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少女の笑顔を守って

剣の城塞騎士・フローラ

<少女の笑顔を守って>

■担当マスター:yawa

●夜に訪れるもの
 ――ドン……ドン!
 何か音がする。遠くで音がする……まどろむ意識の中で、ぼんやりとそんな事を考える。
 ――ドンドン! ドンドン!
 戸を叩く音だろうか? 周囲は既に暗闇に覆われ、訪れるものなど居ないはずの時間。
 風の音だろうか? 否、風の音では無く、確かにそれは慌しく戸を叩く音。開けろ、開けろ、この戸を開けろと、催促する音。
「ふにゅ、なぁに?」
 少女はふにふにと目をこすりながら寝床から出て、音のする方向、玄関へと向かう。
「……あっ」
 玄関まで行くと、そこには手に明かりを持った母と、丸太のようなものを持つ父の姿があった。少女は母の元へ駆け寄ると、その腰にしがみつき、そんな少女の頭を母は優しく撫でてやった。
 母のぬくもりに胸をなでおろす少女……だが、それも一瞬のこと。
 父と、戸を叩くものの間でどのようなやり取りがあったのかは知らない。ただ、父が戸を僅かに開けた瞬間、父の背中から銀色に輝く何かが飛び出していた。
 何が……起きたのか? 何が父の背中から飛び出しているのか? それらを彼女たちが理解するよりも早く、銀色のそれが父の背中から引っ込むと、父は鈍い音を立てて床に伏した。
 そして倒れた父の向こう側に、口の端を吊り上げ、不気味に笑う男の姿が現れた。
「お前達は、俺のお楽しみの邪魔にならないように周りを見張っていろ」
 禿げ上がった頭に爛々と双眼が輝く猫背の男。男が一声かけると、そのさらに後ろに居た男たちは慌しく離れて行ったようだ。
「ぁ……あぁ……」
 声にならない声を絞り出して震える母と、それにしがみ付く少女を前に男はニタァと口を開き、手に持った銀色のものを床に突き立てる。
 少女は思わずそれを眼で追い、銀色のものに自分の顔が映っている事に気付いた。
 目を大きく見開き、恐怖に青ざめる自分の顔を……。

●運命を変えるもの
「皆さんには、少女と、少女の家族を救って欲しいの」
 剣の城塞騎士・フローラが、ある少女に見たエンディング。それは少女の家族と、少女自身に降りかかる不幸な、不幸で片付けてしまうにはあまりにも惨い結末……それを何とか変えて欲しいと、フローラはエンドブレーカーたちに話し始める。
「事件を起こすのは強盗団。家に押し入り、何もかも……そう、全てを奪ってゆくわ。何せ、強盗団のボスはマスカレイドなのだから」
 マスカレイド、この世界の敵。
 その名を聞いたエンドブレイカーたちの反応を見て、フローラは先を続ける。
「この少女の家は、真っ暗な森の一歩道を抜けたところにあるわ。強盗団がこの家に着く前に何とか決着をつけて欲しいの」
 真っ暗な森の中の道。上手く森に身を潜めて待ち伏せれば、強盗団の不意を着く事ができるかも知れない。
「だけど、気をつけて。強盗団のボスのマスカレイドは……このマスカレイドは左手を大きな爪に変化させているんだけど、そこから鉄をも切り裂く強烈な斬撃を狙った相手に飛ばしてくるわ」
 一通りの説明を終えると、フローラは思い出したように言う。
「それから、できればマスカレイドとなったボスを除いた、他の強盗の命はとらないで欲しいの」
 強盗たちは確かに悪人であるが、お楽しみと称して人を惨殺するボスとはまた一線を隔したものたちでもある。
 全ての説明を終えると、フローラは真っ直ぐにエンドブレーカーたちを見つめる。
 残酷な結末、これから起こる出来事、予定された未来……だが、それが何だと言うのか。
「危険な仕事かもしれないけど……皆さんどうか、少女と、その家族を救ってあげてね!」
 いたいけな少女が、平穏な家族が不幸になる。そんな未来はブレイクしてやれ! と、エンドブレイカーたちに少女とその家族の未来を委ねた。

