[国民新党案]不可解な「県内」逆戻り

2010年2月18日 09時49分
(3時間12分前に更新)

 米軍普天間飛行場の移設先を模索する政府・与党の沖縄基地問題検討委員会が迷走ぎみだ。きのうの検討委で社民、国民新両党が移設案を提示する予定だったが、先送りになった。2010年度予算案の審議・通過を優先したためと、国外・県外を主張する社民と県内移設の国民新との対立が背景にあるようだ。

 そんな中で国民新は政務調査会で新嘉手納統合案、キャンプ・シュワブ陸上案の2案を党案として了承した。米軍嘉手納基地を抱える沖縄、嘉手納、北谷3市町でつくる三連協は統合案に反対、辺野古移設反対を公約に当選した稲嶺進名護市長もシュワブ陸上案をきっぱり否定している。

 地元が反対する中で、両案を主導した1区選出の下地幹郎政調会長はなぜ、県内移設にこだわるのか。鳩山由紀夫首相ら民主党の事実上の公約といえる「少なくとも県外」をなぜ、わざわざ捨てるのか。ここは、ぜひとも、県民への説明が必要だ。

 国民新の2案はこうだ。新嘉手納統合案は、普天間のヘリ23機を嘉手納に移し、シュワブ陸上にヘリパッドを建設する。シュワブ陸上案は同基地内に1500メートルの滑走路を建設する。いずれも、嘉手納のF15戦闘機28機を三沢基地(青森県)に移し外来機の訓練は関西空港で行う。海兵隊の訓練は6カ間、グアムやサイパン、日本本土の自衛隊基地など国内外で実施する。

 下地氏によると、新嘉手納統合案では騒音が少なくなった、と地元の人たちが納得してからヘリを移すという。

 移設は地元の頭越しに強行しないのが大前提だ。検討委では本来、海兵隊の抑止力の検証、安全保障のコストを国民全体で負う議論も進めるべきだが、そうなっていない。

 国民新は、新嘉手納統合案で沖縄の基地負担軽減を図るという。これを信じる周辺住民は誰もいないに違いない。

 嘉手納町議会はきのうB52戦略爆撃機やF22戦闘機など外来機の相次ぐ飛来に、抗議決議と意見書を全会一致で可決した。1月から2月にかけ嘉手納所属のF15戦闘機6機が航空自衛隊百里基地(茨城県)で訓練移転、同じく12機が米本土の演習に参加したが、1日あたりの騒音発生回数(70デシベル以上)は前年度の1日平均を上回っているのだ。

 日米合意している騒音規制措置を無視し未明離陸も止めることができない。周辺住民はこんな環境を日常的に強いられているのである。

 検討委の原点は沖縄の負担軽減である。下地氏は最終結論のタイムリミットが5月末であることを勘案し、既存の施設外に新たな基地を建設しないことなど実現可能性を優先したのだろうが、2案が本当に沖縄の負担軽減につながるのか。地元の理解が得られない案が不可能だということは、辺野古案が実現しなかったこの14年で教えられたことではなかったのか。

 名護市長選で国民新は稲嶺氏を推薦した。稲嶺氏は亀井静香代表に反対を訴えた。県内移設反対で決着したはずなのに、国民新の2案が移設問題を県内に押し込め、地元を混乱させないか懸念する。

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