<不良グループを追え>
■担当マスター:湯豆腐
●それは近い未来「ママー、ほら、いろんな色のにわとりさんがいるよー?」
「しっ! 見ちゃいけません!」
穏やかな昼下がり。
ちょっとそこまで、と、街道から少しはずれた小道を散歩していた母娘。
娘が指したその先には、なるほど、確かにカラフルなにわとり……というか、髪をツンツンに立てた不良グループがたむろしている。
娘に悪気がないのは当然だ。
しかし。
「あ? 誰を見ちゃいけねえだって!? っざけやがって!! そんなくだらねえこと言いやがる人間はこの世に必要ねえんだよ!!」
それは彼らにとって何の関係もない。
あるのは、正義の鉄槌と言う名の……ただ一つの殺戮の衝動。
「……逃げ」
絞り出すように、小さく発せられた声。
しかしその声は、旋風に巻き上げられる落ち葉の音にかき消され、誰かの耳に届くことはなかった。
●近い未来の少し前
「近々マスカレイドに殺害される人物がいるわ。その人物の特定はできていないんだけれど……でも、この起こりうるエンディングを破壊するために、皆さんの助けが必要なの」
酒場の扉を開け、そう告げる剣の城塞騎士・フローラ。
フローラの表情から、それが急を要することは一目瞭然である。
「不良グループのボス、その手下何人かがマスカレイド。彼らは『正義の鉄槌』と称して、自分達を注意したおじいさんや、自分達を見て『あんな人見ちゃいけません』と子供に耳打ちしたお母さんなどを集団で襲って殴り殺しているわ」
悲痛な面持ちで小さな息を吐く。
その凶行を止める為とはいえ、既に起こってしまったことを考えると、やはり辛い。
しかしそうも言ってはいられない。
「実は彼らの縄張りは、わかっているの。街道から少しはずれた小道から、その先にある滝まで。ただ、彼らが誰か、とまではわからないわ。だから皆さんにはその縄張りの中で、片っ端からそれっぽい人達に口やかましく注意をして、次のターゲットが自分たちになるよう仕向けた上で、返り討ちにしてほしいの」
そこで、大きな息を一つ。
「……危険な仕事になるかもしれないけれど、マスカレイドが引き起こす悲劇を止めるため、皆さんの力を貸して? あ、でも、ターゲットはあくまでマスカレイドであって、そうではない人間もいるわ。その人達の命はできるだけとらないようにしてもらえると嬉しいんだけど……」
そして深々と礼をすると、フローラは最後に「よろしく、ね」とだけ付け加えた。
●マスターよりはじめまして、湯豆腐と申します。この度は、「エンドブレイカー!」のシナリオに参加いただきありがとうございます。 さて、フローラの情報を纏めると以下のようになります。 1.近々、マスカレイドに殺される人物がいる(オープニングでは母娘としていますが、実際皆さんが依頼を受けた時には誰が殺されるのかわかっていません) 2.不良グループのボス、手下何人かがマスカレイド 3.縄張りの中でそれっぽい人達に口やかましく注意をして、おびき寄せた上で返り討ちにする 4.一般人はなるべく殺さない また、湯豆腐からの情報としては、 1.不良グループのボス、手下がマスカレイド化すると、拳が鉄のように硬くなり、その拳を振り回しながらなりふり構わず殴りかかってくる 2.フェイントなどは特になく、ストレートに攻撃してくる 3.縄張りには、それっぽい人達が割といるので、手当たり次第に口やかましく注意する必要がある となります。 以上です。 それでは皆様の参加、お待ちしております。 |
<参加キャラクターリスト>
● 鞭の魔法剣士・ア(c01635)
● 鞭の魔法剣士・ミーシャ(c01637)
● ナイフのスカイランナー・ビヘイビア(c01731)
● 大剣の城塞騎士・リィナ(c01845)
● 暗殺シューズのスカイランナー・エリステル(c02175)
● 杖のデモニスタ・ヒース(c02449)
● アックスソードの魔獣戦士・ソウシ(c02860)
● 弓の狩猟者・マデリル(c03849)
● エアシューズのスカイランナー・アルト(c04129)
<プレイング>
● 太刀の狩猟者・ゼソラ(c00451)
斬捨御免☆モヒ狩り隊として行動なのですよ、ええ
アルト君とビヘイビアさんと御一緒して街を徘徊(巡回)ですねい
モヒに限らず駄目っぽい人とか残念な人とか片っ端から喧嘩を売ります
目が合ったら殴る的なノリで
え?やりすぎ?