●マスターより

 はじめまして、yawaと申します。
 オープニングを閲覧いただき有難うございます。
 皆様の冒険が少しでも楽しいものとなるよう尽力したいと思っておりますので、これからよろしくお願いいたします。
 
 このシナリオの敵は強盗団のボスのマスカレイドです。
 ボスは大きな爪を振り回して、相手を切り裂こうとします。
 また、戦闘時には二体の人ほどの大きさのネコ型マスカレイドを召喚します。
 ネコ型マスカレイドは、ボスと同じく、鋭い爪で攻撃してきますので注意してください。
 
 また、ピンチになった場合、ボスは逃げようとするかもしれません。
 あと、ボスを除いた強盗団は戦闘開始時に逃げ出そうとします。
 それでは、皆様の参加をお待ちしております。


<参加キャラクターリスト>


<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

● 剣の魔法剣士・セリカ(c00176)
・心情
俺の力は弱き者、困窮する者の為に揮うべきものだ
強盗団の蛮行は必ず阻止してみせる!
・行動
強盗団を待ち伏せする
行動は基本的に周りに合わせる
・作戦
ボスへと攻撃を集中する
V字隊列で足止めしつつ、ボスに一斉攻撃
一般の強盗団が逃げ出したら、チームごとに包囲
星霊術士は各チームの後方で指示・回復
先に片付いたチームは他のチームの補助に
罠設置等は他の人に任せ、自分は周囲を警戒する
・戦闘
基本的に前衛で武器のアビリティを使用して攻撃
ここぞと言う時は残像剣で攻撃する
敵の攻撃は回避を心がけるが、難しい場合は剣で受け止めるか受け流したりする
・台詞
開始時:貴様らの蛮行も此処までだっ!
十字剣使用時:先ずは相手の出方を窺うか…!?
残像剣使用時:欲に曇った力に俺は負けん!
基本的に熱血な性格をしています
戦闘前は基本的に口数の少ない落ち着いた口調です

● 大鎌のデモニスタ・ハデス(c00804)
初依頼か
緊張するな

【作戦】
前もって、罠を設置しておく

森に身を隠し、息を潜めて待ち伏せ
盗賊団を確認したらV字隊列を取りつつ盗賊団の進路を塞ぐ

マスカレイド以外はこの場では見逃すが、
道の先へは絶対に進ませないよう細心の注意を払う
盗賊団員が逃げ出したら改めて戦闘開始


ネコ型マスカレイドの殲滅後に他の班がまだ戦闘中ならば、速やかに加勢
優先順位は『1.もう一匹のネコ』『2.盗賊団ボス』の順番

【チーム】
Aチーム:ロクァリス・レーゼ・クレア・セリカ
Bチーム:シェル・サクラ・アリカ
Cチーム:ラミア・ハデス・アイカ

道の左から:シェル・サクラ・アリカ・ロクァリス・レーゼ
道の右から:ラミア・ハデス・アイカ・クレア・セリカ

● アイスレイピアの星霊術士・サクラ(c01646)
心情
 小さい子どもの笑顔の笑顔が失われるエンディングは願い下げですからね。ここで壊させていただきましょうか。

準備
 待ち伏せは森に身を隠し、息を潜めて待ち伏せします。
盗賊団を確認したらV字隊列を取りつつ盗賊団の進路を塞ぎます。

戦闘
 戦闘は3チームに分かれます私は【Bチーム】に入っています

私も最初の方でもだけチームの皆さんと一緒に【氷結剣】で戦います
1撃攻撃されるか回復が必要な人が出そうになったら下がって回復を出来るようにします
そして必要なら【星霊スピカ】に回復をお願いします。

ネコ型マスカレイドの殲滅後に他の班がまだ戦闘中ならば、速やかに加勢します

優先順位
1.もう一匹のネコ
2.盗賊団ボス

戦闘後
 罠に掛かった盗賊さんをアイスレイピアのKO効果で氷付けにして、自警団等の組織に引き渡すまで氷付けになっていただきます。

台詞
「さて、お相手をお願いしますね。」
「スピカ、回復お願いね。」
「これでどうでしょう?」

● ハンマーの城塞騎士・シェル(c02535)
作戦
位置や陣形が大事だと思うから、全体の動きがどうなってるかしっかりと覚えておくよ!

