外国人参政権が国民生活を壊す:山田 宏

Voice2010年2月18日(木)18:00

教科書採択への外国人の猛抗議

 1月11日、政府・民主党首脳会議の場で、永住外国人に地方参政権を付与する法案をこの通常国会に提出するという方針が決定された。報道によれば、この会議の場で民主党の小沢一郎幹事長が「日韓関係を考えると政府がやるべきだ」と主張し、この法案は議員提出ではなく政府提出法案として準備が進められることになったという。

 むろん民主党内にも、この外国人参政権問題について根強い批判があるし、連立を組んでいる国民新党の亀井静香代表も反対の姿勢を示しているから、法案の行方はいまだ固まったものとはいえないが、しかし万が一、この法案が可決するような事態となれば、間違いなく国民生活を大きく侵害する危険性をはらんだものになるばかりではなく、将来的に、日本の在り方に深刻な影を落とすものとなるだろう。

 有権者のなかには、今回の問題を聞いて、「地方参政権ぐらいなら永住外国人に与えてもいいのではないか」と考えている人も多いようである。だが、これはそう簡単な問題ではない。11年間、杉並区長を務めてきた体験も踏まえてそれについて指摘したのちに、あらためてこの問題の本質について論じていきたいと思う。

 まず、私自身が経験したことをお話ししたいと思う。2005年、杉並区が扶桑社の歴史教科書を採択したときのことである。

 いずれの国であれ、自国の国民の子弟の教育内容は、その国の国民が責任をもって決めるのが当然である。どの教科書を選ぶかも国民の重要なテーマで、小中学校の場合、それは市町村の教育委員会の権限になっている。その権限に基づいて、杉並区の教育委員会が扶桑社の歴史教科書を採択するのではないかとマスコミで報じられるや、全国の民団(在日本大韓民国民団)から抗議の手紙が殺到した。全国各地の民団の各支部から続々と舞い込んできたのである。どの歴史教科書を採択するかは民団が強く関心をもってきたテーマであり、彼らの主張する歴史認識に反する教科書を採択しないよう強く求めてきたのだ。

 そればかりではなく、杉並区議会でこの教科書採択のことが質問に上ると、民団の関係者と思しき人びとが大挙して傍聴に訪れて傍聴席に陣取り、大きな声で野次を続けた。議会の傍聴席でそのような行為は禁じられており、議長も注意をするのだが、どんなに注意されようとも意に介さない。さらに、区長室の前にも多人数で押し掛け、シュプレヒコールを繰り返したのであった。

 もし、外国人参政権が付与されていたらどうなっただろうか。外国人が区長や区議会議員に対する選挙権をもつようになり、そのうえであのような激しい抗議活動が行なわれたとすれば、与野党を問わず、彼らの顔色を窺おうとする議員が出てきただろう。また、たとえばルール違反の抗議活動を排除しようとした場合、これまでならば、「日本人が責任をもつべき教育の内容について、このような干渉をするのは失礼ではないですか」と主張することもできたが、外国人参政権が認められていれば「同じ有権者なのに、われわれを日本人と差別するのか」という話にもなりかねない。

 これは歴史教科書に限った話ではない。道徳や倫理、公民の教科書についても、たとえば外国の一定の勢力が日本の各自治体に圧力をかけ、自分たちに都合のよい教科書を採択させることが可能になるのである。

 さらに教育についていえば、いま市区町村が独自に教師を採用することが認められるようになった。杉並区では「杉並師範館」という教師養成塾を設け、外部から講師も招いて独自のカリキュラムに基づいて教育を行ない、すでに第3期生までで71名の卒塾生が実際に杉並の学校に配属されている。もし、外国人参政権によって外国人勢力がこのようなプログラムに圧力をかけられるようになれば、教科書ばかりではなく、教育の根幹である教員育成にまで大きな影響力を行使できるようになるだろう。

 あるいは学校に対して直接、圧力をかけることも考えられる。最近、教育現場ではモンスター・ペアレントも問題になっているが、もし外国人勢力が自分たちの歴史観や主義主張に合わないような教育をする先生や学校運営に対して抗議活動を始め、それを「有権者として市長や区長に報告する」と言い募れば、校長や先生は深刻な圧力を感じざるをえない。そんなことも日々起こりかねないのである。

 誤解してもらっては困るのだが、私は、ルール違反の抗議活動は断じて許されないと考えるが、外国人が自国の歴史観に誇りをもち、それを主張すること自体はごくごく当たり前で、問題だとは考えていない。

 そもそも歴史とは、どの立場から見るかによって、まったく異なるものである。戊辰戦争をどう見るかということ1つをとっても、会津と長州とでは見方がまったく異なる。日本国内ですらそうなのだから、ましてや外国の人たちが、自国の歴史に誇りをもち、自国のために行動をすることはありうるし、それが時と場合によっては日本人の考えと衝突することがあるのも、ごくごく当然のことなのである。

 むしろ、それが当たり前のことであるからこそ、そのような外国の方々に、日本での1票を与え、公権力を左右できる力を与えることが、本当に正しいことなのかどうか、ということが問題になるのである。ここは真剣に考えなければならない問題である。

2010年3月号のポイント
民主党政治は日本を弱体化させる道を進んでいる。福田和也氏は、小沢氏の疑惑が政権交代に希望を託した国民を絶望させ、この国の生命力が衰弱すると危機感を露にする。日米関係では、親日派のケント・カルダー氏が米政権の本音を語る。さらに「景気回復を阻む5つの愚策」について、ロバート・フェルドマン氏、池田信夫氏らが警告を発し、「外国人参政権」に山田杉並区長が住民の立場から反対を表明。国益重視の政治に転換して欲しいとの願いが詰まった“緊急特集”です。
第二特集では、大前研一氏はじめ6名が「日本の経済成長」に向け提言する。
詳細は、下記のリンクから「特設サイト『Voice+』へ

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