ぢゃあ、仕方ないですね
モヒだけ狩りますか
峰打ちなら多分きっと大丈夫
倒した後はヒースさん作のビラを顔に張って転がしておきましょう
数が三人以上なら合流予定の滝まで誘導ですかねぇ
大人しくファルコンスピリットを上空へ放ちつつ移動になるかと
若しくは大人しくせず、笑顔でモヒに近づいて股間蹴り上げてから逃走しつつ上空にファルコンですかね
きっと頭の良いファルコンの筈なので皆を呼びに行ってくれる事でしょう
本命に当たった時は滝まで誘導する事を目標として、挑発しまくってワザと派手に避けたりしながら引っ張りましょう
戦闘時は敵との距離でアビリティの遠近を使い分けて皆さんの援護です
敵の攻撃は武器で受け流す方向で
● 鞭の魔法剣士・ア(c01635)
ヒース&ソウシと同じ親切の押し売り班、またの名をウザ班。
おじさんはあれだ、なんかヒースがやってるの後ろで見ながら、
仮面の下で死んだ魚の目と心の中で鼻ほじピッしながら、
ダルそ〜に慈善ぶってるよ、うん。
「つかよ、おじさんあれくらいの頃、むしろモヒたち側だった気すんわ……」
おじさん基本ヤル気無い駄目大人なんでビラがあるならビラくしゃっと丸めてポイしちゃおかな、モヒの方に。
「あれ?わりぃわりぃ、おじさんキミらニワトリかと思って投げちゃったよ」
まぁ何にしても作戦通り誘導しなきゃな……。
あ、一般人が襲われそうな時も上記と同じくポイ捨てで注意引くな。
戦闘?
うん、まぁ遠慮無くアビで攻撃するよ。
たぶん鞭が不規則に縦横無尽な感じでアレがアレしてアレな感じなんじゃねーかな?
「おじさんメンドクサイのヤだから手加減しねーぞ?」
つってもまぁ一般人モヒは逃げたら追わねーよ。マスなモヒはアレだ、逃がすわきゃねーだろ。
● 鞭の魔法剣士・ミーシャ(c01637)
●行動
【真面目に注意班】
小道〜滝まで、モヒカン達を一方的に注意し去る。反論されても無視。これを滝まで繰り返す。
途中で襲われた場合、急ぎ滝まで逃走。
その際、予め用意していた笛を吹き鳴らし他班への合図とする。
同様に他班の合図を確認したら直ぐに滝へと向かう。
●戦闘
◆対手下
まず手下のマスカレイドを残像剣を使い全力で叩く。
プラスワンの効果が出た場合、他の手下マスカレイドを狙う。
一体以上倒し、一般モヒカンが未だ残っていた場合
「ここで引くか、続けるか選べ!もし残ると言うのならば、諸君達もここに転がっている者と同じ末路を辿る事になるぞ」
と撤退を促す。敵対的な行動を取るならば残像剣にて攻撃。但し止めは刺さないように心掛ける。
◆対ボス
先ず、捕縛撃にて腕絡みを狙う。
その後もより高い威力が狙える捕縛撃にて攻撃。
相手は単純な攻撃しかして来ないようなので、自分の間合いを保ち、相手の攻撃を良く見て回避するよう心がける。
● ナイフのスカイランナー・ビヘイビア(c01731)
ヒースさん配布の『腕章』着用。
不良への声掛けはゼソラ・アルトと共に。チーム名【モヒ狩り隊】
縄張りに入ったら、それっぽい人に小ばかにした態度で挑発。
「人に指さされたくらいでトサカにきちゃうチキン野郎は、あなたかしら?」
迷惑してるのよねーと言葉責め、不良たちのナイーブなハートをえぐるように蔑んだ目も忘れずに。
不良たちが挑発に乗ったらチラシをみせつつ「ちょっと滝までツラ貸してくださる?」と誘導。
その場でマスカレイドだと分かった場合は、ゼソラさんに伝達を頼む。
戦闘はナイフの切り裂きを主に。
迎撃の構えが決まったらマスカレイドの前に立ち防御して、反撃を狙う。
回復役がいないから、早めに方をつけたいわ!
