検証/「参政権要求運動」(7)
朝・日友好にも弊害
私たちの権利擁護運動は、日本政府の人権侵害と民族差別に対する一貫した運動の歴史である。それは今日まで一度として、日本当局が進んで在日同胞の権利を与えようとしたことがないからだ。
これまでの経験は、在日同胞の団結した力と広範な日本市民の支持世論が一つになった時、権利擁護運動で輝かしい前進を遂げられることを示してる。
協力関係にひび
日本の国政、地方政治が政党政治、派閥政治だということは周知の事実だが、「参政権」が叫ばれるなか最近、日本の一部政党が 「定住外国人」を受け入れることを決定した。
入党の資格を三年、または五年以上の在住歴としているが、その意図は外国人の受け入れによる党勢の拡大にあると言える。 つまり、外国人の権益を保障するために外国人党員を受け入れるのではないということだ。外国人を受け入れるという決定のどこにも、外国人の民族的自主権を保障するという項目はない。
実際に、在日同胞が日本の政党に入れば必然的に、後援会などの組織に関与するようになる。そうなれば、在日同胞が日本の政治運動に巻き込まれ、同胞組織とは縁遠くなるのは明白だ。 入党資格に関する項目を見れば、「党の基本理念と政策に対する支持を前提とする」となっているが、もともと党とは思想、理念の共通性に基づいて政治的目的を実現する組織だ。
したがって、日本の政党に在日同胞が入党するということは日本の政権獲得という政治的目的を実現するために活動することになる。ここからも日本の内政に巻き込まれるというのは必至である。
在日朝鮮人運動にはかつて、一部の同胞が日本の特定政党に参加し、日本の内政に関与したため、過酷な弾圧を受け深刻な結果を招いた辛い経験と教訓がある。絶対に同じ過ちを繰り返してはならない。
特定の政党だけを支持し、また特定の立候補者に投票することになれば、その反対陣営に所属する日本の政党や市民は、私たちの主張に耳を傾けないばかりか、ひいては対立勢力になってしまう。
そうなれば総聯と各団体、各政党との間で長年にわたって築いてきた友好協力関係にひびが入る事態が生じることは想像に難くない。
対立の原因作る
地方「参政権」は国政と地方自治のレベルの差はあるにしても日本の内政への干渉にそのままつながるものである。
万一、「参政権」を行使して日本の政治制度に参与すれば、日本市民は政治的な利害関係から在日同胞に接し、相対することになる。このことによって、広範な日本国民の支持と理解を得ることが困難になる。
現在は、「地方参政権」どまりだが、次は国政ということになり、ますます内政に深く関与することになる。それは「地方議員の主要な役割の一つは国政とのパイプをつなぐこと」ということからも明白だ。
今後、日本の国政上においても、同胞と日本市民との間で対立の原因をつくることになるのである。
「参政権」の行使は地方自治への参加とはいえ、あらゆる住民の利害に在日同胞を巻き込み、地域社会に好ましからざる影響を及ぼすことは必至である。
「参政権」をもって日本の内政に関与することなどは、まさに 「百害あって一利なし」である。
私たちは、日本の内部問題である政治的な利害関係に関与もせず、また自主性を尊重してきたからこそ、超党派的な対外活動も繰り広げ、各界各層の広範な日本市民とも友好を深めることができたのである。
だが「参政権」を持つことによって、今まで築き上げてきた朝・日の友好関係に大きな禍根を残す要因が生じることになる。 日本の自主性を重んじ内政不干渉、不偏不当の原則を貫いてのみ、朝鮮の統一と在日朝鮮人の権利と生活問題が、政治的な利害関係を離れた日本人自らの課題として提起されるということを歴史は物語っている。
「参政権」は、まさに朝・日両国民の友好に弊害になるだけである。(日)[朝鮮新報96/6/28]