ぼくはスポーツ新聞が大好きなんで今日もスポーツ新聞各紙を読んでたんですけど、何かと話題になっているスノーボードの国母選手に対する記事で、同じ場面、同じ状況下での国母選手について、各紙その書き方が違っていておもしろかった。そこで今日は、一つの事象をそれぞれの新聞(記者)が「どのように語るのか・どのように描写するのか」っていう観点から「サンケイスポーツ」「日刊スポーツ」「スポーツニッポン」の三紙を比較し並べてみます。文章において、完全に客観的な描写っていうのは原理的にありえない。だから一人のオリンピック選手が競技をはじめてから取材を終えるまでを描くだけで、それぞれの新聞の立場、考えの違いがよく見えてくる。なお、このようなニュース記事ってわりとすぐに消えてしまうから、ぼくは個人的資料用として、ウェブ魚拓をとって保存しています。スポーツ新聞三紙は国母をどのように語ったのか。さっそく比較してみます。
また悪態!国母、メダル及ばず8位(サンスポ)
http://www.sanspo.com/vancouver2010/news/100219/oaf1002190507007-n1.htm
国母パパ「次の五輪出る資格なし」 (サンスポ)
http://www.sanspo.com/vancouver2010/news/100219/oaf1002190505004-n1.htm
国母メダル逃げた 着地乱れ8位(日刊)
http://vancouver2010.nikkansports.com/snowboard/news/p-sp-tp0-20100219-597623.html
“腰パン”国母「悔いなし」8位“スタイル”貫いた(スポニチ)
(↑サンスポ)
(↑日刊)
(↑スポニチ)
決勝の1回目で転倒し、口から血を流して天を仰ぐ国母。メダルには遠く及ばず、8位に終わった(サンスポ)
大技ダブルコークの着地に失敗して転倒した国母は、顔面を強打(サンスポ)
ダブルコークに失敗し、悔しそうに天を仰ぐ国母(日刊)
決勝2本目も不調に終わりゴーグルを投げる国母 (スポニチ)
口元がゆがむ。感情は制御不能に陥った。決勝の2回目を終えると、まずヘルメットを夜空に投げ上げた。さらに、ゴーグルも投げ捨てる。これが性懲りもない『国母劇場』の号砲だった。(サンスポ)
国母は、国母らしく大会を締めくくった。ヘルメットを取り、ゴーグルを観客席に放り投げた。(日刊)
得点が表示される前にヘルメットを宙高く放り投げ、ゴーグルをスタンドへ投げ込んだ。(スポニチ)
いったん取材エリアの外に出て、再び広報に促されてやっと取材に応じた。質問には答えたが、ペットボトルを手に横を向き、口に含んだ水を上へ吐きながらの応対。(サンスポ)
取材エリアでは、ペットボトルで水を口に含み、ペッペッと吐き出しながらしゃべった。決勝の1回目で口を擦りむき、血をにじませながら言った。(日刊)
取材に応じながら、切れた唇を洗うように何度も水を吐いた。(スポニチ)
「迷惑をかけました。本人に代わって謝りたいです。今後については本人としっかり話し合いたいと思います」。母・由香里さん(44)も、ひたすら頭を下げた。(サンスポ)
「(応援に来るのは)迷いました。でも、これが最後だと思って。(息子)本人がやったことですが、(家族)みんな精神的に苦しかった。次の五輪は無理でしょう。いろんな方の意見を聞く限り、その資格はありません」
あえて非情に、息子に五輪引退を勧告した。9日、成田出発時の公式服装の乱れに端を発した“腰パン問題”。日本中の注目を集め、多くの批判と怒りを買った。五輪という晴れ舞台を見終えた今、芳計さんは息子に男のけじめを求めた。(サンスポ)
母由香里さん(44)は「本人から『申し訳ないことをした』とメールの返答があった。本当に皆様にはご迷惑をおかけしました」と頭を下げた。一方で、犬好きな素顔に触れ「人見知りするタイプなので、いつもあのような態度で歩いているわけではなく、しゃべっているわけではなので、その部分はご理解してほしい」と話した。(日刊)