ちょっと危険でもガシガシ攻めるわねー。
一般の不良は殺さない。
戦闘が終わったら、不良に説得を試みる。
マスカレイドを魔物と言い換え
「こんなことした後でアレだけど、あなたには『魔物』になってもらいたく無いのよ」
● 大剣の城塞騎士・リィナ(c01845)
真面目に注意する班に参加。
不良たちに注意をして怒らせ、滝へ誘導する。
最初は真面目に注意をするが、もし乗ってこなかった場合は挑発する。
その場で攻撃された場合でも反撃せずに逃げながら滝への誘導を優先する。
滝に誘導して仲間と合流したら戦闘を開始する。
マスカレイドに対してはディフェンスブレイドを中心に使い、チャンスでワイルドスイングを使用する。
一般人は見分けが付いたなら、大剣の腹や柄で殴って気絶させる。
見分けが付かなかったり、手加減ができない相手だった場合は普通に闘いながらもできるだけ殺さないように注意する。
■誘導用の台詞
最初の注意
「そんな格好でたむろして、少しは恥ずかしいという気持ちは無いのか?働くなり勉学に励むなりやる事は沢山あると思うが。」
挑発交じり
「しかし、女にここまで言われて何もしないというのは情けないな。所詮は口だけという事か。」
逃走の際(必要なら)
「どうした?女に追いつけないのか?」
● 暗殺シューズのスカイランナー・エリステル(c02175)
【事前】
真面目に注意する班に所属。マデリル、ミーシャ、リィナの三名に追随するよ。
わたしたちはそこら中にいる不良を真面目に注意。あくまでも真面目に。
マスカレイドが現れたら、スカイランナーの身軽さを活かしつつ誘導しながら滝へ。
数が多かった場合にはヒース製のビラを渡して集合場所の滝へ移動。
但し数が少なく、マスカレイドが確実にいない場合はその場で説教して黙らせる。
滝に集まった際、当たりが出ておらず集まっていたらまとめて説教。
矛盾があれば、他の方の行動に従うかな。
【戦闘】
中衛に立ちソニックウェーブで遠距離主体にしつつ、後衛へ突っ込んでくる敵がいた場合はそちらを優先して攻撃。
また、敵が少なくなった場合は前に移動し他の前衛の人と共に近距離戦をメインにする。
● 杖のデモニスタ・ヒース(c02449)
ぼく等ヒース/ア・トゥ/ソウシの「親切の押し売り」班は
怪しい慈善団体を装い、腕章つけてビラ撒きして
モヒカン達をガンガン注意しましょう。
『滝に打たれて心頭滅却、毎夕5時からやってます』
「君も腐ったミカンになる前に!ご一緒にどうですかぁ!?」
兎に角ウザく!一般人もどん引きして縄張りに近づかない様に
…って、素じゃありません囮です!
という事で、その場でマスカレイドが襲ってきたら
マジックミサイルで狼煙を上げて皆に知らせます。
誘導・戦闘はア・トゥとソウシに任せry。
囮作戦で滝に不良が集まれば、彼等のボスがマスカレイドか…
…番長を挑発なんて危険は「真面目に注意」班の女の子に任せry。
って、これも戦闘時に只のモヒカンさんが
逃げられる様に後方援護する為です!