戦闘前
ロクァリスちゃんとアリカちゃんが罠設置へ
他の皆は先回りして道を挟んでVの字陣形で待ち伏せするよ。
道の左側シェル・サクラ・アリカ・ロクァリス・レーゼ
道の右側ラミア・ハデス・アイカ・クレア・セリカ
(敬称略)

戦闘
強盗団の人達を十分にひきつけてから一気に奇襲する!
マスカレイド以外の強盗団が逃げ出したら……口惜しいけど今は見逃す。
A、B、Cの各班に分かれてマスカレイドを包囲するよ。
Aはボス相手。B、Cは雑魚相手だよ。
優先して倒すのは雑魚からで、最終的に全員でボスを囲んで戦うよ。
私はB班担当。
戦い方は、雑魚相手はガンガン行こうぜ!とにかく全力攻撃!
ボス相手は逃げ難いように背後を取り続けてやる!

戦闘後
終ったらもうここには用はないぜっ!
逃げた強盗団の残りを追いかけるよ。
捕まえたら拘束はサクラちゃんにお任せ。

● 大鎌の星霊術士・ロクァリス(c03227)
〜準備〜
チームA所属
トリモチ、縄用意

〜行動〜
強盗団が通り過ぎるまで林の中などに
気配を感じさせないように隠れる
アリカさんと一緒

通り過ぎた後、暫く後に、縄やトリモチを設置
強盗団が逃げだした時にひっかかるようにする

その後は強盗団の後ろから
又は脇道があれば
そこから走りぬけて仲間と合流する

〜戦闘〜
敵からの攻撃は避けるか、大鎌で防御する
攻撃はせず、後ろから仲間の回復を行う
また、敵の攻撃が何処から来るのか等を仲間に伝え
仲間が避けやすいよう指示を行う

<回復>
回復はA班内、GUTSが2/1まで減った人へ行う
チャージ・キュアが出た場合は
再度対象者へ使い直す
他班への回復は
回復メンバーの手が回らない時のみ実行

回復は自分のGUTS限界まで行う
GUTSが切れたら後ろに下がり
狙われ辛くなるよう位置調整
「防御を中心に固めます、皆さん、お願いします!」

〜終了〜
戦闘終了後、強盗団の確保に行く
縄を使用し一人ずつ縛り上げ
然るべき場所へ突き出す

● 大剣の魔獣戦士・ラミア(c03718)
◆呼び方
ネコ型マスカレイド=ネコ

◆潜伏
森に身を隠し、息を潜めて待ち伏せする
盗賊団を確認したらV字隊列を取りつつ盗賊団の進路を塞ぐ

なお、基本的にマスカレイド以外はこの場では見逃すが、
道の先へは絶対に進ませないよう細心の注意を払って行動したい

◆戦闘
盗賊団員が逃げ出したら改めて戦闘開始
私はC班としてハデスとアイカと行動し、他班と協力して敵を囲い込むように動く
私達が相手取るのは盗賊団ボスが召喚するネコの内の一匹だ
戦闘時は主にビーストクラッシュを使用していく

戦闘時は敵の注意を後衛へと向けさせないためにも、
多少の無茶は覚悟の上で常にネコに肉薄しながら攻撃し続ける

ネコ型マスカレイドの殲滅後に他の班がまだ戦闘中ならば、速やかに加勢する
優先順位は『1.もう一匹のネコ』『2.盗賊団ボス』の順番だな

◆戦闘後
サクラが凍結させていく盗賊団員を端から順に数え、
逃げ果せた輩がどれだけ居るかを確認
突き出す際に報告しようと思う

● ソードハープのデモニスタ・レーゼ(c03746)
●作戦
道の左右に分かれて待伏せ
盗賊団と罠設置組を確認したら、V字陣形で足止め→同時にボスへ一斉攻撃
団員が逃げ出したらボスを包囲
ネコを召還したら下記チームごとに分かれて撃破
星霊術師は後衛で、回避方向指示と回復

