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大蜘蛛に飲まれぬために

弓の狩猟者・ナターリア

<大蜘蛛に飲まれぬために>

■担当マスター:緋影あきら

 都市国家の下層域。
 ある寂れた建物の屋内に広がるのは、農地だ。
「そろそろ日が暮れるのう。今日の作業はここまでにしようか、ばあさんや」
 畑を耕していた手を止めて、老爺は天井を見上げた。天井の光は弱くなり始めており、それが夕暮れ時だということを示している。
「それじゃあ、私は先に戻って、夕飯の支度をしますね。おかずにする野菜を見繕って帰ってきてくださいな」
 声をかけられて、手を止めた老婆もつられるように天井を見上げてから、額に浮かぶ汗を肩に掛けた手拭いで拭った。
 手にしていた農具を片付けると、夕飯の準備に取り掛かるため、老爺より一足早く、家に向かう。
 農地を持つ家に住むのは老爺と老婆の2人だけ。
 野菜を育てるのは自給自足のためであるけれど、時には生活に必要なものと交換し、慎ましやかに暮らしていた。
 その日もいつもと変わりなく、畑を耕し、育った野菜の手入れをしている2人。
 不意に地面の揺れを感じたかと思えば、家の壁が壊れ、屋根が崩れ始めた。
「「う、うわあああぁぁぁっ!?」」
 叫び、逃げようとするけれど、逃げ場がない。
 壊れた壁の向こう側に広がっているのは街並みではなく、生き物の口内のようであったから。
 あっという間に家と共に老夫婦は飲み込まれてしまった。
 騒動の後、家のあった場所に佇む仮面をつけた大きな八つ脚の生き物――大蜘蛛型のマスカレイドによって。

「ある農地で、大きな蜘蛛型のマスカレイドによる事件が発生することが分かりました」
 都市へとやって来たばかりのエンドブレイカーたちが集まってくるのを確認した弓の狩猟者・ナターリアは、そう告げた。
「今回の討伐対象である蜘蛛型のマスカレイドだけに限りませんが、全体的に獣型のマスカレイドは知能が低い代わりに、魔獣のように高い戦闘力を持っています。遅れを取らないように、急いで向かってください。事件を未然に防ぎ、蜘蛛型のマスカレイドを始末して欲しいのです」
 蜘蛛型のマスカレイドについて、軽く説明を終えた後、ナターリアは彼女が見たというエンディングについて、詳細を話し始める。
「事件が起きるのは老夫婦の住む農地です。その農地の下の階層に巣食った地蜘蛛が、農作業中の老夫婦を家ごと飲み込むのです」
 地蜘蛛に飲み込まれてしまえば、2人の命はない。
「倒すには家を予め破壊する必要があるでしょう」
 けれど、老夫婦に事情を説明して避難を求めたところで、よそ者であるエンドブレイカーたちの話を彼らが信じるわけがない。
「老夫婦が出掛けた隙に家を破壊し地蜘蛛を誘き出し、退治してしまうことが最良ではないかと思います」
 地蜘蛛のテリトリーである地下に下りて戦うことが出来れば、家の破壊は免れるかもしれない。けれど、その方法では、地上に誘き出して戦うことに比べて、逃げられてしまう可能性が高いため、お勧めは出来ないとナターリアは言う。
「地蜘蛛は鋭い牙で噛み付いてくる直接攻撃と、糸を吐き出すことで捕らえた獲物を絞め殺す間接攻撃の2種類の攻撃パターンを持っているようです。獣型のマスカレイドはとても危険な相手です。けれど、皆さんが協力して戦えば、倒せない相手ではありません。必ず勝てます。皆さんの健闘をお祈りいたします」
 告げて、ナターリアは一礼した。

●マスターより

 初めまして、緋影あきら(ひかげ・−)と申します。
 集いしエンドブレイカーの皆様、当シナリオをご確認いただきありがとうございます。
 このシナリオを皮切りに、皆様へ多くのシナリオをお届けできたら、と思っております。どうぞよろしくお願いしますね。