…何故か信じてもらえませんが、ぼくは出来るだけ
マスカレイドの被害を抑えたいんです。
よってぼくの仕事は『囮役と戦闘の後方支援』。
後は皆さんを信頼してます。
● アックスソードの魔獣戦士・ソウシ(c02860)
「親切押し売り」班
ヒースさんの手作り腕章をつけてビラ撒きですぅ♪
ビラ撒き中はモヒカンさん達に向けて可哀想な物を見る様な、生暖かい視線で見つめてあげましょう♪
気付かれたら笑顔で優しく話しかけ。ソウシ、そういう優しさ持ち合わせてますぅ♪
「貴方がたに足りないのは愛を貫けるだけの勇気ですぅ、それを養うなら激流に打たれて己を知ること。さぁさぁ踏み出すなら今、今ですぅ」
当たりがなければ【滝】まで移動しつつ、同じことを繰り返し。
その場でマスカレイドが発覚すれば【滝】まで誘導するように戦闘。
「あらあら、足が遅いですぅ♪捕まえてごらんなさーい♪」
大声で他の班に届くように。ソウシ別に挑発してるつもりはないですぅ。
『ビーストクラッシュ』と『十字剣』を交互に使用、
遠距離タイプの方々に攻撃が当たらないよう、こちらに注意をひきつけ。
一般モヒカンさんは後追いせず、マスカレイドを集中攻撃、彼らは絶対に逃がしませんですぅ♪
● 弓の狩猟者・マデリル(c03849)
リィナ様、ミーシャ様、エリステル様とご一緒に不良様に口やかましく注意いたしますわ
「まぁ、歪んだ根性の色が染み出たようなド紫色のとさかですわ」
「そのお姿が悪いとは…。ただ、そんな貧弱な体格だとみすぼらしいというか、周囲の目の毒というか…」
あら?お怒りになられました?
そういう時はこれですわ!
めいど・おぶ・ヒース様のビラをばばーんと出して、夕方に滝に来て頂くようご案内致します
「私達こちらに参加いたしますので、決着はその時にいたしましょう」
マスカレイドを釣れないと意味ありませんし、お頭をお連れ下さるよう念を押しますわ
他班で当たりの合図が来ましたら、そちらに急行ですわね
■滝
戦闘は遠距離からファルコンスピリット主体に
一般人な方々は不殺徹底
マスカレイドには容赦なく
戦闘後、一般人の方々はこれを機に更正の道を歩むよう願いますわ
「皆様、素敵なマッ…殿方になってくださいませね〜」
マッチョなんて言ってませんわよ?
● エアシューズのスカイランナー・アルト(c04129)
ナイフのスカイランナー・ビヘイビア(c01731)、太刀の狩猟者・ゼソラ(c00451)と共に<インネン吹っかけ班>として、行動をする
不良グループとは、インネンを吹っかけた後で戦闘開始。一般人を殺さないという条件に従って、マスカレイドにまぎれている一般人にはそれなりに手を抜いて、気絶してもらう
マスカレイドと一般人を見分けるために、はじめは手を抜いてアビリティで攻撃する
不良グループの人数が多くなると「ちょっとこっちに来てくれねぇか?」とでもいい、不良グループの一員になりすまして仲間との合流場所【滝】へ誘導する
仲間との合流後は、仲間と共に不良グループを倒す
<リプレイ>
●エンドなブレイカー達春うらら、といった季節には程遠いが、比較的過ごしやすい陽射しが差す中、待ち合わせ場所へと集まったエンドブレイカー達。
目を合わせると、互いの意思を確認するかのように大きな頷きを1つ。
今回の作戦を大まかに言えば、真面目に注意する班、親切の押し売り班(またの名をウザ班)、モヒ狩り隊、といった2班と1隊に分かれ、とにかく片っ端から不良を挑発し、マスカレイドを発見次第滝へと誘導、撃破する、といった内容だ。
さて、ここで1つの疑問が生まれる。
なぜ3班ではなく2班と1隊にしたのか。
それはモヒ狩り班よりもモヒ狩り隊のほうが面白かっこよかったからである。
いきなり適当なことを言ってしまったのである。
ま、それはさておき、準備が整ったエンドブレイカー達は、各々の役割を果たす為、いざモヒカンマスカレイド(モヒマス)狩りへと向かうのだった。
●突撃! そこらへんのモヒカン
「人に指さされたくらいでトサカにきちゃうチキン野郎は、あなたかしら? 迷惑してるのよねー。ちょっと滝までツラ貸してくださる?」
いきなりあんまりな言葉が発せられる昼下がり、皆様いかがお過ごしでしょうか。
