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世迷言

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☆★☆★2010年02月19日付

 テレビの長寿番組「水戸黄門」が、依然人気だ。現在は亡き西村晃が主演しているが、これが何度目の再放送なのかはともかく、まったく光を失わないのは国民的ドラマ≠スるゆえん▼テレビの連続番組となった最初の、いわば初代黄門様は月形龍之介で、最高のはまり役だったといまだ評価する年配者は多い。天下の副将軍ともなれば威厳を兼ね備えていなければならず、その点、唇をへの字に結んだ月形の厳しい表情は、なるほど天下の悪を一刀両断する役柄にぴったりだった▼その登場が46年前。ついで41年前に東野英治郎にバトンタッチ、以後西村晃、佐野浅夫、石坂浩二、里見浩太朗と主役が交代してきた。それぞれ持ち味があってそれなりのフアンを生んできたが、個人的には東野英治郎がお気に入りだ。厳しさは持ち合わせているがどこか抜けていて、しかも旅の隠居というか「田舎じじい」的飄逸としたところがいい。佐野浅夫も枯淡の味をだしていたが、在位≠ェ短かすぎた▼このドラマの魅力はとことん勧善 懲 悪、天網恢々疎にして漏らさずというところにある。現実の世界は時に木の葉が沈んでドンブリ鉢が浮くような非条理なところがあるが、黄門様は一切悪を見逃さない。「もういいでしょう」と促すと「静まれ、静まれ」のワンパターン▼これがたまらず、確かにスッキリする。死んだ役者が生まれ変わって何度も世直ししているところがまたいい。「水戸黄門は不滅です」なのだ。

☆★☆★2010年02月18日付

 こんな不景気でも儲かっている企業はあるはず。あまり目立たないが、しかし確実に仕事を増やしているそんな企業の代表格はアンテナ製造業だろうか▼アンテナにも色々あるが、現代で最もウケに入っているのが携帯電話用のあの高い鉄塔のはず。どういうメーカーがあるのか知らないが、携帯電話各社それぞれが独自の規格を持っているから、アンテナの形状もさまざまで、それが全国に次々とまさに雨後のタケノコのように林立しつつあるのだから、その数は相当数になるだろう▼いずれにしてもこの商売は時代と共に新製品を生み出している。電波というものがある限り、通信手段として新機軸が生まれ、それに対応するアンテナの登場が求められるのだから、次はどんな通信方法が考えられるのか予測し、アンテナの研究もしておけば大変なビジネスチャンスが生まれるだろう▼ラジオ、テレビ、アマチュア無線、業務用無線、そして携帯電話等々アンテナの種類、用途は広く、しかもつぎつぎと新しい需要を掘り起こしてきた。テレビのアンテナ一つとってもVHF、UHF、BS、CSと帯域の異なる電波が使われるとアンテナも同じとはいかなくなる。受信用もそうなら送信用も同じで、これは地味だがうまみのある市場と思う▼東京タワーに代わる首都の電波塔「スカイツリー」が300bの高さに達したという。高さ634bが完成すると新たな名物となるだろう。いずれ商機をつかむには、常に「アンテナ」を張っておく必要がある。これは鉄則だ。