 依頼に関してはオープニングに書きましたとおりです。
 どうか老夫婦を救ってくださいませ。
 皆様のご参加、お待ちしております。


<参加キャラクターリスト>


<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

● 弓のスカイランナー・ディーナ(c00728)
●事前準備

夫婦が出かけるまで近くの建物等の影に隠れ待機。夫婦が出かけてから、皆で一斉に振動を起こす。私はスカイキャリバーを地面に叩きつける

蜘蛛が出てこない場合、申し訳ないが家を破壊し蜘蛛をおびき寄せる

●戦闘

まず後衛から足を狙って蜘蛛の動きを封じる。弓射撃で蜘蛛の足に狙いを定め、逃走しない様にする

「お前は本能で生きているのだろうが、ここから逃走させるわけにはいかない。必ず私達が仕留める」

ある程度動きを鈍らせる事が出来たら、蜘蛛の牙攻撃をジャンプで避けつつ、前衛に立ちスカイキャリバーでの攻撃に切り替えて蜘蛛に攻撃をする

蜘蛛の糸に絡まってしまった仲間がいたら、蜘蛛の前に飛び入って自分に注意を向ける

「おいこっちだ。私についてくるがいいさ!」

GUTSが半分まで減ってきたら、後衛に下がり弓での攻撃に切り替える

●戦闘後

夫婦が戻ってきたら、偶然通りかかった旅人を装い、壊れた家からの家財の運び出し等を手伝う

● ハルバードの城塞騎士・アルマ(c01264)
■心境
いたいけな老夫婦を食おうってのは中々いけ好かないな。
罪もねぇ老夫婦を見殺しにする理由は、ないよな?

■戦闘前
とりあえず、爺さん婆さんの家の近くで他の奴らと待機かな。
二人が出かけたら行動開始。

オレガのハンマーで地面を揺らしてもらって様子見。
「さぁて、釣れるか?」

出てこなかったら家の破壊。
爺さん婆さんには悪いが仕方ねぇな。


■戦闘
俺の役目は前衛。
蜘蛛が出てきたらハルバートを構えて気合入れるか。
「よぉ、食事の前って軽く運動したほうが良いんだぜ?相手してやるからかかってきな!」

他のメンバーに合わせて脚をぶっ壊す。
逃げられねぇようにしないとな。
疾風突きで速攻かけさせてもらうぜ!

蜘蛛が激しく抵抗するようならディフェンスブレイドで
ガード固めつつ攻撃って感じかな。

とりあえず後衛のメンバーが危なかったらかばう感じで。


■戦闘後

「さぁて、どうすっかねぇ」

家が壊れてるなら老夫婦の帰りを待って家財の掘り出しだな。

● ハンマーの魔獣戦士・オレガ(c01708)
爺さん達が出かけるのを待つしかネエだろうから、朝から張り込むぜ。
二人して出かけたらチャンス。
家から20mほど離れたあたりで地面をハンマーでぶったたく。
振動で大蜘蛛を誘い出す作戦だ。
何度か叩いてみて現れないようなら仕方ネエ、家を破壊する作戦に変更だ。
壁の薄そうなところをハンマーでぶん殴ってみるぜ

【戦闘】
蜘蛛野郎が現れたら、基本ハンマーで攻撃だパワースマッシュで足を狙うぜ。
反撃を受けたらビーストクラッシュも併用だ。ドレイン決まれば回復できるしな。
ガッツが尽きそうなら下がってビーストクラッシュで薄そうな腹狙いに変更だ。
メンバーの半数が戦闘不能なら撤退するぜ
最悪爺さん達は助かるしな。

【戦闘後】
無事倒せたら爺さん達のフォローに回る。
蜘蛛の死体が残るなら、たまたま暴れてるところを目撃したので倒したと言い訳しとくぜ。
残らないなら、家が無事な場合はそのまま立ち去っちまおう。
壊れてんなら復旧を手伝うさ

● 杖のデモニスタ・ヨル(c02177)
■目的
哀しいエンディングを壊したい。

■心境
敵を倒すには家を壊さなきゃいけないなんて……。
僕は生まれた家のこと憶えて無いけど、そこで暮らして来た人にとってはきっと思い出のある大切な場所なんだよね。
出来れば壊さずに何とかしてあげたいな。

■行動
2人が遠くへ出掛けるのを見計らって作戦開始。
まずは地面に攻撃して蜘蛛が振動に反応して出て来るかどうかを試してみて、無理なら家を壊して誘き出すよ。
事後処理とかの事も考えると、焦らない程度に急ぐように心掛けなくちゃ。

■戦闘
後衛側でアビリティ攻撃中心。
蜘蛛が地上に出て来たら、移動手段を断つ為にまず足を狙い撃ち。
間接攻撃の糸に注意しながら、僕以外の人が攻撃されたらフォロー出来るように、皆との連携を意識するね。