●待伏せ
右:ラミア・ハデス・アイカ・クレア・セリカ
左:シェル・サクラ・アリカ・ロクァリス・レーゼ

●チーム
A(ボス):ロクァリス・レーゼ・クレア・セリカ
B(ネコ1):シェル・サクラ・アリカ
C(ネコ2):ラミア・ハデス・アイカ

●対マスカレイド
最初は十字剣で足(マヒ)を狙う
攻撃は剣で防御か、受け流し
爪は指示通り回避。先に視認できたら自己判断で回避→距離が開くのでデモンフレイム→敵が怯んだら前衛に戻る
万が一先に倒せたら、B・Cチームの援護

●戦闘後
確実に倒せたか確認→皆と一緒に、罠に掛かった団員を自警団へ連行

● トンファーの群竜士・クレア(c04016)
【心情】
かよわい少女と家族のエンディングはハッピーエンドじゃなきゃな!
絶対にハッピーエンドにしてやる!

【行動】
みんなで強盗団を待ち伏せする
基本的に周りに合わせる

【作戦】
V字隊列で敵を囲んで戦闘開始
一般の強盗団が逃げ出したら臨機応変に行動
先に敵が片付いたら他のチームに応戦する


【戦闘】
基本的に竜撃拳を使う
敵の攻撃をなるべくよけつつ全力で攻撃する

【台詞】
相手がすばしっこかったりしたら「ッチ、ちまちま動いてんじゃねぇよ!」と声を荒げる
相手が倒れた時は「これでおわりだな!」
少女に対してはかなりやさしく話す

● ハルバードの星霊術士・アイカ(c04458)
<心情>
幸せが崩される未来なんて見たくない

<目的>
少女と、その家族を救う事

<戦闘>
私はC班としてラミアさん、ハデスさん ともに行動します。

戦闘が開始されたら私はある程度、距離をとり星霊を使用し仲間や私の回復メインで戦闘します。

敵が私に攻撃をしてきた場合はハルバードで受け止め攻撃アビで反撃します。


● 爪の魔獣戦士・アリカ(c04884)
【心情】
お楽しみが惨殺って…趣味悪ぃなぁ…
万が一にもこの家族には手出しさせねぇ。


【戦闘前】
道に強盗団が通った後にロクァリスと共に逃げ出してきた一般の強盗団用に罠としてとりもちと引き上げ網を設置。
「…俺達の方が強盗団より怪しそうだな(←身長的な意味で」
強盗団の後を付けて、一斉攻撃の際に合流


【戦闘時】
一般の強盗団が逃げ帰ったらむしろニヤリとする。
「へへへ、怪我しないだけ良いだろ?」


V字隊列で足止め、ボスに一斉攻撃
一般の強盗団が逃げ出したら、チームごとに包囲
星霊術士は格チームの後方で指示・回復
先に片付いたチームは他のチームの補助に
チーム
Aチーム:ロクァリス・レーゼ・クレア・セリカ
Bチーム:シェル・サクラ・アリカ
Cチーム:ラミア・ハデス・アイカ
そこに星霊術士が1チーム1人入る

【戦闘後】
女の子をじーっと見る。
…きっと怖がられるだろうな…
…まぁ、無事なら何よりだよな。。。

<リプレイ>

●闇夜に潜むもの
 辺りは暗闇で閉ざされている。既に夜は更け多くの人々が安穏な眠りについたであろう時間。
 夜独特の静寂が満ち……聞こえる音といえば、時折風によって木々が揺れる乾いた音くらいだろうか。
 そんな時間、通るものなど居ない暗い森の一本道に、エンドブレイカーたちは身を潜めていた。

