【コラム】F1サーキットだけ建ててどうするつもりなのか(下)

 なぜこうなったのだろうか。地域発展に向けた対策を模索していた全羅南道は、06年にF1招致に成功した。しかしその際、文化体育観光部は懸念を示していた。「開催地のアクセス環境が悪い」「宿泊施設の整備が脆弱(ぜいじゃく)」「韓国国内のモータースポーツの底辺が狭い」など、事業の妥当性が低かったためだ。だが、07年の大統領選挙を控え、政界でF1特別法早期制定とF1大会の支援が約束され、F1大会の推進が進展した。

 だが今度は、海外で「黄信号」が点った。05年の中国・上海GPは27万人の観客を動員したが、有料観客は3万2000人に過ぎなかった。09年のトルコ・イスタンブールGPも同様だった。15万人収容のサーキットに集まったのはわずか3万6000人だった。中継のため、空席を黒い布で隠さなければならないほどだった。こうした事情を組織委員会や政府、関連企業も知っている。ただ互いに黙殺しているだけだ。

 このままでいけば、韓国初のF1大会は失敗に終わる公算が高い。今年はちょうど「韓国訪問の年」だ。F1大会は韓国の観光を促進させる絶好の機会となり得る。16年間で通算91回の優勝を収めて引退したドイツのミハエル・シューマッハが4年ぶりに復帰するのも好材料だ。

 成功を収めるか否かは準備に懸かっている。全羅南道には特級ホテルが2カ所しかない。ソウルや済州など他地域の宿泊施設を活用するとともに、徹底した交通対策も立てなければならない。支援法まで制定しておき、今になって「後はそちらに任せる」と政府が身を引いてしまっては困る。「世界5大自動車生産国の韓国が自動車レースを満足に開催できない」という国際的な不名誉を被らないために、1日も早く総力を結集させなければならない。

趙正薫(チョ・ジョンフン)論説委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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