■戦闘後
家を壊さないと駄目だった場合は、音に驚いて見に来た振りをして家財道具等を掘り出すのを手伝うよ。
被害が大きくないなら、直せる所は手早く直して退去、かな。

● 剣の魔獣戦士・クライブ(c03038)
【戦闘】
 前衛に出て蜘蛛の攻撃を受けながら体力がもつ限り 攻撃する。   
 足元狙いも意識する。
【家屋について】
 家から離れた所の地面に衝撃を加えるのを手助け。
 何も出て来なかったら家を破壊する。
 

● 弓のスカイランナー・カゼマ(c03097)
・心情
絶対成功してみせる!

・作戦
時間があれば、夫婦の予定を調査し、いない時間に戦闘を実行するようにみんなと調整
不可であれば、夫婦が出かけるのを待ちます。
出るのを見かけたら尾行し、時間がかかりそうか否か判断。数時間は大丈夫そうなら、作戦決行と相談
出かける気配がなく拙い状況になったらは強盗のフリして、離れた倉庫にでも閉じ込めます。
家の外で振動を起こす→蜘蛛が出てくればそのまま、出てこなければ家を破壊して誘い出し、戦闘
壊れ物など多少持ち出せれば持ち出します(作戦優先で)

・戦闘
通常は後衛で弓アビで攻撃
前衛がケガ・回復のため下がる様子があれば、そこをうめて前にでて前衛に回り前衛アビ使用して攻撃
基本足をメインに攻撃。効果がなければ意識せず攻撃に変更
むちゃしても蜘蛛を倒すこと優先し体張ります

・戦闘後
夫婦が帰ってきたら、傍観者のふりして慰め
手伝える事があれば、お手伝い
強盗のフリをした際は、離れて傍観

● 爪の魔獣戦士・ムカデ(c03455)
元気な子供っぽく外で遊んでる雰囲気出して
夫婦の様子を見る。
物々交換ナラ野菜多く持ち出スカラ、
ジーサンバーサンが準備し始めたらソロソロ出カケルンジャ無イカと皆に伝える
夫婦が家から離れたら

家を壊さない方向でガンバル
家の階層振動起こすには
ミンナで力合わせたら何トカナルヨナ。
バラバラに殴っても効果ウスソウだし
セーノで息を合ワセテはどうだ?
息を合わせて地面を攻撃して揺する。

効果がなければ。
家壊し始めるか?ミンナに伺い壊す
出来る限り修復し易く心がけて壊すゾ

土蜘蛛が出たら
前衛で行動。
左右の足どちらかを中心的に狙うとバランス崩れてイイかもな。
とりあえず。ダメージ与えることに専念。
攻撃してきた時などは殴りヤスソウダ。

知能は低イソウダシ。
逃げにくい場所に追い込むよう心がける

チャンスがあれば沢山足あるが。ダメージの大きそうな足を攻撃スル

蜘蛛が弱ったら逃がさないように出入り口は背にし戦う
孤立しないように気を付ける

● 弓の狩猟者・リオ(c03983)
【作戦】
家の近くで隠れて待機、老夫婦が出かけある程度遠くへ行ったと確認後、行動開始。
家の近くで仲間が振動を起こし、大蜘蛛のマスカレイド(以下、大蜘蛛)が出てきたら仲間に合わせ戦闘開始,出てこなかったら家をある程度壊し大蜘蛛を誘い出し戦闘開始。
【戦闘】
後衛。少し離れた距離&ロゼットの回復範囲で大蜘蛛を攻撃。
部位攻撃、大蜘蛛の脚を狙い大蜘蛛の行動を抑える。
アビリティは「弓射撃」≦「ファルコンスピリット」で使用。
逃げられない程度に抑えられたら「弓射撃」「ファルコンスピリット」交互で頭狙い
大蜘蛛の正面に立つことと攻撃は出来る限り避けるつもりだ。
【説明】
家破壊した場合:戻って来た老夫婦に「理由は知らないが音が聞こえたのでかけつけた」こととする。大丈夫か聞き、家具の運び出しや新住居探しなど何か必要あれば手伝う。
家を壊さなかった場合:大蜘蛛は倒した後、穴が開いていたら、埋めるなど…仲間に合わせ手伝う。