「……俺達の方が強盗団より怪しそうだな」
 森の道を見つめながら、爪の魔獣戦士・アリカ(c04884)が呟く。暗い夜道に身を潜めている大男が居れば、それは確かに怪しいかも知れない。
 あまつさえ隣には、大鎌の星霊術士・ロクァリス(c03227)が居たりする。
 ロクァリスは背が小さい少女、アリカは背の大きい青年だ。誰がどう見ても怪しい組み合わせと言えよう。
 幸いな事に、今この場には他の人の目が無いので問題ないし、罠を設置しに来てる二人を除いて他のエンドブレイカーも居ないから良いのだが。
「あ、来ましたよ」
 ロクァリスの頭の上でうにゅんうにゅんと風にそよぐ一房の毛を眺めつつ、いや、しかし……この状況は、う〜ん……などと悩んでいるアリカをよそに、森の奥から歩いてくる一団を見つけたロクァリスが囁いたのだった。

 森の奥に光が見え始めた。
「いらっしゃいましたね」
 まだ小さくしか見えないその光を持つものに、アイスレイピアの星霊術士・サクラ(c01646)は鋭い視線を向ける。あの中に、今回の討伐対象である強盗団のボス……マスカレイドが居るのだろう。
「あいつらを倒して、絶対にハッピーエンドにしてやる!」
 小さい子供の幸せが奪われる未来など壊して見せると考えていたサクラの考えを代弁するかのように、トンファーの群竜士・クレア(c04016)は拳を握りしめる。
 思わずクレアへと顔を向けたサクラ、そんなサクラに少し小首をかしげるとクレアは気さくな笑顔を返す。
「アリカさんたちも戻ってきましたねぇ」
 二人のやり取りを戦闘前の緊張ほぐしとして、にこやかに見守っていた、ソードハープのデモニスタ・レーゼ(c03746)は彼女たちの向こう……道ではない森の暗闇から現れたアリカとロクァリスに気付く。
「罠は上手く設置できたかな?」
 軽く手を振り、ハンマーの城塞騎士・シェル(c02535)が話しかけるが、二人の表情は微妙だった。どうやら余り上手くはいかなかったようだ。
「にゃはははっ、気を取り直していこう!」
 上手くいかなかったものを引き摺っても仕方が無い、シェルはロクァリスの頭をぽんぽんと叩き、アリカの腹をゴスッと小突くと気楽に笑って見せた。
「さぁ、気を引き締めていくよ!」
 大剣の魔獣戦士・ラミア(c03718)たちと視線を交わしたクレアがレーゼたちを促すように声をかけると、エンドブレイカーたちは各々の得物を確認するように強く握り締めた。

●行く手を阻むもの
 徐々に足音は大きくなり、暗闇に潜むものを暴く明かりが木の陰に潜むエンドブレイカーたちの足元へと届く。
 その一団は手に明かりと様々な獲物を持ち、ふてぶてしいまでに悠然と道を歩いてくる。
 木の陰に隠れ、いよいよ光が自分たちの膝を照らすほどに大きくなったとき、剣の魔法剣士・セリカ(c00176)たちは木の陰から一斉に森の道へと躍り出た。
「止まれ! もうこれ以上の蛮行はやめるんだ!」
「なんだ……お前たちは?」
 自分達の行く手を阻むように現れたセリカたちを見て、先頭に居た禿げ頭の男が不可解そうに首をかしげる。
「無駄な抵抗はするな。大人しく捕まれば罪も多少は軽くなるぞ」
 そして大剣を構えながらラミアもセリカの言葉に続く。説得しても無駄だろうが、争わずに物事を解決できるならばと、わずかな希望を託したのだろう……しかし。
「ふはっ、はーはっはっはっは! 正義の味方の真似事かい? お譲ちゃんたち?」
 禿げ頭の男はさも愉快そうに大声を上げて笑い始めると、嘲るような視線をラミアに向け……今度は本当におかしくて仕方が無いと笑い声を上げる。
「説得は、無駄なようだな」
 腹を抱え、徐々に笑い声に狂気じみた色を帯びてくる禿げ頭の男に、大鎌のデモニスタ・ハデス(c00804)は不愉快そうな視線を向ける。
「お、お前たち、あんまり俺を笑わせないでくれ、あんまり笑っちまうと……殺したくなるだろう?」
 笑い声から一転し、殺したくなるだろう? と不意に低く唸るように呟いた瞬間、禿げ頭の男の醜く歪んだその顔に仮面が現れる。そしてありえないほどに左腕が膨張し、その先には強盗団の男たちが持つ光を反射して輝く刃物のような鋭い爪に変貌する。
 男がマスカレイドとしての本性を見せると、それまで自分たちのボスの様子を訝しげに伺っていた強盗団の男たちは驚きの声をあげ……蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。元々何かがおかしいと思っていたのか、逃げる機会を見計らっていたのか、見事なまでの逃げっぷりだ。
 明かりを放り投げて逃げる手下たちを見向きもせずにマスカレイドはハデスたちを見据え、その一つ一つが剣のように鋭く大きな爪をカチカチと鳴らすと、音もなくマスカレイドの左右に頭に仮面をつけた巨大な猫の姿をしたマスカレイドが現われた。
「まぁ……」
 そして、仮面の下に見える口元がニタリと歪み、放棄された明かりに照らされた黄色い乱杭歯が覗いて……。
「仕掛けてくるぞ!」
「どうせ皆殺しだけどなぁ!」
 少女の家がある方向へ手下たちが逃げていかないことを確認していたハデスが警告するのとほぼ同時に、マスカレイドが爪を振るった。

