米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で、現行計画の移設先であるキャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市辺野古)を抱える稲嶺進・名護市長が17日、就任後初めて社民、国民新両党首や関係閣僚を訪問した。稲嶺氏は現行計画に加えて国民新党が検討しているキャンプ・シュワブ陸上部(名護市)への移設案にも反対を明言。一方、同日開かれた政府・与党の沖縄基地問題検討委員会で社民、国民新両党は「連立の協調重視」を理由に移設先提案を先送りした。【西田進一郎、仙石恭、朝日弘行】
「辺野古の海にも陸上部にも新しい基地は造らせませんと市民の皆様にお約束し、当選した。名護市民、沖縄県民の意思をくみ取り、これ以上の負担を及ぼさないようご配慮を」。稲嶺氏は17日昼、国民新党本部で亀井静香代表と会い、シュワブ陸上案への反対を訴えた。
国民新党は同日の議員総会で、シュワブ陸上案と米軍嘉手納基地(同県嘉手納町など)統合案を決定する予定だった。だが、米領グアムや米自治領北マリアナ連邦、九州北部などを移設先として検討している社民党が、国民新党が先行して案を決めることに難色を示したことなどから、決定を見送った。
亀井氏は稲嶺氏の訴えに「市民、県民の心をきっちり生かした解決を目指して頑張る」と応じ、その後の記者会見でも陸上案について「一つの良い案だ。これだけにこだわっているわけじゃない」と釈明。その後、稲嶺氏と会談した社民党の福島瑞穂党首も「辺野古の沿岸部にも陸上部にも基地を造らせない。一緒に頑張っていきましょう」と述べ、沖縄の民意への配慮を強調した。
稲嶺氏は17日夜には、東京都内の居酒屋で社民党の照屋寛徳国対委員長や国民新党の下地幹郎政調会長、民主党の玉城デニー衆院議員と会談。下地氏を除く3人は、シュワブ陸上案について「(名護市長選という)直近の民意に反する」として撤回を迫った。これに対し、下地氏は陸上案は県民負担の軽減になるとし、期限を区切った暫定的な案だと主張。しかし、照屋氏らは米国が暫定的な案に同意して約束を守るとは思えないと反論したという。
一方、政府内では、自民党政権下で検討されたことのあるシュワブ陸上案を有力候補地の一つとする見方も根強く残る。鳩山由紀夫首相は17日夕、首相官邸で記者団に「自民党時代にいろんな理由で必ずしも最適ではないと言われたものが、本当に選考理由がそうか、過程の中で見えないところもある。かつてうまくいかない案であっても検討する価値はあると思う」と述べ、シュワブ陸上案を排除しない考えを示した。
この日の検討委は、先のグアム視察の報告をした程度で、次回日程は決められず、平野博文官房長官に一任。北沢俊美防衛相は記者団に「時間がないんだからとりまとめは急いでほしい」といらだちをぶつけた。
毎日新聞 2010年2月17日 23時19分(最終更新 2月17日 23時21分)