● 槍の魔曲使い・ラスティア(c04604)
【作戦】
夫婦の家の近くに潜み待機、屋外へ出ていくのを確認した後
蜘蛛マスカレイド(以下、蜘蛛)を誘い出して退治します。
まず家の外で振動を起こして蜘蛛が現れるかを試し、出てこないならば家の一部を破壊。
すぐに戦闘に移れるよう、あらかじめ前衛後衛に分かれます。

【戦闘】
必要に応じて後方に下がる場合は「誘惑魔曲」も使用しますが
可能な限り前衛に立ち「疾風突き」を使用して戦います。
逃げられないよう蜘蛛の足から攻撃を。
さりげなく見回して状況を把握、攻撃を受け動けない仲間は積極的にフォローします。
GUTSの低下が著しい時は後方で精霊術士の方に回復をお願いします。

【事後処理】
家が壊れている場合は、崩れた時の音が聞こえてやってきた通りすがりを装い、
家財を掘り起こすのを手伝います。
家は二人の意向に沿って建て直しなり家探しなりの手助けをします。
壊れていないのなら、見つからないよう戦闘後すぐにその場を立ち去ることにします。

● 杖の星霊術士・ロゼット(c05177)
【作戦】
老夫婦がある程度離れた場所へ出かけたのを確認後、家の近くで地面を叩き振動を与える
それで蜘蛛が現れなければ家を破壊する

【戦闘】
後衛として行動
すぐに回復のフォローが出来るように味方が射程内に居るように位置取りする
ダメージが大きい人が居れば星霊スピカを使用
その必要が無い場合はマジックミサイルでの遠距離攻撃
敵の攻撃に合わせて放ち、少しでも味方への攻撃の妨害を狙う

逃走を警戒し、可能であれば蜘蛛を現れた場所から離し、そこから逃げる事を防ぐ
また足など狙い機動力を落とす事を可能なら狙う

【戦後フォロー】
戦闘後の傷を負った状態は不自然かもしれないので、味方の回復をする
また武器など持ってるのが不自然なら仕舞うことも検討
家を破壊した場合は老夫婦に何かが崩れる音がして様子を見に来たと言う
その後に可能なら家の片付けなどを手伝う

<リプレイ>

●大蜘蛛を誘き出せ
 地蜘蛛に飲まれてしまうという家の近くの物陰に、話を聞き、集ったエンドブレイカーたちが隠れていた。
「爺さんたちまだ出かけねえか……? ジットしてるのは性にあわねえんだが……」
 ハンマーの魔獣戦士・オレガ(c01708)は呟き、そっと顔を出して、様子をうかがう。
 丁度、家の扉が開き、老夫婦が出てきた。抱えていた野菜を荷車に載せると、老爺がその荷車を引き、老婆が押して、出掛けていく。
「おでかけですね。ちくっと自分、尾行してきます」
 弓のスカイランナー・カゼマ(c03097)はそう言うと、物陰に隠れながら老夫婦の後を追った。
「日用品の交換にでも出掛けたんでしょう。暫くは戻りそうにないですよ」
「今のうちに誘き出そう」
 戻ってきたカゼマの言葉を聞き、弓のスカイランナー・ディーナ(c00728)が仲間たちの方を見回して、告げる。
 仲間たちは頷きあうと、老夫婦の家へと近付いていく。
「さぁて、釣れるか?」
「さあな。だが、これで出てきてくれるなら破壊しないで済むんだが」
 家から少しばかり離れたところで歩みを止め、オレガがハンマーを構えると、ハルバードの城塞騎士・アルマ(c01264)は呟いた。
「セーノで息を合ワセテはどうだ?」
 バラバラに振動を与えるより、合わせた方がより大きな振動になるだろうと、爪の魔獣戦士・ムカデ(c03455)が言う。
「セーノ!」
 オレガやディーナが同意して頷くのを確認して、それぞれ構えると、ムカデが声を上げた。
 ディーナは高く飛び上がり、急降下して地面へと振動を与える。
 オレガはハンマーを叩き付けた。
 振動を与えた後、暫し待ってみるけれど、何も現れる気配はない。
 何度か地面へと振動を与えることを繰り返すけれど、やはり何も出てくることはないようだ。
「爺さん婆さんには悪いが仕方ねぇな」
 家を破壊しないと大蜘蛛が現れないのであれば、やはり壊すしかない。
「壊してしまうのか? 老夫婦の住むところがなくなってしまうのではないか?」
 剣の魔獣戦士・クライブ(c03038)が眉を寄せて、告げた。
 壊さねばならなくても、いざそうなると罪悪感が出てしまうのだ。
「それでも、仕方がないんだ」
 ディーナが彼の目を見て、答える。彼女にも申し訳ない気持ちはある。それでも、老夫婦が大蜘蛛に飲み込まれてしまうというエンディングを起こしてしまわないために、破壊する必要があるのなら、そうするしかないのだ。
「そうか……」
 嫌がりはするものの止めるほどのことはしない。クライブは目を伏せながら、応えた。
 破壊のしやすそうな壁の薄いところを狙って、オレガのハンマーが振るわれる。
 都市の下層域であることもあってか、建物そのものは古い。
 一撃で、土壁はガラガラと音を立てて、崩れていく。
 壁を壊すだけでは現れる気配がない。
 次に、オレガは床を打ちつけた。床に大きな穴が開く。
 床下で、何かが動いたかと思うと、周りの床や壁を益々壊しながら、大きな蜘蛛が現れた。

