撃」では、コンゴ民主共和国やソマリアなどが選ばれました。コンゴ民主共和国では、去年10月、国境なき医師団が保健省の支援を受け、予防接種を行っていたところ、政府軍が突然発砲。医師らスタッフは一時退避を余儀なくされました。
1998年から続く紛争には、政府軍と反政府武装勢力だけでなく、周辺国も加わっており、これまでに推計540万人が死亡したとされ、状況が改善する兆しはありません。
「過去数か月で、攻撃や武力衝突、誘拐やレイプの被害者が出ています」(コンゴで支援を行うMSFスタッフ)
こうした国々では人命が常に危機にさらされていますが、国際的な関心が集まらないのが現状です。国境なき医師団は、10の人道的危機を発表することで、危機が続いていることを訴えたいとしています。(19日01:12)