モヒ狩り隊である、エアシューズのスカイランナー・アルト(c04129)、太刀の狩猟者・ゼソラ(c00451)、スカイランナー・ビヘイビア(c01731)は早速そこらへんにいたモヒカン野郎を標的に、マスカレイド探しを始めていた。
「え、いやあの……ごめんなさい……」
当のモヒマスでもなんでもない善良な不良の皆様は、既に涙目である。
とは言っても、声の主――ビヘイビアも、全力であんまりな言葉を発しているわけではない。
(「なんだかんだ言って、不良たちも陰口言われたり注意されたりすると凹むわよね……軽くシンパシーを感じちゃうわ」)
なるほど、不良を相手にしてもいろいろと思うところはあるということか。
「おうおう、さっきから何見てんだよ! なんか文句あんのか!? やんのか? あ?」
ビヘイビアに対し、怖いものを見るような視線を向けるモヒカンたちににらみを利かせ、インネンをつけていくアルト。
「ひぃ、な、なんでもないです」
その圧力に圧倒され、言い返すまでもなくすごすごと去っていくあたり、どうやらこのあたりにマスカレイドはいないようだ。
一方、目が合ったら即殴る的なノリで、モヒに限らず駄目っぽい人とか残念な人とかに片っ端から喧嘩を売っていたゼソラの手には、気がついたらモヒカンの残骸(モヒカン、狩っちゃいました)がいっぱいいっぱい収まっていた。
さて、こちらは真面目に注意をする班――鞭の魔法剣士・ミーシャ(c01637)、暗殺シューズのスカイランナー・エリステル(c02175)、大剣の城塞騎士・リィナ(c01845)、弓の狩猟者・マデリル(c03849)。
「見たまえ諸君。珍しい種族が居るぞ。鳥の頭に人間の身体だ」
大声でわざとらしく仲間に告げるミーシャ。
すらっとした身体にすっとした服装を身に着けているミーシャは、一目見ただけでは麗しき男性かと見紛うこともあるが、その声はれっきとした女性である。
「なんだ、良く見たら人間じゃないか。君達、皆同じ髪型をしていたら折角の個性的な髪型が台無しだよ。そうだな、逆に真中だけ剃ってみるのはどうかな?」
反論は許さん、といった風に一方的に捲し立て、何か言い返したそうな不良たちには目もくれず、手当たり次第に声をかけていくミーシャ。
「バカは頭ン中もカラフルだよね。なぁにやってるのさ! 迷惑なことやってて恥かしくないわけ? あら、あなた方のような社会的役割の『や』も担ってない身で何か言えることでも?」
心を鋭角にえぐるような、それ言っちゃだめ的なことを言い放つエリステル。
社会的役割、とか妙に響くよね、心に。
「そんな格好でたむろして、少しは恥ずかしいという気持ちは無いのか? 働くなり勉学に励むなりやる事は沢山あると思うが。しかし、女にここまで言われて何もしないというのは情けないな。所詮は口だけという事か」
冷たい視線を向け、ほぅっ、と1つため息をついてみせるリィナ。
「まぁ、歪んだ根性の色が染み出たようなド紫色のとさかですわ……あ、いえ、そのお姿が悪いとは……ただ、そんな貧弱な体格だとみすぼらしいというか、周囲の目の毒というか……あら? お怒りになられました? それでは私達こちらに参加いたしますので、決着はその時にいたしましょう。そうそう、くれぐれもお頭をお連れ下さいね?」
そこまで一息で口にした後、デモニスタ・ヒース(c02449)から渡されているビラ――『滝に打たれて心頭滅却、毎日夕方からやってます』をばらまいていくマデリル。
皆、確かに真面目に注意をされているような気がしないでもないが、それはなんとなく、罪もない不良達がかわいそうに思えてきた瞬間でもあった。
ちょっちゅだけ。
「君も腐ったミカンになる前に! ご一緒にどうですかぁ!? どうですかぁぁ!!? どー、です、かぁぁぁ!!!?」
「貴方がたに足りないのは愛を貫けるだけの勇気ですぅ、それを養うなら激流に打たれて己を知ること。さぁさぁ踏み出すなら今、今ですぅ」
大声を張り上げ、ビラを配りまくるヒースとアックスソードの魔獣戦士・ソウシ(c02860)。
「ママー、あの人達、なぁに?」
「しっ! 見ちゃいけません!」
関わりあうのはよそう、と全力でその場から立ち去る一般の方々。
っていうか君たちがママと幼女からそんなこと言われたらだめでしょ!