●這い出る大蜘蛛
「キシャーッ!」
 這い出てきた大蜘蛛に向け、ムカデが威嚇の声を上げる。
 その声に気づいてか、大蜘蛛はムカデを初めとするエンドブレイカーたちが居る方に向かって、駆け寄ってきた。
 鋭い牙が光る大きな口を開け、大蜘蛛はムカデへと噛み付く。
「ウガァッ」
 痛みにムカデは声を上げた。
「外骨格が硬そうだが、ハンマーにゃ関係ねえ。中身を砕いてジュースにしてやるぜ!」
 ムカデへと噛み付いている隙に、脚の方へと回りこんだオレガは、ハンマーの先で突く。すぐさま持ち手を変え、大きく振り上げると、力強く叩き付けた。
 受けた痛みから、大蜘蛛は少しばかり後退し、エンドブレイカーたちと距離を取る。
「よぉ、食事の前って軽く運動したほうが良いんだぜ? 相手してやるからかかってきな!」
 取られた距離を詰めながら、ハルバードを構え気合を入れるのはアルマだ。強大な相手を前に、口元には笑みが浮かんでいる様子。素早く踏み込んだかと思えば、脚の1つを串刺しにする。
「ギシャアアアアッ!!!」
 痛みに大蜘蛛は叫び、突き刺された脚の前後の脚をばたつかせて、悶えた。
 脚を狙うことを意識しながら、クライブは剣を構える。振り下ろした剣を素早く横に薙ぐ、剣の軌跡は十字を描いた。
 蜘蛛の脚が1つ斬られて、地面へと落ちる。
「キーキー。おっきな蜘蛛もウマソウダ」
 噛まれた痛みも何のその。姿勢を低く保ったままジグザグに走るムカデは、蜘蛛との距離を詰めた。その脚へと飛び乗ると、手の甲に取り付けた鉤爪で、横へと引き裂く。
 痛みから大蜘蛛は脚を振るい、飛び乗ったムカデを振り落とした。
「さて。……行きましょうか」
 槍の魔曲使い・ラスティア(c04604)は仲間たちと見回す。大蜘蛛からの攻撃により動けない仲間は今のところ居ない。
 それを確認してから槍を構えると、素早く踏み込んで、大蜘蛛との距離を詰めた。
「疾風突き!」
 疾風の如き速く。蜘蛛の脚を突いては離し、離しては突き。ラスティアは連続した攻撃を与えていく。
「ギシャシャッ!!」
 叫びながら、大蜘蛛は口から糸を吐き出した。
 吐き出された糸はオレガへと向かい、その身を絞めつける。
「くっ!」
 絞めつけられ、苦しさに顔を歪めるオレガ。
「てめえ、俺様を怒らせたな!?」
 声を上げる彼の左腕が獣のものへと変化していく。
「喰らい付け!」
 絞めつけていた糸を振り切って、オレガの左腕が大蜘蛛の腹部へと突き出される。獣の爪が腹部へと痛みを与えると共に、オレガの受けた痛みが和らいだ。