☆★☆★2010年02月17日付

 これまで日本の自慢は「ものづくり」だったが、うかうかとしてはおられなくなってきたのが近年だ。中国、韓国、インドなどがどんどん力をつけて猛追してきている。いやすでに一部では追い抜かれ立場が逆転した▼企業におけるインセンティブ(刺激)とは、社員にやる気を起こさせるためのアメのようなものだが、社会全体がある種の変化を見せるとそれ自体がインセンティブとなる。その際たるものが中国、インドなど国民の間に高まるモチベーション(動機)だろう。かってのアメリカンドリームがそうだったように、いまチャイナドリーム、インディアンドリームが国を活性化している▼電気自動車の研究開発がいま最も進んでいるのが欧米でも日本でもなく、中国だといったら信じられないかもしれないが、同国内にはそのメーカーが大小問わずもう数十を数え一回の充電で何百・を走れる車も登場している。実用車を最初に世に問うのは中国となるのではないか。その起爆剤となるのがインセンティブ、つまり大儲けができそうだという動機だ▼インドのタタ自動車が、二十万円という車を開発できたのも、インド国民がみな自動車に乗るようになったらどうなるかという、その可能性がエンジンとなったものだろう。インドで車を自力開発などできるわけがないとタカをくくっていたら、後頭部をガツンと殴られた▼いま躍進著しいのが韓国のサムスン電子で、その世界戦略において日本はすでに後塵を拝している。それはなぜか?国自体がインセンティブを失ったその結果だろう。ジャパニーズドリーム?そんなものがどこにある?

☆★☆★2010年02月16日付

 国語の辞典といえば「広辞苑」にとどめを刺すと決まっていた。実際家と職場に各一冊、父親が使っていた二冊、それに骨董化したものなどもある。すっかり馴染んだ水色の表紙。これが日本文化を支えてきた▼しかしこの神話的存在も近年は影が薄くなりつつある。それは文字だけでなく絵や写真がふんだんに採り入れられて「ビジュアル(視覚)化」した辞典が出版されるようになって、独擅場を脅かしているからである。気が付いたら小欄もこの流行に毒されていて、ここしばらく広辞苑を引いていないことに気付いた▼広辞苑の脇には三省堂の「大辞林」が並んでいるが、こちらも取り出すことはほとんどなく、現在はもっぱら講談社の「カラー版」日本語大辞典である。本棚から引っ張り出すのが面倒なため、窓際の棚の上に置いて素早く引けるようにしている。引いて楽しいのはやはり図版に色が付いている方だ▼しかし内容的にはどうか。そんな厄介な用語を探すことがあまりないので比較検討したこともないが、ページ数を見ると広辞苑が二千六百ページ台なのに対し、後発は二千三百台だ。しかし広辞苑は版型が一回り小さいので項目数を一概に比較は出来ない▼だが、内容を改めて比較してみると、後発組は広辞苑の後をなぞっていることが明らかだ。表現をさりげなく変えても参考にした「原典」が何かは容易に判断できる。やはり「広辞」ありて「後事」ありなのだ。その昔広辞苑を質に入れて、飢えをしのいだことがあった。質草になる国語辞典など今後もあるかどうか。

☆★☆★2010年02月14日付

 長崎県佐世保市にあるリゾート施設「ハウステンボス」の再建に、旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)が乗り出すことになった。ただし三年以内に黒字化しなければ撤退するという条件付きで▼鳴り物入りでこの大型施設が登場した頃を振り返ってみると、まさにバブルの絶頂期だった。各地にテーマパークなるものが次々と登場、旅行熱をいやでもあおった。中でもハウステンボスは、四十六万坪という広大な敷地に二千数百億円という巨費を投じてオランダの街並みを再現した壮大なプロジェクトだけに、話題でもちきりだった▼ハリボテではなく、すべてが実体のある施設だから、わざわざ本国へ足を運ばなくても現地の仮想体験ができるというわけで、最盛期は年間に三百八十万人も訪れた。こんな夢のような計画を実現できる人の行動力と運とが羨ましかったが、それも当時の経済的背景があったればこそだろう▼社内旅行で念願がかない訪れた時はその贅沢さに圧倒された。そして異国情緒を楽しんだが、しかし再訪したい気分にはなれなかった。それはやはり疑似体験だからである。同じ疑似でもディズニーランドはエンターテインメント(娯楽)が売り物で、飽きられたら更新が可能だ。景観だけのロマンが行き詰まるのはその違いだろう▼全国のテーマパークがことごとく失敗したのは同じ理由で、夕張市もそのはやりに乗った。それもこれも可能性のあった時代だったからだが、そんな夢も見られず、うだつもあがらぬ現在からただ冷ややかに再建劇を眺めているというのもある意味では情けない。