●切り裂くもの
 ガイン! と金属同士がぶつかる音がし、ラミアの腕から鮮血が滴る。右手に持った大剣で直撃を防いだものの、威力を完全に殺す事は出来ない。一瞬、痛みに眉をひそめたラミアへ好機とばかりに猫マスカレイドが飛び掛り、地面に押し倒す。そして続けざまに爪をラミアの顔面へと振るい、
「星霊スピカ、癒しを!」
 何とか首を捻って爪の一撃を避けたラミアだが、彼女の代わりとなった地面には大きな爪あとが刻まれていた。猫マスカレイドの下に居るラミアに、ハルバードの星霊術士・アイカ(c04458)が星霊スピカを放ち、スピカがラミアをなでなでしてペロペロするとラミアの傷口はふさがってゆく。
「お前の相手はこっちよ」
 さらにラミアに追撃をかけようとするもう一体の猫マスカレイドに、全体的な動きを見ていたシェルが渾身の力を込めてハンマーを振り下ろす。
 ハンマーは上手く頭に命中し、猫マスカレイドは一瞬足を止めるが……すぐに顔をシェルのほうへと向けると、頭を叩き潰さんと爪を打ち下ろしてくる。渾身の一撃、だがシェルは自分の顔よりも大きい猫マスカレイドの爪を正面から受け止める。
「さて、お相手をお願いしますね」
 片手を上げた状態で固定された猫マスカレイドの隙を逃すまいと、シェルの横を抜けるようにサクラは猫マスカレイドに踏み込みアイスレイピアを斬り付け前足の一つを凍結させる。
 そして真横からアリカは猫マスカレイドに飛び掛り左手につけた爪を大きく振り払うと、アリカの一撃は猫マスカレイドの頭部を深くえぐり……猫マスカレイドは苦痛に咆えるように上を仰ぐと、そのまま音もなく消滅した。

 アリカたちが相手にしていた猫マスカレイドが消滅した瞬間、もう一体の猫マスカレイドは消え行く相方の方へと顔を向けるが……。
「どこを……見ている?」
 その頭部に、魔獣化したラミアの手が喰らいつく。猫マスカレイドは真下からの攻撃に、首を振り回して慌てて飛びのき距離をとろうとするが、体勢を立て直したラミアはそれを許さず魔獣化した腕を振り回して猫マスカレイドの体を刻んでゆく。
 幾つもの傷をつけられながらも猫マスカレイドは横に跳ねてラミアの猛追を凌ぐ……そして、次の攻撃を行うべく身を低くして足に力をためようとするが、
「少しお仕置きが必要だろ?」
 そこへハデスが練り上げた強大な黒炎を打ち込んだ。攻撃に入ろうとしていた猫マスカレイドにこれを避ける術はなく……黒炎が猫マスカレイドの体を包み込むと、その体は火に焼かれた紙のようにあっさりと消滅した。

