きょうの社説 2010年2月19日

◎北陸新幹線与党議連 新潟、長野の参加に意義ある
 北陸新幹線の建設推進に向けて、4月にも発足する与党系地方議連に関係7府県から議 員が参加する見通しとなったことを歓迎したい。当初は北陸3県だけとする案もあったようだが、新潟県や長野県などが加わって、組織に広がりと厚みができた。特に新潟県の与党議員を巻き込んで、意思の疎通を図る機会ができる点に大きな意義がある。

 議連の最優先課題は、まず2014年度の金沢開業を盤石のものにしていくことだ。泉 田裕彦新潟県知事は、昨年末になって、ようやく建設費の地元負担金の支払い拒否を撤回したとはいえ、建設費を支払うと確約しているのは今年度分だけで、新年度以降の方針ははっきりしていない。

 今月15日に開催された北陸新幹線沿線4県の担当課長会議でも、新潟県側は泉田知事 が主張する上越駅への全列車停車に強くこだわり、歩み寄るそぶりは全く見せなかった。新潟県の当初予算案は、国に対する抗議の意思表示からか独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構の請求額より約13億円減額した額を計上しており、完全にホコを収めたわけではなさそうである。

 新たに発足する議連には、ぎくしゃくしがちな泉田知事と政府・与党との間を取り持つ 潤滑油の役目を果たしてほしい。時には政権与党の強みをフルに発揮して、かたくなな態度をいさめることも必要だ。7府県の与党議員がしっかりとスクラムを組み、新潟県議の力を借りて、もつれた糸を解きほぐす努力を求めたい。

 小沢一郎民主党幹事長は先月、福井市での会見で、北陸新幹線の金沢−敦賀の整備につ いて「現実に着工するよう政府に強く働きかけたい」と述べ、さらに「ちんたらやっていたら費用対効果が薄れる」「(北陸新幹線は)つながないと意味がない。第二東海道(新幹線)の意味も持つ」と強調した。

 今夏の参院選をにらんだ地元向けのリップサービスと言えなくもないが、政界一の実力 者の発言だけに、福井延伸の着工認可の期待が膨らむ。議連への滋賀県や大阪府からの参加は延伸の可能性を印象づける意味でも効果的だろう。

◎安保・防衛懇談会 「対等」な同盟の具体論を
 鳩山政権の「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」が、2011年度からの 新しい「防衛計画の大綱」策定に向けて検討作業を開始した。有識者で構成する同懇談会は、鳩山政権の外交・安保の柱である「緊密かつ対等の日米同盟」を具体化する議論が求められる。

 日米安保条約は今年、改定から50年を迎え、日本の安全とアジア太平洋地域の平和の 維持に不可欠であることを再確認する日米共同声明が先に発表された。さらに、オバマ米政権は今後の安全保障戦略の指針となる「4年ごとの国防戦略見直し(QDR)」を公表し、同盟国や友好国との関係強化を「米国の安全保障政策の中核」とする方針を明確に打ち出したところである。新防衛計画大綱はこうした方向と整合性のとれたものでなければなるまい。

 新大綱は本来、昨年中に策定される予定であり、麻生前政権の有識者懇談会が既に報告 書をまとめている。この報告書は、日米同盟強化の観点から集団的自衛権の行使を禁じる政府の憲法解釈の変更のほか、武器輸出三原則の見直しを求めている。国際的な分業体制で進む技術、装備開発から日本だけ取り残されることがないよう、武器の共同開発に参加できる道を開くべきという趣旨である。

 新しい有識者懇談会でもこれらのテーマが焦点になる。社民党と国民新党も参加する連 立政権のため、踏み込んだ議論になるかどうか疑問視されるが、「対等」な日米同盟に「深化」させるという鳩山由紀夫首相の基本方針に従えば、前懇談会と同様の提言がなされても不思議ではない。

 また、オバマ政権のQDRは、中国の宇宙やサイバー空間を含む軍事力の増強や北朝鮮 などの核開発・拡散に対する懸念を隠さず、核兵器廃絶まで核抑止力を堅持し日本に提供することをあらためて明記している。懇談会委員の一人が、有事において米国の戦術核の導入を認めるか否かについて検討する必要があると指摘しているのは、きわめて現実的な問題意識であり、非核三原則についても積極的に議論をしてもらいたい。