バンクーバー冬季五輪第4日の15日(日本時間16日)、日本勢は今大会初のメダルを一挙に二つ獲得した。バンクーバー近郊リッチモンドの「五輪オーバル」であったスピードスケート男子五百メートルで、長島圭一郎(27)=日本電産サンキョー=が銀、加藤条治(25)=同=が銅メダルを取った。
観客席でレースを見つめていた橋本聖子・日本選手団長は、長島と加藤のメダルが決まった瞬間、思わず周囲と抱き合った。目がみるみる潤んだ。「モーグル(女子)でメダルを逃し、『男子五百メートルで取れなかったらどうしよう』という、ものすごい重圧があった」と橋本団長。この種目の元世界記録保持者である鈴木恵一・選手団総監督ともガッチリ握手。往年の名スケーターたちの、誰はばかることない喜びぶりに、このメダルの価値がうかがえた。
84年サラエボ五輪の北沢欣浩(よしひろ)の銀メダルから、6大会連続でメダルを獲得してきた男子五百メートル。自国開催の98年長野五輪では、清水宏保が金メダルも勝ち取っている、日本の「お家芸」だ。そうした実績を踏まえ、スピードスケート関係者は「自分たちが日本の冬季競技を支えてきた」という自負を持ち続けていた。
しかし、前回06年トリノ五輪では男子五百メートルをはじめ、全種目でメダルゼロという屈辱を味わった。さらにバブル崩壊、現在の金融危機と長い不況の影響で、五輪メダリストを輩出した王子製紙やコクドなどの名門チームが相次いで消えた。
長島と加藤が所属する日本電産サンキョーはスケートへの理解が深い企業だが、それでも不況の影響は逃れ得ず、2人は今年度上半期に賃金カットを受けた。選手たちは「競技を続けられるか」との危機感と、常に背中合わせにいる。五輪で再び敗れれば、選手たちの競技環境は、さらに悪化するだろう。
大会前に日本代表チームの今村俊明監督は言った。「バンクーバーは正念場になる」。乾坤一擲(けんこんいってき)でメダルを得た時、今村監督はリンクサイドで雄たけびを上げた。
長島、加藤の2選手とも、今大会に向けて心に誓っていた「自分こそ金メダリストに」という思いを実現できなかった。表彰台の両脇に立った2人とも、どこか悔しさも残した喜び方だった。
だが、それを支え、見守ってきた人々の受け止め方は違った。18年ぶりで1種目2メダルを獲得した長島と加藤の滑りは、低迷が続く日本スケート界、そして日本の冬季スポーツに明るい光を差し込ませた。【飯山太郎】
毎日新聞 2010年2月16日 21時45分(最終更新 2月17日 0時21分)
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