【記者手帳】同胞を信じすぎた罪

 先月18日に中米グアテマラで拉致され遺体で発見された韓国人男性(56)を殺害した疑いの容疑者には韓国人2人が含まれていることが分かった。容疑者らは韓国人を相手に違法カジノを経営していた。信じられない結末に記者は失敗を告白しなければならない。

 記者は今月4日から8日までグアテマラを現地取材し、昨年から今年1月までに現地在住韓国人が殺害された8件の事件について、『拉致殺害が横行するグアテマラを行く』(本紙8日付)と題した記事を書いた。

 取材当初から「韓国人が関与している可能性が高い」「違法カジノが犯罪の温床」という話を現地在住韓国人かた聞いた。しかし、記者はそれを故意に無視した。いや、信じたくなかった。

 「まさか地球の反対側まで来て、韓国人がそんなことをするだろうか」という純真な考えに加え、これまで捕まった殺人犯は全て現地人だったという事実が大きかった。また、犯行の残酷さが韓国人の仕業とは信じられないものだった。違法カジノ開設はグアテマラでは軽犯罪として処罰されるだけなので、社会全体に賭博が広がっていた。

 しかし、今回の事件では韓国人の介入を十分に疑うことができた。容疑者らは身代金として150万ドル(約1億3500万円)を要求したが、これはグアテマラの誘拐犯が要求する身代金の平均額の数十倍に達する額だった。グアテマラ警察に昨年届け出があった拉致事件160件のうち、殺害された人は3人だった。今回の事件では、被害者の男性が犯人の顔を知っていたために殺害された可能性が高い。

 現地韓国人社会では既に韓国人同士が互いに信用できない雰囲気が広がっている。銀行に資金を引き出しに行く日や出張計画を周囲に話す人はほとんどいない。現地である韓国人が「拉致でもしてみようか」と真面目に話していたとの情報も聞いたが、記者は現地に派遣された警察出身の領事にそっと耳打ちしただけだった。

 記者は「可能性がある」と考えながらも、指摘すべき疑惑を「韓国人」だという理由で指摘しなかった。グアテマラを発つ直前に警察出身の領事と会った際にも「まさかうわさのように韓国人が関与してはいないでしょう」と尋ねた。軽はずみに同胞をかばったことで、ただでさえ治安の悪さに苦しむグアテマラの市民に対する誤解を生んでしまったようだ。申し訳ない。

趙義俊(チョ・ウィジュン)特派員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
関連記事 記事リスト

このページのトップに戻る