【ジュネーブ=橋本聡】アルコールの販売や広告の規制を求める指針案が22日、世界保健機関(WHO)の執行理事会で採択された。いき過ぎた飲酒などを健康面だけでなく社会への「害」ととらえ、各国の自主規制で減らすことをめざしている。5月のWHO総会で正式合意する見込み。
指針案は「アルコールの有害な使用を減らす世界戦略」。WHOは、たばこ追放運動にめどがついた後、「年250万人の死にかかわる」とアルコールに焦点をあててきた。
指針案には、課税による価格引き上げや幅広い販売規制が盛り込まれている。法的拘束力はない。北欧など規制推進派と、酒メーカー大手を抱える米国など消極派が対立したが、具体策を各国に委ねていることから、妥協が成立し、全会一致となった。
欧米では飲み放題の禁止やテレビ広告の制限が広がりつつある。今回の採択でさらに弾みがつきそうだ。
■「アルコール世界戦略」の対策例
・小売りする日や時間の規制
・イベントなどでの販売規制
・10代の若者の飲酒を防ぐ「障壁」の確立
・酒の広告内容や広告量、メディアの規制
・スポーツ・文化イベントのスポンサー規制
・公共の場での飲酒をめぐる施策
・若者を対象にした販売促進の禁止や制限
・飲み放題、値引き販売の禁止や制限
・アルコール課税、最低価格の導入
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WHOのアルコール規制指針案に対し、ビール酒造組合など日本の業界団体は、規制をめぐる議論の行方に神経をとがらせている。
国内ではこれまで、業界団体やメーカーが自主規制の形で、極端な安売りの抑制や未成年者も購入できる自動販売機の撤去などを進めてきた。また、ビール酒造組合は昨年末、テレビCMの自粛時間を今年秋から拡大すると発表。午前6時〜午後6時は、商品や飲むシーンの放映を自粛するほか、今後、CMの表現方法などの見直しを検討する考えだ。