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松戸の殺人放火:容疑者再逮捕 更生目指す形跡なく 「空き巣、金にならず」 /千葉

 出所後もサウナで連泊--。千葉大生殺害放火事件の捜査がヤマ場を迎えた。捜査関係者によると、強盗殺人などの容疑で再逮捕された竪山辰美容疑者(48)は「冷たい世間に放り出された」と供述しているというが、昨年9月に刑務所を出所後サウナに居続け、職探しなど更生を目指した形跡はない。「空き巣をやっていたが、金にならないので強盗をやった」とも供述、一連の逮捕容疑以外にも民家へ侵入盗を認めているという。【中川聡子、斎藤有香、黒川晋史】

 竪山容疑者は強盗傷害事件で7年間の服役後、昨年9月後半から東京都荒川区のJR日暮里駅そばのサウナに連泊していた。関係者によると竪山容疑者は「宿泊コース」(来店時から24時間で料金2800円)を利用し、代金は毎回現金で支払っていた。捜査関係者によると、竪山容疑者はこれまでの調べで立件された事件以外にも民家への侵入盗に関与したと供述している。

 竪山容疑者が関与したとされる一連の事件の現場は、日暮里駅に乗り入れるJR常磐線や京成線の沿線で、荻野さんのマンション最寄りの松戸駅までは常磐線で20分。サウナ代を稼ぐために手口をエスカレートさせていった可能性もある。

   ◇  ◇

 17日は竪山容疑者の最初の逮捕から3カ月目に当たる。県警の中村修一・捜査1課長は会見で「県内各地で悲惨な事件が起き、一つ一つ積み重ね、荻野さんの事件まで到達できた」と長い捜査を振り返った。捜査関係者によると、竪山容疑者は関与した事件の被害者や火をつけたマンションの住人に対し「申し訳なかった」と話しているという。

 ◇「事件には区切り…」 卒論指導・三島助教、心の痛みは癒えず

 卒業論文に取り組んでいた荻野さんは現地調査の目前、事件に巻き込まれた。「もしかしたら、一緒に現地へ行くこともあったかもしれない」。卒論指導を担当していた三島孔明助教は17日、千葉大園芸学部構内で毎日新聞の取材に応じ、そう振り返った。「事件の上では区切りがついたが、悲しみは変わらない」。今も心の痛みは癒えないという。

 荻野さんが所属していたゼミは「環境植物学講座」。荻野さんの卒論のテーマは、三島助教自身の専攻とも関連する「農業教育」。昨年4月以降、毎週のゼミや研究室で、卒論テーマを絞り込む作業を一緒に行ってきた。

 卒論では、農業高校生が小中学生に農業を教える試みを論じようとしていた。三島助教は事件直前まで指導し、荻野さんは現地調査も考え準備を進めていた。

 事件直後のゼミは荻野さんの告別式の日に当たり休講。それ以後は通常通り行ってきた。事件後のゼミの様子について、三島助教は「みんな積極的に彼女の話題をすることはなかった。悲しみをこらえていた」と話す。別の容疑で逮捕された竪山容疑者が「ATMの男は自分」と供述していることが報じられた日にも、廊下ですれ違ったゼミ生に「捕まったね」と話し掛けるのが精いっぱいだったという。

 今月12日のゼミの卒論研究発表会では、荻野さんの同期約30人が登壇した。本来なら荻野さんも報告するはずだった。三島助教は他の学生の発表を聞きながら、熱心に指導してきた荻野さんがその場にいないことを、しみじみ痛感したという。【西浦久雄】

 ◇「彼女の命戻らない」 構内の学生ら力なく

 千葉大学園芸学部では17日、すでに大半の講義が終了し、構内は閑散としていた。

 竪山容疑者再逮捕のニュースに女子大学院生(25)は「やっと捕まったという感じ。最近、治安が悪くなったと感じている」。3年男子学生(21)は「同じ大学の学生として痛ましく感じていた。捕まっても彼女の命が戻って来ない」と力なく言った。

 一方、3年の女子学生(21)は「事件から1カ月は大学がおかしいくらいに注目され、傷ついた学生もいた。世間は騒ぐだけ騒ぐとその後すぐに気にとめなくなり、風化した感じがする」と、報道の過熱や興味本位の世間を批判した。

 1カ月間に計5人が襲われた。荻野さんの事件は未然に防げなかったのか。大学の男性職員は「警察は一生懸命やっているので責められない」。一方、4年の女子学生(22)は「前に起きた事件で捕まっていればこんなことにならなかったのに」と残念がった。

   ◇  ◇

 事件現場のマンションにはシートが掛かり、改修が行われていた。通りかかった自営業の男性(49)は「自分も学生の一人娘を1人暮らしさせている。人ごとではなかった」と、マンションを見上げた。【西浦久雄、荻野公一】

毎日新聞 2010年2月18日 地方版

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