しかし、ヒースいわく
「兎に角ウザく! 一般人もどん引きして縄張りに近づかない様に……って、素じゃありません囮です!」
ということらしいので何も全く問題はない。
そして幼女からそんな言葉を吐きかけられたヒースは、確かにときめきがエンドブレイクしていた。
それはそうと、もう1人親切の押しウザ班の方がいらっしゃった気がするわけですが。
(「……つかよ、おじさんあれくらいの頃、むしろモヒたち側だった気すんわ……」)
ヒース達の後ろで、仮面をかぶりダルそ〜に佇むお人。
そう、鞭の魔法剣士・ア(c01635)である。
アである。
……いろいろとダルさ加減が出ているあたり、ごっどじょぶである。
(「まぁ何にしても作戦通り誘導しなきゃな……」)
やれやれ、といった風にビラを取り出し、くしゃっと丸めてポイしちゃうア。
相変わらず大声をあげ、ビラを超勢いで配りまくるヒースとソウシ。
傍から見ると既によくわかんない光景になっている気もするが、きちんとマスカレイドを探そうとした結果こうなっているのだから、仕方がない。
「……あ? なんだ、これ……?」
アがいくつ目かのビラを投げつけた後。
すっ、とそれを開き見た不良の目つきが明らかに変わる。
「あれ? わりぃわりぃ、おじさんキミらニワトリかと思って投げちゃったよ」
「誰がニワトリだって!? っざけやがって!!」
今までの不良とは明らかに違う反応を見せるその男。
そう、この男こそ、マスカレイドなのだ。
●不良グループに追いかけられて
ものすごい形相、勢いでこちらに向かってくるマスカレイドと不良達。
次の瞬間ヒースは空に向けマジックミサイルを放つ。
「あらあら、足が遅いですぅ♪ 捕まえてごらんなさーい♪」
くるりと踵を返し、走り出すソウシ。
「あれ、走んの? ……おじさん、メンドクサイのヤなんだけどな」
あくまでだるそうに、ヒースとソウシの後をついていく。
しかし突然のことでビラをしまいこむ時間がなかったため、誘導を始める3人からばらばらとビラが零れ落ち、風にのる。
そしてその後ろを一生懸命追っかけるマスカレイドといった、そこにはまたしてもよくわかんない光景が繰り広げられていた。
ただ、面白いのでどちらかと言えば『あり』なのである。
●激突! モヒマス!
ヒースの狼煙を確認したモヒ狩り隊、真面目に注意する班は、既に滝へと到着していた。
「喧嘩だ喧嘩! 私たちが売った! アンタが買った! それで十分!」
マスカレイドと対峙したゼソラは、ちょいちょい、と人差し指を曲げ、挑発をする。
「てめえら……」
「……あらあら皆さん、その視線は何か言いたげですぅ? きっと注がれた愛が少なかったのですぅ。せめてソウシの愛で眠らせてあげますぅ」
振り向いたところで笑顔を絶やさず、アックスソードを取り出し、ぶんぶん振り回すソウシ。
「貴方方の様なヨレヨレで、ふにゃふにゃで、しまりの無い筋肉、生き恥もいいところですわね!」
ずばばっと言い切るマデリル。
微妙に論点がずれている気がするが、確かにマチョカ、マスカレイド以外の不良は、お米も持てなさそうなしまりの無い筋肉である。
「殺してやる!!!」
しかしそれがまたマスカレイドのカンに触ったようで。
(「今回のパーティは女性が多いんですよね! ならばぼくが守るべき、純真な幼女は……ゼソラだけ? ……まあ、15歳以上の女性も元幼女ですからね……まあ、危険があれば女性を優先的に援護しましょうかね。ぼくはフェミニストなんです」)
ちょっ、ヒースさんこれからいいところなんですけど!?
