日々のブログで、“ドル・円が下っても当局による円売り介入は出ない。”と断言したら、その根拠を示せとのご要望があった。
介入を決定する権限は財務大臣が持っているので、塾長ごときが根拠を示すことは出来ないが、どうして介入が出ないと思っているかの自論の説明は出来る。
先ず、どうして介入が出る必要があるのか?
現在のドル・円相場は89円近辺で静かに推移しているが、果たしてこれは円売り介入をしなければならないほどの円高か?
実はそんなことはない。
消費者物価の上昇を織り込んだ購買力平価の観点から言うと、ドル・円の90円前後はちっとも円高ではなく、10年前の110~120円の感覚ではなかろうか?
昨年から比べると円高になっている様な気がするが、その他通貨に対してはちっとも円高ではない。 むしろ円安であろうか。
対ドルにだけ円売り介入をする必然性が理解出来ない。
ちょっとお尋ねしたいが、皆さん、2年前にドル・円が100円を切れると思われていただろうか?
日本人は、お上(財務省)が多額の円売り介入を行って、100円割れを阻止するだろうと思い、願い、そして望んでいたが、何と今は80円台。
しかも、今では随分目が慣れてしまって、余り違和感を感じない。
違和感を感じないということは、多くの人が今の円相場に対して格段“問題あり!”とは感じていないとも言える。
皆さんご記憶であろうが、あの財務大臣が成り立ての頃、“介入はしない。”と発言して、まあ言わば今回の円高のきっかけとなったが、不注意な発言であったことは否めないが、本音がポロリと出てしまったのであろう。
ドル・円で介入する場合は、日米の財務当局の合意が必要であるが、日本は兎も角、アメリカの財務省が円売り介入を認めるだろうか?
アメリカは、“国際的な不均衡の是正”の観点から、人民元のより柔軟な動き(要するに切り上げ)を求めており、これはG8でも討議された。
片や中国に切り上げを求めながら、減りつつあるとはいえ、大きな貿易黒字を抱える我が国の通貨の上昇を意図的に止める仕業を、アメリカが容認するとは思えない。
2003年~2004年に35兆円にも上る円売り介入が行われたが、あの頃の日米関係は、小泉―ブッシュの仲良しコンビで最良であった。
日本が、“この円高(100円が割れそうであった。)が、折角回復しだした景気と株価に水を差す。 円売り介入をさせて頂戴な。”との泣きを入れたら、アメリカは“介入には反対だが、そんなに言うのならどうぞおやんなさい。但し、単独で自分の銭を使うことが条件ですよ。”と言って、OKした。
で、今の日米関係は???????
介入のかの字でも出したら、大笑いでもされようか?
ここでも何度が言ってきたが、アメリカは“強いドルがアメリカの国益に適う。”と公には言うが、そりゃそうだろう。
でないと、アメリカの債券を買っている人達がそれをぶん投げて、ドルは大暴落する。
本音は今年の3月のようなドル・暴落ではない限り、じわじわドルが下ることに対しては、何の痛痒も感じないどころか、大歓迎であろう。
それと、兎に角円が安くならないと、
外需は減少する。=企業利益が減少する。=株価の低迷。そしてデフレの進行。
と騒いで、“円下落の必然性”を唱える人達がいるが、相場は市場が決めるもの。
“何々であるべきだ。”とか、“でないと、何々だ。”と騒いでも、余り意味は無い。
買う人が多ければ相場は上がり、売る人が多ければ相場は下る。
極めて単純なメカニズムである。
繰り返しになるが、あれほど信じていた“100円は割らせまい。”との介入頼みが反故になった。
90円割れ、80円割れにそう大きな意味があるとも思えない。
もし、介入の話が出てくるとしたら、
―米ドルが急落する。
―日米関係が劇的に改善する。
―我が国のデフレ進行が急速に起きる。
であるが、その可能性は少なかろう。
これもよく言うことだが、我が国は原材料、エネルギーの殆ど、そして食料の60%以上を輸入している“輸入大国”である。
円高の悪い面だけが騒がれるが、円高のメリットも忘れてはなるまい。
久し振りにゴルフをして、筋肉痛の塾長。
コメント一覧コメント10件
力作です。
*もし、介入の話が出てくるとしたら、
―米ドルが急落する。
―日米関係が劇的に改善する。
―我が国のデフレ進行が急速に起きる。
であるが、その可能性は少なかろう。*
あるとしたら、米ドルが急落する。ぐらいでしょうか?これも、早々ないでしょう。
*“何々であるべきだ。”とか、“でないと、何々だ。”と騒いでも、余り意味は無い*
流行らないかもしれませんね。たぶん“何々であってほしい”が変化したものと考えればよいのではないでしょうか?何が起きても身軽に対応できるのが一番。塾長から学んだことです。昔はshould doが好きだったんですけど…
投稿者:smile|2009年11月24日 12:11
介入はしないのは塾長のいわれる通りなのかなと思います。しかし円高のため、日本の主要な産業である製造業は、海外での生産量を増やしています。
トヨタは中国向けの開発は中国で行うようです。
日本の雇用がどんどん海外へ流出しております。
企業は日本の新卒学生を雇わないで、海外で外国の方を雇っているように見えます。政府、民間の中で新たな産業が創出されなければ、将来日本の国力の低下につながる容認にならなければよいのですが・・・そのへんがあるかもしれないと思うと、円高が怖いです。