●身体も狙っていけ
 脚が傷つくことで、大蜘蛛の動きが鈍ってくる。
 前衛の皆が大蜘蛛を取り囲むその後ろから、杖のデモニスタ・ヨル(c02177)は拳から黒き炎を撃ち出した。蜘蛛へと向かう途中、炎は黒から紫へと変わり、痛みを与えるだけでなく、その身を炎で包み込む。
「攻撃術式展開……発射」
 杖の星霊術士・ロゼット(c05177)の掲げた杖の先が光り、結界陣が展開される。狙いを定めた彼女が呟くように口にすると、連続して3本の、魔法により作り出された矢が放たれた。
 矢はそれぞれ、蜘蛛の腹部へと突き刺さる。
「必ず私達が仕留める」
 ディーナは脚を狙っていた手を止めると、天高く飛び上がる。回転しながら降下してきた彼女は、大蜘蛛の腹部へと頭突きを喰らわせた。
「あたれ! あたれ!」
 声を上げながら弓を射るカゼマ。その矢は蜘蛛の脚へ、腹部へと痛みを与える。
(「老夫婦を……死なせるわけには、いかない……絶対に……」)
 弓の狩猟者・リオ(c03983)が呼び出すのは、鷹のスピリットだ。鷹は上空で旋回すると、急降下してきてクチバシで蜘蛛の腹部を突く。
「ギッシャアアアッ!!」
 皆から痛みを受け、大蜘蛛は叫ぶ。
 大きく口を開けると、糸を吐き出した。吐き出された糸は、ヨルとディーナの2人へと襲い掛かる。
「くっ!」
「あぁっ!」
 絞めつけられて、2人は声を漏らした。
「その程度の傷なら大丈夫です……私が居ますから」
 ロゼットに呼び出された星霊スピカが、ヨルへと近付いて、その頬を舐める。絞めつけが和らいでいき、ヨルはほぅっと息をついた。
 更に、星霊スピカはディーナにも近付いていき、頬を舐めた。ディーナを絞めつける糸も緩んでいく。
「ありがとう」
 ヨルはロゼットに告げてから、杖を構え直す。杖の先に集まった光が3本の矢を作り出し、放たれた。更に5本もの矢も放たれ、大蜘蛛へと吸い込まれるように向かっていく。
 ディーナは高く飛び上がると、回転しながら大蜘蛛に向かって降下していき、一撃を与える。カゼマが放つ弓も連続して腹部へと当たった。
 リオの呼び出した鷹が、高いところから急降下していく。クチバシで突付くと共に、翼で切り裂いた。
「ギシャオオオオオゥッ!!!」
 痛みに蜘蛛は声を上げ、ゆっくりと地へ崩れ落ちた。
「ごめんね、どうか安らかに……」
 伏した大蜘蛛に向かって、リオが小さく呟く。
「いやっはーーーー。自分たち、なかなかいけるじゃないですか!」
 カゼマが跳ねたかと思うと、傍に居たヨルに抱きついた。
「え、あ、は、はい……」
 いきなりのことにヨルはおどおどしながら応えるけれど、応え終わらないうちにカゼマは他の仲間たちへも抱きついて回っていた。

●崩れた家は……
「討伐完了ですね……皆さん、お疲れ様でした」
 ロゼットが怪我をした皆に、回復を施していく。
 そうしているうちに遠くに、老夫婦が帰って来ているのが見えた。
「ああ、これはどうしたことだ!?」
「大きな地蜘蛛が出てきたようですね……亡くなっているようですけれど」
 壁が崩れ、床に大穴が空いた家を前に、老爺が驚き、空いた穴の傍に倒れている大蜘蛛の死骸に老婆が呟く。
「暴れてたところ、たまたま通りかかったんで倒したんだ」
 死骸が残っている以上、音を聞きつけたから駆けつけただけでは済まされない。
 オレガがそう言いながら、老夫婦の前に進み出た。
「そうかい。壊されたのが一部だけで済んだだけ、ありがたい」
 老爺が頷きながら、壊れた辺りを見て、答える。
「引っ越すのなら、家探しから、家財道具の運び出しまで手伝おう」
「いいえ。これくらいなら、修理すれば済むでしょう」
 ディーナの進言に、老婆は首を横へと振った。
「じゃあ、手伝うぜ」
「お手伝いさせてください」
 オレガやラスティアがそう告げれば、老夫婦は頷いた。
 完全に修理をし直すには職人の手が入った方がいいだろうから、その場しのぎで大丈夫だという老夫婦の意向のもと、床と壁を簡単に修理する。
 喜んだ老夫婦に見送られ、エンドブレイカーたちは帰路に着くのであった。
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