(「初めての戦闘だからちょっと緊張するけど……でも覚悟はできてる。そのエンディング、終わらせてやる!」)
高鳴る鼓動を抑え、胸に手をあて、きゅっと握り締めるエリステル。
「……ゼッタイに負けないからっ!」
「殺してやるっっ!!」
そしてエリステルとマスカレイドの声が重なった時、それが戦闘の合図となった。
浮かび上がる仮面は3つ。
要するにボスマスカレイドと手下マスカレイドが2人、計3人がマスカレイドであり、あとは一般の不良の皆様ということになる。
「絶対に逃がしませんですぅ♪」
ビーストクラッシュと十字剣を交互に使用し、まずは手下マスカレイドを攻撃するソウシ。
ミーシャもソウシとともに手下マスカレイドに残像剣を放つ。
「うがあっ!」
直線的な攻撃のマスカレイドは、その残像に翻弄され、手当たり次第に辺りを殴りまわることしかできない。
そして派手に動き回る手下マスカレイドに対し、エリステルのソニックウェーブが放たれると、いつしか手下マスカレイドの仮面は消失し、その活動は停止していた。
「な、なんだこいつら……!?」
そのあっけないさまを見て、不良達の間にざわめきが起きる。
「ここで退くか、続けるか選べ! もし残ると言うのならば、諸君達もここに転がっている者と同じ末路を辿る事になるぞ」
凛とした声で一喝するミーシャ。
その存在感にたじろぐ不良達。
……しかし。
「あ? てめえらここで逃げたら俺が間違いなくぶっ殺してやるからな!」
「う、うわああぁぁぁ!」
マスカレイドの声に、弾かれたようにわけもわからず走り出す。
「仕方がない、少し痛いが、我慢してもらうぞ」
向かってくる不良達を大剣の腹や柄で殴り、気絶させるリィナ。
「おじさんメンドクサイのヤだから手加減しねーぞ?」
不規則に縦横無尽な感じでアレがアレしてアレな感じになるアの鞭。
そしたら一般の不良たちもたちまちコレがアアなってソンナ感じで、一件落着である。
断っておくが適当ではなく、アの戦闘スタイルがそういうことなのである。
そしてゼソラはそこらへんに転がっている一般の不良たちの顔にビラを張っていく。
「てめえら、ぜってえ、殺してやるっっっ!!」
気がつけば、ボスマスカレイド1人。
完全に怒りがトサカになったボスマスカレイドは、なりふり構わずアルト達に殴りかかってくる。
しかし、やはり直線的な攻撃しかできないマスカレイドの動きは読みやすく、マデリルのファルコンスピリットがいともたやすくヒットしていく。
「足癖が悪いんでね」
テンションがあがっていく中、ボスマスカレイドを攻撃するアルト。
そしてミーシャの捕縛撃がボスマスカレイドの腕を捉え、ビヘイビアのナイフが閃を描き、
「乱暴だが……薙ぎ払う!」
リィナの体重をのせたワイルドスイングが放たれる。と、
「……騎士は守る者。壊そうとするものに負ける道理は無い」
静かに大剣を下ろし、振り返るリィナ。
そしてこれが、ボスマスカレイドが最後に聞いた言葉だった。
●明るい未来
「皆様、素敵なマッ……殿方になってくださいませね〜」
「こーやってかまって貰えるうちが花ってな……ま、頑張れよ」
「こんなことした後でアレだけど、あなたには『魔物』になってもらいたく無いのよ。いつか、あなたがそのヘアスタイルに胸を張れるようになれれば嬉しいわ」
うめき声をあげながら横たわる不良達に声をかける、マデリル、ア、ビヘイビア。
「彼らもまた市民の一人だ。騎士は市民を守る者だからな」
リィナはそう言うと、立てるか? と声をかけながら、不良達に肩を貸す。
「さ、皆帰ろっ!」
ほっとした表情をしつつ、大きな深呼吸を一度すると、両手を広げ、皆に笑いかけるエリステル。
そして初依頼を無事終えられたことに、皆どこか安堵の表情を浮かべながら、その場をあとにするのだった。
「……何故か信じてもらえませんが、ぼくは出来るだけマスカレイドの被害を抑えたいんです」
後ろのほうで何か聞こえた気がしたが、それはきっと冬の妖精さんの悪戯に違いなかった。