●砕かれたもの
 配下の猫マスカレイドの消滅に、強盗団のボスであったマスカレイドは舌打ちする。
「奪われる側の気持ちを教えてくれようぞ」
 皆殺しという言葉で何かが切れたのか、レーゼが相変わらずの笑顔のままで低く言い放ち、ソードハープを縦と横に続けざまに振るう。
「ひははは、何だこの小僧! てめぇの肉を刻ませろ! 俺を楽しませ、おぶっ!?」
 だがマスカレイドはそんなレーゼを小馬鹿にした笑い声を上げると、爪でレーゼの剣を弾き返す。しかし次の瞬間、弾いて甘くなった左脇腹に精神統一して狙い済ましたクレアの拳がめり込み、注意をそがれた右足にセリカの剣が打ち込まれた。
「くそぉ、痛てぇだろうが!」
「クレアさん、横です!」
 ロクァリスの警告とほぼ同時に、マスカレイドは腹を押さえながら怒りに任せて爪を振るう。横薙ぎの一閃は空気を切り裂き、肉を……骨を断つに十分な威力を持っているが、クレアは爪が顔に当たる寸前でトンファーで受け止める。
 だが、完全にその威力は殺せておらずクレアは横に吹き飛ばされ、地面と布がこすれる音を立てながらもんどりうつ。
 渾身の手ごたえにマスカレイドはニヤリと笑うが、それも一瞬の事。爪を振り払った格好のままのマスカレイドの足に横薙ぎに払ったレーゼのソードハープが命中し、ロクァリスがすぐさまクレアに星霊スピカを飛ばす。
 さらに猫マスカレイドを仕留めた、アイカたちがボスマスカレイドを取り囲むように攻撃に加わり、その体を刻んでゆく。
「ふ、ふざけるなぁ! この俺様がお前らごときに、ぐぁ!?」
 こうも取り囲まれてしまっては最早逃げ道も無い。マスカレイドは忙しなく周囲を見回し活路を見出そうとするが、その鳩尾に肘を付きたてられ、
「おい……顔は傷つけんじゃねえよ……」
 マスカレイドの懐深くに踏み込んだクレアが、マスカレイドだけに聞こえるような声で低く呟くと、さらに心臓に渾身の一撃を入れる。
「……ちくしょう! もっと……にくを……!」
 クレアの拳を受けて一歩、二歩と、マスカレイドは荒い息を上げながらフラフラと後ろへ下がり、何かを求めるように震える左手を突き出すが、
「曇った力に俺は負けん!」
 その手を掻い潜るようにセリカは踏み込むと、残像を伴う高速の突きでマスカレイドの体を貫いて……無数の穴をあけられたマスカレイドは、ぐらりと体を揺らすと仰向けに倒れるとそのまま動かなくなったのだった。

 ボスの顔から蒸発するように仮面が消える……マスカレイドの不滅の運命が砕かれたのだ。
 マスカレイドの脅威が払われた今、逃げた強盗団の部下たちも、いずれ捕まることだろう。
「終わり……ましたか」
 仮面が完全に消えるのを見届けた、サクラは肩の力を抜くように大きく息を吐くと、
「緊張しましたが、無事に終わってよかったです!」
 ロクァリスもほっとした様子で胸をなでおろし、同じく緊張していたのだろうか、ハデスも大きく息を吐き出して一息ついた様子だ。
 そんな二人の様子にサクラは目じりを下げ、暫し勝利の余韻に浸る。
 戦いの喧騒が終わり、再び静寂が森を包み込んでいる……こうしていると予定されていた悪い運命など夢であったかのようだ。
 少しの間静寂に耳を澄ました後に、森の先にあるであろう少女の家の方へと視線を向ける。何も知らない少女や、その家族を訪ねるわけにはいかない。だが、確かにその笑顔はエンドブレイカーによって護られたのだ。
「さぁ、帰ろう!」
 いつまでも余韻に浸るわけにもいかない、レーゼがいつもの笑顔で促すと一行は帰路へとついたのだった。
戻るTommy WalkerASH