投稿者:($ $)(¥ ¥)|2009年11月24日 13:35
為替にしても特にリーマンショック後は中国を無視できないですよね。
例えば来年大きく動くとしたら米中(人民元/米ドル)関係でしょうか。この影響をもろに受ければ日本は何かするのではないでしょうか。米中に円が振り回されて日本が何も出来ないでは流石に面子が立ちません。
投稿者:GS-h|2009年11月24日 14:25
酒匂塾長様 いつもありがとうございます。政府のデフレ宣言、円高同様またマスコミが騒いでいますが、私は目先の事だけを考えた介入には反対です。そう遠くない将来を予想するに、デフレはそんなに悪者でしょうか?デフレ、それはまだ通貨が強く、通貨に信頼があり価値がある円高のこと。日本は10、15年耐え忍ぶことができました。。本当に恐ろしいのは高インフレ・スパイラルでしょう。TBの無秩序増発による、ジャブジャブに溢れるドル紙幣、ドル価値の暴落、この通貨インフレが高インフレを惹起させるのは時間の問題です。いずれ他通貨ユーロ、円にも波及するのでしょうが、エネルギー資源や穀物等、輸入に大きく依存する日本にとって、逆に少しくらい円高、低金利、低CPIの貯金があった方がいいのではないでしょうか?それにアメリカも日本のデフレを心配してくれるほど余裕があるのか疑問です。塾長、筋肉痛の予防法があります。本番の1週間程前に、6~7割のレベルで同じ動作(打ちっぱなしや素振り)を軽く済ませて、事前に軽い筋肉痛を起こしておくとよいそうです。お大事にして下さい。
投稿者:小樽市銭函|2009年11月24日 15:24
*“ドル・円が下っても当局による円売り介入は出ない。”と断言したら、その根拠を示せとのご要望があった。
介入を決定する権限は財務大臣が持っているので、塾長ごときが根拠を示すことは出来ないが・・・*
ありがとうございます。
塾長の断言の意味が解りました。
投稿者:L|2009年11月24日 16:12
($ $)(¥ ¥)さん、
円は歴史的に、ずっと強くなっていますよね。
200円が割れた時には、輸出産業が“もうこれではもたない!”と悲鳴を上げました。
為替相場動向で、会社の存亡とか、我が国の国力が云々と言う時代は終わったと思うのですが。
GS-hさん、
人民元がドルにペッグしている限り、米中(人民元/米ドル)関係には余り大きな動意は無いのかなと思うのですが。
先日も申し上げましたが、米議会が中国に圧力を掛け始めたら、要注意でしょうね。
日本は、何も出来ないんじゃあないですか?
余り政治のことは話したくはありませんが、連日見聞きする色々なことは、ちっとも愉快なことが有りません。
最近流行の“仕分け”だか何だか知りませんが、鬼の首でも取った積りなんですかね?
勿論、今までの間違ったやり方とか、不必要な経費とか、おかしなことを正すことには大賛成ですが、先ずは“経費節減が第一”とかで、将来のことを考えないパフォーマンスは困りものです。
そして、Deputy ナントカが、“いや、それは再考すべきだ。”などとちゃちを入れる。
では、どうしたらいいのだ?と聞かれると返答も出来ないのですが、まあ兎に角“愉快”ではないですね。
小樽市銭函さん、
お考えには同調致します。
* それにアメリカも日本のデフレを心配してくれるほど余裕があるのか疑問です。*
全く、無いでしょうね。
筋肉痛の件、有り難う御座います。
今週から週末に掛けて3度プレーする予定があるので、仰せの通りにやってみます。
Lさん、
断言は、ちょっとToo much.だったかも知れませんね。
それ程今の時点では介入の可能性は少ないと思います。
投稿者:塾長|2009年11月24日 16:51
お久しぶりです。先日はありがとうございました。
コメント大変勉強になります。もうすぐ12月と言うことでますます寒くなるばかりですが、心には火を灯して精進に励みたいと思います。
投稿者:AK@修道94|2009年11月24日 22:01
AK@修道94さん、
先日は、楽しい集いでした。
大変珍しい物を頂き、恐縮しております。
(ちょっと勿体無くて、まだ手を付けておりません。)
また、お会いしましょう。
数日前、修道の仲間と甲斐路に行って参りました。
我々が集まると、健康の話やら年金の話が主な話題で、寂しい限りです。
投稿者:塾長|2009年11月25日 17:23
円高は私にとってはデメリットが多くなってきましたね。
少しくらいであれば旅行に行ったときに還元されていいのですが、会社が輸出メインでほとんどが対米です。110-120円付近でやっと黒字でしたからもう今は大変です。
投稿者:真逆|2009年11月25日 22:36
いつも参考にさせていただいてます
私も11月27日の自分のブログに介入はないのではないかと載せました でもさすが塾長ですね 読みが深い というか それに加えいろいろなことを周知されている 自分のブログに載せた内容がお恥ずかしい
FXで利益あげることばかり考えずに 少し余裕をもって経済のこと 政治のこと あるいはテクニカル分析の理解などを学んでいこうと思います
今後ともよろしくお願いします
投稿者:八木城|2009年12月 2日 13:20
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