☆★☆★2010年02月13日付

 「釈然としない」というのが国民の大方であろう。「あの」石川議員が十一日離党届を提出、受理されたという件についてだ。野党自民党は「トカゲの尻尾切り」と表したが、これ以上の的を射た表現を知らない▼同議員は九日、北海道帯広市で、離党も議員辞職もせず今後も職責を果たしたいと記者会見で述べた。それは自分自身にやましいところはない、という自信の表れが言わせたものだろう。だが、それが一転して離党届となったのはなぜか?心境の変化でないことだけは確かだ▼昨日の岩手日報がその辺の事情を伝えている。記者会見の模様を知った政府筋が「これはまずい」と首相に伝え、その夜首相は「地元に戻ればああいう思いになるのではないか。人情としては分かる」と不快感≠示した―と記事にある。その後の動きも記事は伝えているが、読まなくても「○○筋」の対応は手に取るように分かる▼石川議員が起訴されたのは政治資金規正法違反の疑いだが、これは自利によって起きたものではない。あくまで小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の、土地購入をめぐる収支報告書虚偽記載事件に「連座」したものと世間は受けとめている。実際、秘書が独断で扱えるような中身ではなく、だからこそ小沢幹事長の責任が問われているのである▼その小沢氏は「本人の決断だ。素直に受理した」と他人事のように受け流したようだ。政治とは非情で冷酷なものであることを石川議員は改めて噛みしめているだろう。

☆★☆★2010年02月12日付

 新型プリウスのリコールという苦渋の選択を余儀なくされたトヨタだが、それにしてもこの大企業にしてなぜ対応が後手後手に回ったのだろうか?▼昨年秋米国で、トヨタ車のアクセルペダルがフロアマットに引っかかって死亡事故が発生した。その原因はペダルが長すぎたという初歩的問題であったことから、トヨタのフェイルセーフ(多重安全対策)にゆるみが生じていることを小欄は感じた。マットは純正部品だけが使われるわけではない。サードパーティー(第三者)製がいかに多いかは周知のことである▼そこまでの配慮が米国では欠けていたということだろう。事実、創業家出身の豊田章男社長が就任後口にしたことは「トヨタは大きくなりすぎてお客さまからずいぶん遠いところにきてしまった」だった。グローバル企業となりさらにトップランナーに上り詰めると、今度はその維持のために「数の論理」に走る。その弊害をリーマンショック以後痛感した同氏ならではの発言だ▼二兆円の純益企業が一転して赤字転落という落差に衝撃を受けた同社がV字回復を目指して取った次なる展開は目をみはるものがあった。新型プリウスの投入はさすがを思わせ、事実業績回復の快進撃に拍車をかけた。だが、同車のブレーキの利きに不安を感じたユーザーもいた▼「ほんの一瞬のこと。問題はない」当初トヨタは取り合わなかった。だが一転した。初心を忘れると隠蔽体質が生まれる。そのツケが回ることの恐ろしさ。まさに得意の「カイゼン」がこの面に必要なことをトヨタ自身が感じているだろう。