萩原監督は、国母が11日ごろ、自室に1人で謝罪に来たことを明かした。「素直なところもある。シャイで、自分の表現をうまくできないところがある子だったんですが、長く話をすれば、自分の気持ちも話してくれる。イメージがちょっと変わったかな」。(日刊)
スポニチは記述なし。
決勝の1、2回目とも、回転軸を変えながら3回転する大技ダブルコークの着地に失敗。1回目はうつぶせで倒れ、顔を強打し、上唇から流血した。2回目も着地で手をつき、ともに点数が伸びず、メダル候補が8位止まり。やり場のない怒りが、子どものような試合後の振る舞いにつながったようだ。(サンスポ)
予選は大技を温存し、40点台をそろえて突破した。決勝は回転軸を斜めにして3回転する大技「ダブルコーク」を、2回とも最後に繰り出した。1回目は転倒して30・5点、2回目は手をついて35・7点。最後を除けば、得意のマックツイストなど優雅に舞い、2回目の点が発表されると、観客席からブーイングが起きた。
横山審判員は「金は無理としても、あれ(ダブルコーク)を立っていたら、必ず銀か銅メダルは取れましたね」と指摘した。「まあ、決まっていればっつったらどうしようもないんで…」と国母。メダルに手をかけながら、あとわずかで取りそこねた。(日刊)
秘策もあった。予選で封印したダブルコークの解禁。昨夏以降、世界に広まった新技に「ダサい」と悪態をつきながら、日本勢で最も習得に熱心だったのは国母だ。「好きじゃないけど必要ならやる」。最も大切だったのは、11歳で資格を得た天才プロとしてのプライドと、トリノ五輪予選落ちの雪辱。1回目に着地に失敗し唇を切っても、逃げなかった。2回目の採点直後、観客席から起きた低い点数に対するブーイングと「カ〜ズ!カ〜ズ!」のコールは、目の肥えたファンをうならせたことの証明だった。(スポニチ)
試合後は報道陣を威嚇するような言葉を発するなど、やりたい放題。みそぎの舞台は不完全燃焼に終わった上、態度の悪さばかりが際だった。(サンスポ)
「あぁ〜ん!?」。首をかしげ語尾を上げた。日本報道陣の取材エリアの一角。「満足のいく滑りができましたか?」という質問に、不満の色を見せた。質問が聞こえないのなら、その旨を伝えればいいが、また同様の質問をされた時にも「あぁ〜ん!?」。さらに、質問が繰り返されると「あぁ〜ん!?」。“ケンカ腰”の威嚇と受け取られても仕方のない声だった。(サンスポ)
国母は精神的につらかった時のことを聞かれると「いや、そんなん気にしてたらこんなことやってないですね」と両手を広げた。4年後の挑戦には「この後に続く本当のスノーボーダーが五輪目指してくんなきゃ、オレがまた出るつもりでいますね」と言った。最後まで、悔しさや照れは、心の中にしまいこんだ。(日刊)
最後は2014年ソチ五輪へ出場意欲を示した。自分の使命は『スノーボードのかっこよさを伝えること』と考える21歳。だが、メダルを逸した上に悪態では、決してかっこよくはない。不良少年のような軽率な言動から卒業しない限り、4年後への道はあまりにも険しい。(サンスポ)
非難され、目標だったメダルも逃した息子を本当の意味で助けられるのは、家族のみ。約10人の親族応援団の帰路につく足取りはあまりに重かった。(サンスポ)
8月には、昨年11月に結婚した妻智恵さん(24)との挙式を予定している。試合後、選手村へのバスを待つ間、日本テレビのクルーから声をかけられ、リクエストに応えた。男子4人で情報番組「スッキリ!!」のポーズを取り、「ズームイン!」も照れずにやった。競技を終えて、1人の若者に戻っていた。(日刊)
「滑りのスタイルも出せたし、そのほかのことについても全く悔いはないです」と無表情に言い放った姿は、最後まで“悪童”そのもの。だが、いつか気がつく時が来る。本当の強さとは何か、本当の自分らしさとは何か。その日こそ、天才ボーダーが本物のアスリートへと昇華する日になる。(スポニチ)