中国新聞オンライン
中国新聞 購読・試読のお申し込み
サイト内検索

イスラエル首相に逮捕状も ハマス暗殺、モサド関与か '10/2/18

 アラブ首長国連邦(UAE)ドバイで1月、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマス幹部が殺害された事件が波紋を広げている。ハマスが支配する自治区ガザへの武器密輸にこの幹部が関与していたことが判明、イスラエルの対外特務機関モサドによる暗殺との見方が強まり、UAE当局はイスラエルのネタニヤフ首相に対する逮捕状発付も検討している。

 イスラエルは関与を否定も肯定もしていないが、ハマスはイスラエルへの報復を予告。ドバイ警察のタミム長官は2月15日、英国などの欧州の旅券を持つ11人に「近く逮捕状を出す」と述べた上で、黒幕がモサドである可能性を「排除しない」と語った。BBC放送によると、ブラウン英首相は英国旅券が使われた理由の調査を関係部局に指示した。

 殺害されたのはハマス軍事部門幹部のマブフーフ司令官。1988年にイスラエル兵拉致に関与したとされ、ドバイ入りした翌日の1月20日、遺体がホテル内で見つかった。犯人は感電させた上、窒息死させたか薬物で心臓まひを起こさせたとみられている。

 ハマスのナセル報道官は、マブフーフ氏が「ガザへの武器供給で中心的役割を果たしていた」と明言。武器はイランからエジプトを経て地下トンネルでガザに密輸されたとみられ、イスラエル紙は、武器密輸での役割が判明した昨年から、同氏がイスラエルの「最重要手配リスト」に載ったとの見方を伝えた。

 タミム長官は2月4日、UAE紙ナショナルに対し、モサド工作員による暗殺と確認されれば「ネタニヤフ氏に逮捕状を出す」と言明。イスラエル国防省当局者はエルサレム・ポスト紙に「われわれがやったのでなくても、やったと思わせておけ」と語り、モサド工作説がハマスへの抑止力になるとの見方をうかがわせた。

 15日の記者会見でタミム長官は11人の名前や顔写真を公開。11人がマブフーフ氏の向かいの部屋を取り支払いは現金、UAE滞在は1日だけであったことを明らかにし、「これらの容疑者を逮捕すれば、誰が黒幕か分かる」「イスラエルは多くの国で数多くの暗殺を実行している」と語った。

 イスラエルは、2008年のレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラ幹部ムグニエ氏暗殺など多くの事件への関与が指摘される。エルサレム・ポスト紙は、今回の暗殺は一連の特殊工作の一環として行われた可能性があると指摘した。(エルサレム共同=山口弦二)




HomeTopBackNextLast
安全安心