☆★☆★2010年02月11日付

 希林家と鳥井家の縁組みが破談となってがっかりしているのは両家だけでない。ご近所の全員が「あんな良縁がなんで」とわが事のように口惜しがっているのは、振る舞い酒にありつけないからだけではなかろう▼国内食品最大手のキリンホールディングスと同二位のサントリーホールディングスが交渉していた経営統合が「泡」のように消えたのは、共にビール製造にかかわる因果と無縁にしてももう少し「発酵」を待つべきだった。もし両社の統合がなれば年間売り上げ三・八兆円という世界最大級の酒類・飲料会社が誕生することになり、世界市場に隠然たる存在となるからだ▼この計画が公表された時は、大袈裟に言うとまさにグローバル化という地球規模の一大変化を肌で感じさせられた。キリンと言えば一時アサヒに苦杯をなめさせられたものの、一貫してビール業界のトップにあるガリバー企業。一方のサントリーもまた押しも押されぬウイスキー醸造業界の覇者であり、共に一社だけでどんな荒波も乗り越えていける実力の持ち主だ▼それが統合するということは、来るべき国際競争時代を勝ち抜き、日本経済の安定にも少なからず寄与することにつながる。これをもって、寡占云々という声が出るにしても、こちらから海外へ打って出なければ逆に「黒船到来」を許すことになりかねないのが今日▼婚約破棄の理由は統合比率という一点としても、つまるところプライドの問題に収斂する。「蜀」ならぬ「食」の合従連衡が「両雄並び立たず」となって破綻したのは三国志でも見るかのようだ。

☆★☆★2010年02月10日付

 「将来に備えて」だと?。「将来が不安だから」だと?。なにをバカな!。金を使わず預金に回して景気がよくなるわけがない。どんどん使って景気をよくすれば、将来も安心というものじゃないか。あ〜ん?▼そんなセリフを吐いてみたくなった。というのも日本の将来を託せる有力政治家たちが一般庶民ほどの蓄えも持たず、それは率先垂範して金を使い景気浮揚に貢献している証拠であるという事実をはしなくも目撃したからに他ならない。あの小沢さんが預金ゼロ、みんなの党の渡辺喜美さんも同様だというのだから▼毎年恒例の衆院議員公開資産が発表になって、やむなく議員さんたちのフトコロ状態を垣間見ることになった。歳費その他で大体一人年間三千五百万円弱が支払われるのだから、相当の蓄えもできるのではないかと思うのはゲスの勘ぐり。大物でも案外ピーピーしていることが判明した▼たとえば菅さんだが、不動産五百万円と預金四百万円弱、それに車三台。前原さんは七百万円のマンションと車一台のみ。原口さんは四百八十万円の預金と五百万円余の住宅だけ。それでもまだあるだけまし。意外や意外。資産ゼロの議員が七十人もいるのだ▼預金ゼロというのは常識的に考えられないが、タンス預金は例外だからだろう。しかし光熱費、通信費、受信料など銀行口座なしにどう引き落とされるのだろうかと頭をひねる。議員さんだからといってまさか一切タダにされるわけではあるまい。それにしても政治はカネがかかるのだなと妙なところで納得≠オた。

☆★☆★2010年02月09日付

 こんなものがほしいな、あればいいなと思うことが日常よくある。しかし自作できる頭も腕も持ち合わせていない。だが、自分ができなくてもできる人の知恵を借りればいいのである。そんなチャンスが実はある▼「一関高専テクノ・コンサルタントin気仙」という催しがそれで、同高専の先生方がそれぞれの専門分野における個別相談に乗りましょうという企画。つまり自分の不得手な領域に専門家が分け入ってくれるという奇特な講座だ。対象は企業だがむろん起業家たらんとする人々も受け入れる▼相談に応じるのは、環境エネルギー、バイオ地域資源、医療福祉機器、情報技術、技術教育の五分野で、当然のことながら、今後本格的に技術開発や商品化などに取り組んでいきたいという企業との共同研究なども視野に入れている。いわば産学共同で新しい可能性を拓いていこうというのが狙いだ▼同高専には「地域共同テクノセンター」という地域との「共生」を目指す部門があり、そこのセンター長である佐藤清忠教授には以前から色々と相談に乗っていただいているが、誠実ながらまた実に気さくなお人柄で、学者というと敬遠したくなる劣等人間にも気安く接してくれるから、こちらも図に乗る▼で、世の中には当方のように思いはあるが知恵がない人間がいることを見抜いて、こんなチャンスを向こうからこしらえてくれたという次第。詳細は後日告知されるが、三月十二日(金)開催だけはお忘れなく。


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