民主党の小沢一郎幹事長が推し進める「永住外国人への地方参政権付与法案」の行方に暗雲が立ち込め始めた。小沢氏は今通常国会で強行成立させる構えを見せているが、先の政治資金規正法違反事件の影響で求心力が低下。これまでのような強引な党内運営ができなくなりそうなためだ。夏の参院選や来年春の統一地方選を見据え、剛腕幹事長は問題法案をどう扱うのか。
「ひとまず安堵した」
韓国与党ハンナラ党関係者は、小沢氏が政治資金規正法違反事件で不起訴処分になった直後、こう語ったという。この発言は、参政権付与を働きかけてきた在日韓国人や韓国政府の心情を吐露したものだが、現状はそう簡単ではない。
参政権付与は、(1)憲法の第15条(公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である)に違反する可能性(2)内政干渉を許す恐れ(3)外国人参政権がない国が多数−といった問題点が指摘されている。
国際政治学者の藤井厳喜氏は「オランダでは、外国人を大量に受け入れて参政権を与えた結果、社会に亀裂が生まれ、治安が悪化したと聞く。反対の論陣を張った映画監督が外国人に殺される悲劇もあった。日本の場合、領土問題がある外国の人々に参政権を与えることになり、国益の観点から考えてあり得ない」と語る。
さらに、小沢氏周辺や社民党、公明党は賛成しているが、自民党やみんなの党は「参政権を行使したいなら日本人になって(=帰化して)ほしい」(渡辺喜美代表)などと反対。
与党内でも、国民新党の亀井静香代表が「与党3党間で合意しない限り閣議に提出できない」と反対する考えを重ねて表明していいるほか、民主党内にも「猛反対する議員が20人から30人はいる」(党関係者)という。
内閣支持率が急落する中、与党内に亀裂を生み、国民感情に火をつけかねない法案だけに、鳩山由紀夫首相も「内閣の内部でまだ考え方が1つにまとまっていない。あまり強引に行ってもいけない」などと、今国会の法案提出に慎重な姿勢を見せ始めている。
小沢氏は問題法案をどうするのか。
政治評論家の小林吉弥氏は「小沢氏は法案を、(1)在日韓国人の選挙協力(2)公明党を自民党から離反させる−という選挙対策で進めていた面がある。事件は不起訴となったが、国民の小沢批判はまだ収まらない。首相も距離を置き始めている。とても与党内の反対を無視して成立させる力はない」とみている。
【外国人参政権の問題点】
(1)憲法の第15条や第93条に違反する可能性
(2)合法的な内政干渉を許す恐れ
(3)世界では、外国人参政権がない国が圧倒的多数
(4)永住外国人の帰化を妨げる